一日、ずっと雨降り。気温もぐっと下がって、どこへ出かける気力もなし。こんな日は読書に限りますね(笑)
日本の古典を読みたくて『更級日記』を手に取りました。『更級日記』の筆を取った人は平安時代の女性、もう少し言えば菅原孝標の娘です。内容は彼女の日記、日記といっても今日は何々があったという逐一の記録ではなくて、どちらかといえば自叙伝に近いもの。読んでいくと、平安時代の一人間がどういうものを見て、何を思って生きていたのかを知ることができます。京都や奈良ならともかく、私たちの周りにあるもので、これは平安時代にあったもので…など言えるものはほとんどないですね。なかなか平安時代の息吹を感じるものが少ない。これはしかたのないことですけれども、せめて本を読んで、その世界に心を遊ばせてみるのも楽しいことではないでしょうか。
私が感心するのは、彼女のレトリック。つまりモノの例えなどを使って、文章表現を豊かにするための方法がすごい。
「にしとみといふ所の山、絵よくかきたらむ屏風をたてならべたらむやうなり」
(雪ある富士山を見て)「色濃き衣に、白き衵(あこめ)着たらむやうに見えて…」
「大井川といふ渡あり。水の、世に常ならず、すり粉などを、濃くして流したらむやうに…」
他にもたくさんありますが、どうも作者は読書好きな女性だったようで、相当な本を読み、そこからつかんだものなのでしょう。(余談ですが『枕草子』に出てくる、夜に牛車が川を渡ると、まるで水晶が割れているようだという表現、これ以上ない美しい表現だと思います)また、文章中に色々な本を読んだと書の表題も書かれてあるのですが、それは平成の現在までは伝わらないものもいくつかあるようです。これらの伝わらなかった本、どんな内容だったのか気になるところですが…。ただ平安時代に、それだけ読める本があったことが驚きです。
『更級日記』はもちろん古文ですけれども、比較的読みやすいものだと思います。オススメの1冊です。
●『更級日記』西下経一校注 岩波文庫 1963年
日本の古典を読みたくて『更級日記』を手に取りました。『更級日記』の筆を取った人は平安時代の女性、もう少し言えば菅原孝標の娘です。内容は彼女の日記、日記といっても今日は何々があったという逐一の記録ではなくて、どちらかといえば自叙伝に近いもの。読んでいくと、平安時代の一人間がどういうものを見て、何を思って生きていたのかを知ることができます。京都や奈良ならともかく、私たちの周りにあるもので、これは平安時代にあったもので…など言えるものはほとんどないですね。なかなか平安時代の息吹を感じるものが少ない。これはしかたのないことですけれども、せめて本を読んで、その世界に心を遊ばせてみるのも楽しいことではないでしょうか。
私が感心するのは、彼女のレトリック。つまりモノの例えなどを使って、文章表現を豊かにするための方法がすごい。
「にしとみといふ所の山、絵よくかきたらむ屏風をたてならべたらむやうなり」
(雪ある富士山を見て)「色濃き衣に、白き衵(あこめ)着たらむやうに見えて…」
「大井川といふ渡あり。水の、世に常ならず、すり粉などを、濃くして流したらむやうに…」
他にもたくさんありますが、どうも作者は読書好きな女性だったようで、相当な本を読み、そこからつかんだものなのでしょう。(余談ですが『枕草子』に出てくる、夜に牛車が川を渡ると、まるで水晶が割れているようだという表現、これ以上ない美しい表現だと思います)また、文章中に色々な本を読んだと書の表題も書かれてあるのですが、それは平成の現在までは伝わらないものもいくつかあるようです。これらの伝わらなかった本、どんな内容だったのか気になるところですが…。ただ平安時代に、それだけ読める本があったことが驚きです。
『更級日記』はもちろん古文ですけれども、比較的読みやすいものだと思います。オススメの1冊です。
●『更級日記』西下経一校注 岩波文庫 1963年