(1)アベノミクス第三の矢はどこに消えた?
集団的自衛権をめぐる議論の中で、完全に埋没したらしい。
6月24日に閣議決定された今年の成長戦略『「日本再興戦略」改訂2014--未来への挑戦--』は、本文が124ページにも及ぶ。
こんなに大部になる理由は、各省各課の官僚が作るからだ。
彼らは、今年度補正予算、来年度予算・税制での要求を予め成長戦略に盛り込もうとする。だから、予算要求書のようになってしまうのだ。
(2)結局、成長戦略は今年も本物の目玉はなし。
このままでは、昨年のように、総理の発表中に失望売りで株価大暴落という大失態にもなりかねない状況だ。
(3)株価内閣と呼ばれる安倍政権としては、同じ失敗は許されない。
そこで株価上昇に直結する
(a)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式買い増し。
(b)法人税減税。
に力を入れた。法人税が下がれば、企業は努力なしで税引き後の利益が増え、当然配当原資も増えるから株価には確実にプラスだ。
(4)最近、トヨタが6年ぶりに税金を払ったという記事が出て驚いた人も多いだろう。
電気業界でも払ってないところは多い。
銀行も、21世紀に入ってからずっと払わず、払い始めたのはごく最近だ。
つまり、法人税で日本企業の競争力が低下している、というのは真実ではない。むしろ、大企業が法人税を払い始めたから、減税の要望が強くなった、と見ていい。
トヨタが税金を払わなくて済んだのは、租税特別措置のおかげだ。租税特別措置とは、ある一定の条件を満たす場合に法人税を安くする制度だ。
<例>赤字を繰り越す制度。大企業では所得の80%までだから、残りは他の租税特別措置を使う。省エネ投資をしたら減税。研究開発をしたら減税、etc.。
(5)租税特別措置には、非常に細かい条件が設定される。その条件と減税規模は、関連業界団体の陳情を受けて各省庁と財務省が交渉し、最後は自民党税調の議員との調整で決まる。
団体は、見返りを供与する。
(a)官僚に、天下りポスト。
(b)政治家に、パーティ券購入と選挙協力。
巨大な利権だ。
(6)法人税を減税すると、1%で5,000億円の減収となる。
今回、35%程度の法人実効税率来年度から引き下げて、数年で20%台にすることが決まった(悪くとも29%まで下げるということだ)。
5~6%の引き下げだから、2.5~3兆円の財源が必要だ。
国民から見れば、租税特別措置利権を廃止して財源に回せばよい、と思う。
<例>減価償却制度の見直しで5,000億円、研究開発減税の見直しで1兆円の財源になる。
むろん、租税特別措置の廃止には官僚や族議員は大反対だ。
経団連「官僚」も同じだ。業界団体の取りまとめ役として、政・官との調整役を果たすことが彼らの存在意義だからだ。
(7)小泉純一郎内閣の時も、法人税減税の話が出た。
その時は、経済政策の司令塔たる竹中半蔵が租税特別措置抜本見直しの議論を出したとたん、経団連はそれなら法人税減税はいらない、と降りてしまった。租税特別措置の方が大事だからだ。
しかるに、今回は最後まで経産省と経団連が粘った。
官邸を牛耳る経産省の自信か。
それとも、安倍政権は株価上昇が至上命題だから、企業に厳しい政策は取れないと経団連が読み切っているのか。
(8)庶民は、消費増税と物価高に喘ぐ。
それでも庶民を甘く見る安倍総理は、あくまで強気で集団的自衛権行使容認の閣議決定をした。
その安倍総理を軽く見る官僚と経団連。
この国を動かしているのは、いったい誰か?
□古賀茂明「法人減税に見る本当の支配者 ~官々愕々第116回~」(「週刊現代」2014年7月19日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
集団的自衛権をめぐる議論の中で、完全に埋没したらしい。
6月24日に閣議決定された今年の成長戦略『「日本再興戦略」改訂2014--未来への挑戦--』は、本文が124ページにも及ぶ。
こんなに大部になる理由は、各省各課の官僚が作るからだ。
彼らは、今年度補正予算、来年度予算・税制での要求を予め成長戦略に盛り込もうとする。だから、予算要求書のようになってしまうのだ。
(2)結局、成長戦略は今年も本物の目玉はなし。
このままでは、昨年のように、総理の発表中に失望売りで株価大暴落という大失態にもなりかねない状況だ。
(3)株価内閣と呼ばれる安倍政権としては、同じ失敗は許されない。
そこで株価上昇に直結する
(a)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株式買い増し。
(b)法人税減税。
に力を入れた。法人税が下がれば、企業は努力なしで税引き後の利益が増え、当然配当原資も増えるから株価には確実にプラスだ。
(4)最近、トヨタが6年ぶりに税金を払ったという記事が出て驚いた人も多いだろう。
電気業界でも払ってないところは多い。
銀行も、21世紀に入ってからずっと払わず、払い始めたのはごく最近だ。
つまり、法人税で日本企業の競争力が低下している、というのは真実ではない。むしろ、大企業が法人税を払い始めたから、減税の要望が強くなった、と見ていい。
トヨタが税金を払わなくて済んだのは、租税特別措置のおかげだ。租税特別措置とは、ある一定の条件を満たす場合に法人税を安くする制度だ。
<例>赤字を繰り越す制度。大企業では所得の80%までだから、残りは他の租税特別措置を使う。省エネ投資をしたら減税。研究開発をしたら減税、etc.。
(5)租税特別措置には、非常に細かい条件が設定される。その条件と減税規模は、関連業界団体の陳情を受けて各省庁と財務省が交渉し、最後は自民党税調の議員との調整で決まる。
団体は、見返りを供与する。
(a)官僚に、天下りポスト。
(b)政治家に、パーティ券購入と選挙協力。
巨大な利権だ。
(6)法人税を減税すると、1%で5,000億円の減収となる。
今回、35%程度の法人実効税率来年度から引き下げて、数年で20%台にすることが決まった(悪くとも29%まで下げるということだ)。
5~6%の引き下げだから、2.5~3兆円の財源が必要だ。
国民から見れば、租税特別措置利権を廃止して財源に回せばよい、と思う。
<例>減価償却制度の見直しで5,000億円、研究開発減税の見直しで1兆円の財源になる。
むろん、租税特別措置の廃止には官僚や族議員は大反対だ。
経団連「官僚」も同じだ。業界団体の取りまとめ役として、政・官との調整役を果たすことが彼らの存在意義だからだ。
(7)小泉純一郎内閣の時も、法人税減税の話が出た。
その時は、経済政策の司令塔たる竹中半蔵が租税特別措置抜本見直しの議論を出したとたん、経団連はそれなら法人税減税はいらない、と降りてしまった。租税特別措置の方が大事だからだ。
しかるに、今回は最後まで経産省と経団連が粘った。
官邸を牛耳る経産省の自信か。
それとも、安倍政権は株価上昇が至上命題だから、企業に厳しい政策は取れないと経団連が読み切っているのか。
(8)庶民は、消費増税と物価高に喘ぐ。
それでも庶民を甘く見る安倍総理は、あくまで強気で集団的自衛権行使容認の閣議決定をした。
その安倍総理を軽く見る官僚と経団連。
この国を動かしているのは、いったい誰か?
□古賀茂明「法人減税に見る本当の支配者 ~官々愕々第116回~」(「週刊現代」2014年7月19日号)
↓クリック、プリーズ。↓



【参考】
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」