語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】10年におよぶ調査でわかったGMナタネ自生の広がり

2014年07月26日 | 社会
 (1)GMナタネの自生調査は、2005年に始まった。今年で10年目。
 全国で多くの市民が自主的に調査し続けてきた。正確な参加者数は不明だが、毎年1,000人超と推定される。
 ことほど左様に大規模な、市民による科学的調査は他にはないだろう。その原動力に、GM食品は食べたくない、という消費者の強い思いがある。

 (2)日本の食卓に乗るナタネ油などに用いられるキャノーラは、ほとんどをカナダに依存している。
 カナダにおけるGMナタネの割合は、97.5%(2012年)に達した。
 いまや、ナタネのほとんどはGMナタネになってしまった。
 ナタネは種子だから、こぼれ落ちると自生し、花が咲くと花粉が飛散して次の世代をつくってきた。
 市民は調査とともに抜き取りも行ってきたが、汚染の拡大に追いつかない。
 
 (3)この10年間で、汚染の範囲は輸入港や油工場の周辺、その間の輸送経路に限定されず、市街地などにも広がっている。
 寒いカナダで栽培されるキャノーラは、温暖な日本では越年し、本来1年草なのだが、多年草化する現象も見られた。
 汚染の拡大とともに交雑が繰り返され、世代交代も起きている。キャノーラ間だけでなく、カラシナ、在来のナタネ、ブロッコリー、ハタザオガラシといった雑草との交雑種と見られるものも見つかるようになった。
 このまま汚染が拡大すれば、農家の畑にまで汚染がおよび、食品に入ってくる可能性も強まってきた。

 (4)検査は、
  (a)一次検査・・・・簡易キットを用いて行う。
  (b)二次検査・・・・念のためにDNA鑑定などに用いるPCR法で行う。
  (c)2014年には、新たに群馬県と新潟県で見つかった。これまで(a)でGMナタネが見つかった都道府県は26に達した。日本の全都道府県の半数以上の自治体で見つかったことになる。
  (d)2014年の調査の特徴は、(a)の簡易キットの反応が複雑化していることだ。次の①~③のようなものを「隠れGMナタネ」と呼び、高木基金の助成を得て本格的な調査に乗り出したが、原因はまだよくわかっていない。
   ①最初の頃は、検査キットでの反応は陽性か陰性か、明確だった。しかし、最近はあいまいなものが増えている。
   ②大坂での調査で、その場で行った検査では陰性と判定されたが、そのまま一晩置いておいたとこおr、陽性反応が出ていた。この場合、たまたま一晩置いておいたために分かったが、通常はそんなことはしない。
   ③(a)で陰性だが、(b)で陽性と判定されるものも増えている。
  (e)(d)-①~③のほか、(a)の簡易キットの反応で、判別がつかないくらい薄かったり、あいまいなものが増えている。それらは、(b)を行うと、ほとんどが陽性反応だ。これは、世代交代を繰り返しているような汚染の激しいところで顕著だ。キット反応の変化は、世代交代が関係していると推定される。

 (5)GM作物の輸入が始まって18年たつ。
 日本では栽培されていないものの、こぼれオチによる汚染によって、これほどの変化が見られるのだ。
 栽培国では、さらに深刻な問題が起きていることが、容易に想像できる。  

□天笠啓佑(ジャーナリスト)「10年におよぶ調査でわかったGMナタネ自生の広がり」(「週刊金曜日」2014年7月11日号)
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