これまで「純と愛」を超えるひどい朝ドラはないと思っていたのだが、現在放送中の「まれ」が主人公の妊娠・出産を経てさらにひどい事になっている。
能登でフランス菓子店を開く資金が足りず、ついに親友・みのり(門脇麦)の勤める農協から350万円の融資を受けて希は店を開く。
しかしまず普通に考えて、なぜケーキ屋の開店資金を農協が貸すのか。あんな小さな町の場合、普通は信用金庫だろう。
あるいは、目下安保法案のすったもんだに隠れて忘れられた感のあるTPPが「農協つぶし」とも云われるなかで、農協はこんな融資もしますよというアピールをする事で農協の口封じを狙っているのか。安倍首相の傀儡である籾井会長のNHKなら、ない話ではない。
その「安倍首相の傀儡である籾井会長のNHKなら、ない話ではない」という下衆の勘繰りが、あながち当たらずとも遠からずなのではと思わせる展開が先週末から続いている。
オープンした菓子店が軌道に乗らぬ中、まだオープン3ヶ月なのに希が体調不良を訴え、それが妊娠のつわりだと発覚。しかも双子である。
授かった事自体は喜ばしい話だが、となると彼らはまだ店を開く前後に子作りをしていた事になる。若夫婦の無計画ぶりに、開いた口が塞がらない。
そして仕事を抱えながらの妊娠期間はスッ飛ばし、いきなり月が満ちて希は輪島市内の病院で双子を無事出産する。
石川県内の産科事情に詳しいワケではないが、双子の出産というのはリスクが高い事ぐらいは男親の私にも分かる。通常は管理入院のため、最低でも金沢市内の総合病院に入るのではないのか。女性脚本家とは思えぬほどの、妊娠・出産に関する扱いの軽さが気になる。
紺谷家の跡取りの誕生であるにもかかわらず、圭太の両親である博之(板尾創路)と直美(藤吉久美子)は一切出産の病院には顔を出さない。それも信じられないが、希がケーキの常連客にどうしてもケーキを作ってほしいと懇願され3時間だけ双子を圭太に預けたらその間に片方が高熱を出す。
慌てて病院に担ぎ込んだら、そんな時だけ姑の直美が病院に現れて
「アンタは母親やろ!なして自分の事ばかり…」
と希を厳しく叱責するのだが、私はこのシーンで怒りのあまり吐きそうになった。
私が大学時代に在籍したサークルに2名居たのでよく知っているのだが、石川県の女性はとにかく我慢強く真面目だ。そして
「若奥さんを徹底的に働かせ、自分は孫の面倒をみるのがおばあちゃんのステータスだ」
という話も聞いた事がある。
その意味で、直美も藍子(常盤貴子)もそんなに忙しいワケでもないのに一体何をしていたというのか。
私に言わせれば、
「直美!アンタはバアちゃんやろ!バアちゃんならバアちゃんらしく、孫の世話せんかい!」
である。
さらに追い打ちをかけるように、みのりは「子育てに専念したい」と農協を辞めるという。
このドラマは、そんなに女性を家庭に押し込めたいのか?
私はこの展開に、第一次安倍政権(2007~08年)の「美しい国」を思い出した。その中の「親学の提言」に、やれ母乳で育てろだの子守歌を聞かせろだのというくだりがあり、自民党内からも異論が噴出した事を覚えている。
妊娠・出産の扱いの軽さ。「結婚したら、女は家庭に入れ」という昭和な価値観の押しつけを感じてしまう視聴者は、少なくないのではなかろうか?
現・安倍政権が「女性活用」などとのたもうているが、敢えてそれを声高に言うという事は裏を返せばいかに今まで女性をぞんざいに扱っていたか、という表れではないのか?
…とボロカスに云いながら、毎朝楽しんで観ているのだが(苦笑)…