高校を卒業して大阪に出たんですわ
同い年の聖子ちゃんが全盛期の時
あの聖子ちゃんカットって言うんですか、若い娘が皆あの髪形してました
あの頃、親の家業が景気が良くて大学に行く学費の心配もいらんかったけど
受ける大学、皆すべってしもうて
しょうがないんで梅田の専門学校に入ったんですよ
梅田はそらもう賑やかでしたよ
ナビオ阪急が出来たばかりで東通り商店街にディスコが2~3件ありました。
僕は映画もディスコにも興味が無くて
もっぱらパチンコでした
これはもうもって生まれた性と言うか
性根が腐ってたんですね
ラクして稼ぎたいと
パチンコばかりしてたんで彼女はおろか友達もいなかったですね
アパートは阪急京都線総持寺と言う小さな駅にありました
貧乏くさい文化住宅が立ち並ぶ路地裏でした
家賃が破格で三畳一間8000円でした
初めての一人暮らしで女の子を引っ張り込もうと思うていたんですが
引っ張り込む相手がいなくて
隣の部屋の不細工なネェちゃんが散々男を引っ張り込むんで
往生しました
パチンコで負けが混んでお金が無いもんだから
近所の古新聞を集めてちり紙交換に売るんですわ
それで2~30円かの金を貰って
スーパーでキンツルラーメンを買うんですわ
新聞を拾ってばかりいたら
いつのまにやら周りの貧乏人に
乞食と
陰口を言われました
まだ泥棒をしなかっただけ良かったですよ
暇やったから安威川の土手をよく散歩しました。
まぬけヅラでタバコを咥えて
その頃、女子の体育大学が近くに会って
ジョギングする同世代の彼女達と土手の上ですれ違うんですよ
目標タイムを縮めようと必死に走る彼女たちと
新聞を拾って金に換える乞食な僕と土手の上で交差するんですよ
彼女たちの上下に揺れるTシャツの胸元が眩しかったですね
小さい頃からだらしのない子供でした
ランドセルの中に干からびた食べ残しのコッペパンが詰まっていて
教科書にパンくずがいつも付いていました。
授業中はいつも窓の外を眺めていました
タゴやんが畑に肥をまいていたんです。
宿題はいつも忘れて
かけっこもビリかブービーで
そんな僕の事を先生が名字で呼ばずに
「このボケ」
と呼ぶんです。
ある日、僕はそんな先生の座布団に‘押しピン,を仕込んだんです。
尻に押しピンが刺さった先生は悲しそうな顔をしていました。
中学になると部活に入るんですが
上級生に毎日殴る蹴るの暴力を受けるんです。
物騒な学校でした
2年生になって部活を辞めた時に僕は集団リンチに合うんですが
その時、一緒に部活を辞めた成績優秀な田村君は何の制裁も受けないんです。
部活を辞めて何をしていたかと言うと
海で魚を突いたり
川でシジミを掘ったり
山でわらびをとったり
同級生が部活で仲間意識や協調性を鍛えている頃
僕はせっせと自分の殻に入っていたんです。
その頃の僕の夢は将来アイドルになる事でした。
夢は叶いませんでしたが
堀越学園に入るために勉強を始めたんで
まんざらバカな考えは捨てたもんじゃ無かった
アイドルになって堀越学園には入れませんでしたが
勉強をしたおかげで進学校に進めました
同級生はバカばかりだったので
ちょろいもんでした
ビリで進学校に入ったので
追試は指定席でいつも同じメンバーでした
メンバーの川田君はテレビCMもしてる会社の重役になって
僕はこの歳になって職探しをしています。
高校に入って酒もたばこもやりませんでしたが
パチンコ屋に入り浸りました。
ある時、パチンコ台の隙間から裏を覗いたら
店長と店員、おっさん同士で乳繰り合っていたんです
ある時、高校の先生とばったりあって
あくる日、生活指導の先生に呼び出されたんです。
好きな女の子もいましたね
生徒会副会長で才色兼備のカヨちゃん
でも身分が違うんで遠くから眺めるだけでした
マオちゃんに時給800円払って店番をしてもらい
私は2階の倉庫を片付けています。
お客さんが来たら呼んで貰うんですが
お客さんも全然来ないのでマオちゃんは退屈そうにスマホをいじっています。
鉄くずが随分と出たので
多少のお金になればとスクラップ屋さんに売りに行きました
パキスタン人のマハドさんが一生懸命に車から鉄くずを出す手伝いをしてくれました
でも、鉄くずを売るには先に鉄くずが乗った時点の車の重さを計らなければいけません
僕は10円も貰えませんでした
お昼に風呂屋に行きました
嫌な床屋の隠居じじぃに会いました
会うといつも同じ事を言います。
「どう、儲かってる?」
僕はシカトするんです。
もう僕も若くないんで
風呂上がりに‘やよい軒,でサバの塩焼き定食を食べました
‘やよい軒,ではこれしか食べません
たまにはお肉も食べたいですが
お肉は高いんです
途中にスーパーに寄って晩酌の酒を買いました
タカラの缶酎ハイ5本とと黒霧島の1800ml1パック
貧乏なんですがお酒は高いのを買います
パンツも靴下も穴が開いているんですが
買いません
気が付くと還暦と言う節目が近づいて来て
2年前から患っている50肩がいまだに完治せず
運動するのが億劫になって
あれだけ自慢だったすっきりした体形がぼてっと腹が出て背は曲がり
人生、最重量の領域に入り
動悸もするようになり
老眼が進み
最も恐るべきことはしょっちゅう
あれ、どうしたんだろう?
とか・・
また忘れた
とか
これはどうするんだっけ?
とか
確実に認知機能や記銘力が低下している
もう他所で働けないよ
他の仕事なんて務まらないよ