集団的自衛権の行使が容認されたら、制服組に変化が生じるのではないか。
陸上自衛隊幹部は、「ただでさえ全国の駐屯地では部隊から逃げ出す隊員が絶えない。逃げる隊員の大半は2年限りの任期制隊員だが、彼らが真っ先に辞めるのではないか」という。
防衛大学校の卒業者はどうか。
防大は、卒業して幹部候補生学校に入り、半年の幹部教育を受けて三尉(少尉)となり、猛烈なスピードで昇進していく。一般大学から入隊する幹部もいるが、防大卒業生は1990年、1期生が幕僚長(陸海空トップ)に就任して以来、13人ずつが連続して陸海空の幕僚長を独占している。自衛隊のエリートだ。
退校・卒業者の動向は、米国によるイラク戦争の際、顕著な変化が現れた。
防大の入校者は年によって450~500人の間で推移する。一方、
(a)卒業までに辞める退校者
(b)卒業時の任官拒否者
(c)任官後、8月までに辞める早期退職者
の合計は毎年100人前後で、入校者の20%が防大や自衛隊から消える。
(a)~(c)の合計は、
2002年 99人
2003年 138人 【米国がイラク戦争に踏み切った】
2004年 152人
2005年 163人
2006年 157人(32.6%)
2007年 139人
2008年 142人
2009年 126人
日本政府は米国のイラク戦争を支持し、2003年にイラク特別措置法を制定した。
陸上自衛隊を、2004年1月~2006年7月、イラク南部のサマワに派遣。
航空自衛隊を、2004年1月~2008年12月、クウェートに派遣(空輸部隊)。
陸上自衛隊の宿営地には13回22発のロケット弾が撃ち込まれた。仕掛け爆弾による車両への攻撃もあった。
航空自衛隊は武装した米兵を首都バグダッドへ空輸する際、地上から携帯ミサイルに狙われたことを示す警報音が機内に鳴り響き、アクロバットのような飛行を余儀なくされた。
帰国後、次の自殺者が出た。過酷な環境下での活動が影響した可能性は否定できない。
陸上自衛隊 20人
航空自衛隊 8人
(a)~(c)を合計した「自衛隊を見限ったエリート候補生」の急増した時期は、自衛隊のイラク派遣の時期とピタリと一致する。
防衛省人材育成課は「団体生活に馴染めない、自衛隊が性格に合わないなどが辞める理由。景気の動向にも左右される」というが、なぜイラク派遣の時期だけ増えたのか、説明になっていない。
自衛官のモデル給与は、
陸海空幕僚監部の課長に相当する1佐(47歳、配偶者と子ども2人) 年収12,807,000円(一流企業の課長並み)
陸上自衛隊に5人の方面総官(将官) 19,299,000円(一流企業の役員並み)
しかも、退職後は防衛産業や自衛隊23万人が利用する金融機関や損保会社への「天下り」が待っている。恵まれた人生を約束されている。
にもかかわらず、イラク派遣を目の当たりにして自衛官への道を断念したのだ。「カネより命が大事」と考えた結果といえよう。
□半田滋「他衛の戦争に駆り立てられる日本人」(「世界」2014年8月号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【集団的自衛権】とイラク情勢」
陸上自衛隊幹部は、「ただでさえ全国の駐屯地では部隊から逃げ出す隊員が絶えない。逃げる隊員の大半は2年限りの任期制隊員だが、彼らが真っ先に辞めるのではないか」という。
防衛大学校の卒業者はどうか。
防大は、卒業して幹部候補生学校に入り、半年の幹部教育を受けて三尉(少尉)となり、猛烈なスピードで昇進していく。一般大学から入隊する幹部もいるが、防大卒業生は1990年、1期生が幕僚長(陸海空トップ)に就任して以来、13人ずつが連続して陸海空の幕僚長を独占している。自衛隊のエリートだ。
退校・卒業者の動向は、米国によるイラク戦争の際、顕著な変化が現れた。
防大の入校者は年によって450~500人の間で推移する。一方、
(a)卒業までに辞める退校者
(b)卒業時の任官拒否者
(c)任官後、8月までに辞める早期退職者
の合計は毎年100人前後で、入校者の20%が防大や自衛隊から消える。
(a)~(c)の合計は、
2002年 99人
2003年 138人 【米国がイラク戦争に踏み切った】
2004年 152人
2005年 163人
2006年 157人(32.6%)
2007年 139人
2008年 142人
2009年 126人
日本政府は米国のイラク戦争を支持し、2003年にイラク特別措置法を制定した。
陸上自衛隊を、2004年1月~2006年7月、イラク南部のサマワに派遣。
航空自衛隊を、2004年1月~2008年12月、クウェートに派遣(空輸部隊)。
陸上自衛隊の宿営地には13回22発のロケット弾が撃ち込まれた。仕掛け爆弾による車両への攻撃もあった。
航空自衛隊は武装した米兵を首都バグダッドへ空輸する際、地上から携帯ミサイルに狙われたことを示す警報音が機内に鳴り響き、アクロバットのような飛行を余儀なくされた。
帰国後、次の自殺者が出た。過酷な環境下での活動が影響した可能性は否定できない。
陸上自衛隊 20人
航空自衛隊 8人
(a)~(c)を合計した「自衛隊を見限ったエリート候補生」の急増した時期は、自衛隊のイラク派遣の時期とピタリと一致する。
防衛省人材育成課は「団体生活に馴染めない、自衛隊が性格に合わないなどが辞める理由。景気の動向にも左右される」というが、なぜイラク派遣の時期だけ増えたのか、説明になっていない。
自衛官のモデル給与は、
陸海空幕僚監部の課長に相当する1佐(47歳、配偶者と子ども2人) 年収12,807,000円(一流企業の課長並み)
陸上自衛隊に5人の方面総官(将官) 19,299,000円(一流企業の役員並み)
しかも、退職後は防衛産業や自衛隊23万人が利用する金融機関や損保会社への「天下り」が待っている。恵まれた人生を約束されている。
にもかかわらず、イラク派遣を目の当たりにして自衛官への道を断念したのだ。「カネより命が大事」と考えた結果といえよう。
□半田滋「他衛の戦争に駆り立てられる日本人」(「世界」2014年8月号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【集団的自衛権】とイラク情勢」