(1)6月13日、消費者庁表示対策課(景品表示法を主管)が、ステラ漢方のダイエットサプリメント「カロリストン-PRO-」について、景表法違反の優良誤認にあたる、として措置命令を出した。
これに伴い、同日、同課は消費者向けにプレスリリース「いわゆる健康食品の表示に関する消費者の皆様へのお知らせ」を発表。措置命令となった表示例と専門家の意見を示した。それによると、問題になるのは、
<例>食事制限も運動もなしで“これだけで痩せる”という「著しい痩身効果」だ。健康食品への専門家の意見として、「食事制限も運動もせずに、楽をして痩せることはありません。
(2)(1)の本来ありえない効果に対する取り締まりは、ある意味では簡単だ。
問題は、科学的に実証されているのか、いないのか、判断が難しい場合だ。
健康食品の機能表示で消費者庁が参考としている米国では、日本の公正取引委員会にあたる連邦取引委員会(FTC)で、こうした灰色の証拠での虚偽広告表示の取り締まりを強化する動きが出ている。
6月9日の記者発表で、FTCは、ドコサヘキサエン酸(DHA)を有効成分とするサプリメント「Brain Strong Adult」の記憶力改善効果の表示広告について、科学的根拠不十分で虚偽広告にあたるという判断を下し、事業者も虚偽であることを受け入れることで合意した、と発表した。
(3)DHAは、不飽和脂肪酸の一種で、魚油などに多く含まれており、健康増進効果があるとされ、エイコサペンタエン酸(EPA)と同様にサプリメントの人気成分だ。サプリメントとしては一番研究されているもので、血中コレステロール、中性脂肪、血圧の低下作用が証明されている。また、長期的な摂取で冠動脈疾患の予防効果があることも、大規模な臨床試験で証明されている。
ただ、DHAに期待されている機能性のすべてが証明されているわけではない。米国のTVCMでは、頭にサングラスをかけたままであることを忘れて、サングラスを探しに部屋に入ってきた女性が、さらに何故部屋に入ってきたのかも忘れるという内容で、そうした健忘症への効果が臨床試験で証明されている、と宣伝している。
FTCは、メーカーが主張するように確かに記憶力の一部のテストで結果が改善するという臨床試験の論文はあるものの、CMで紹介されているような日常生活での健忘症を軽減するような効果まであるとは言えない、と判断した。
(4)このDHAのサプリメントは、日本でもサントリーの「DHA&EPA+セサミンEX」をはじめ、商品も多い。
サントリーの宣伝でも「魚のサラサラ成分が、考える力をサポート」「ついうっかり」「計算間違えが増えた」など、脳の記憶力・集中力への効果を宣伝している。
今後、機能性表示が認められるようになれば、人手の臨床試験データをもとに、もっとはっきり宣伝するようになるだろう。
そうした表示が正しいかどうかは、消費者一人ひとりがチェックできるようになると消費者庁は言うのだが、一般消費者が論文を取り寄せて読み込んで判断するというのは、さすがに荷が重すぎるだろう。
米国のFTCのような、消費者保護のために虚偽表示広告の取り締まり強化が必要だ。
□植田武智(ジャーナリスト)「サプリメントの機能性表示規制強化に向かうアメリカ はたして日本では?」(「週刊金曜日」2014年6月27日号)
↓クリック、プリーズ。↓
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【参考】
「【食】遺伝子組み換え作物規制で住民が相次ぎ勝利 ~米国市民の底力~」
「【原発】【食】健康食品「青汁」の回収 ~放射能照射食品~」
「【食】来年から始まる弁当の健康認証マーク ~コンビニ弁当も健康?~」
「【食】消費者庁が健康食品の機能性表示案を提示」
「【食】遺伝子組み換え食品、農薬まみれ食品 ~TPPで規制撤廃(2)~」
「【食】米国産「危険食品」が大量流入 ~TPPで規制撤廃~」
「【食】アジア市場が狙われている ~GM稲の商業栽培~」
「【食】バングラデシュで遺伝子組み換えナスの栽培始まる ~GM食品の拡大~」
「【食】農薬類は微量・低濃度でも安全とはいえない」
「【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品」
「【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~」
「【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~」
「【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~」
「【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~」【食】農薬が添加物扱い ~バナナに使われるポストハーベト~
「【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~」
「【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~」
「【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~」
「【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム」
「【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~」
「【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~」
「【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~」
「【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~」
「【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~」
「【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~」
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「【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~」
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「【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~」
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「【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~」
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「【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?」
「【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~」
「【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~」
「【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後」
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問題は、科学的に実証されているのか、いないのか、判断が難しい場合だ。
健康食品の機能表示で消費者庁が参考としている米国では、日本の公正取引委員会にあたる連邦取引委員会(FTC)で、こうした灰色の証拠での虚偽広告表示の取り締まりを強化する動きが出ている。
6月9日の記者発表で、FTCは、ドコサヘキサエン酸(DHA)を有効成分とするサプリメント「Brain Strong Adult」の記憶力改善効果の表示広告について、科学的根拠不十分で虚偽広告にあたるという判断を下し、事業者も虚偽であることを受け入れることで合意した、と発表した。
(3)DHAは、不飽和脂肪酸の一種で、魚油などに多く含まれており、健康増進効果があるとされ、エイコサペンタエン酸(EPA)と同様にサプリメントの人気成分だ。サプリメントとしては一番研究されているもので、血中コレステロール、中性脂肪、血圧の低下作用が証明されている。また、長期的な摂取で冠動脈疾患の予防効果があることも、大規模な臨床試験で証明されている。
ただ、DHAに期待されている機能性のすべてが証明されているわけではない。米国のTVCMでは、頭にサングラスをかけたままであることを忘れて、サングラスを探しに部屋に入ってきた女性が、さらに何故部屋に入ってきたのかも忘れるという内容で、そうした健忘症への効果が臨床試験で証明されている、と宣伝している。
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今後、機能性表示が認められるようになれば、人手の臨床試験データをもとに、もっとはっきり宣伝するようになるだろう。
そうした表示が正しいかどうかは、消費者一人ひとりがチェックできるようになると消費者庁は言うのだが、一般消費者が論文を取り寄せて読み込んで判断するというのは、さすがに荷が重すぎるだろう。
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【参考】
「【食】遺伝子組み換え作物規制で住民が相次ぎ勝利 ~米国市民の底力~」
「【原発】【食】健康食品「青汁」の回収 ~放射能照射食品~」
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「【食】アジア市場が狙われている ~GM稲の商業栽培~」
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