(1)コラム「労働力不足と移民」(2月11日付け産経新聞)で曽野綾子・作家は、
介護の労働移民についての受け入れを提示したうえで、
南アフリカで人種差別撤廃後でも生活習慣などの違いから、黒人が入ってきたマンションから白人が逃げ出した例を挙げ、
日本人と移民とは、「居住だけは別にした方がいい」
と述べた。
(2)(1)は人種差別・アパルトヘイトを称揚した、という国際的な批判を呼んでいる。
20~30年前の南アの実情を見てそう思うようになった、と曽野はいう。
後に大統領になるネルソン・マンデラが27年間の投獄生活から解放されたのは、1990年のことだ。その頃はアパルトヘイト撤廃の前夜だ。インフラが整い、豪邸が並ぶ白人居住区の一角には、一部の裕福な黒人が、何の問題も起こさずに居住していた。他方、都心部には一般の黒人が流入し、生活レベルや習慣の違いなどから白人が逃げ出してスラム化する例もあった。
一方SOWETOなどの黒人居住区は、劣悪な居住環境だが、一部には黒人富裕層が豪邸を建てているケースもあった。黒人居住区では、白人も黒人もない。黒人居住区の犯罪発生率は高く、住民の多くは教養や知識のレベルは低かった。しかし、黒人でも、高等教育を受けた人々は、知的で社会的使命感も非常に高く、人間的にも尊敬できるケースがほとんどだった。
そこにある偏見と抑圧の連鎖を生むのは、肌の色でも民族の違いでもない。その原因は、貧困と教育の欠如であることは明らかだった。
世界中が、その元凶である白人政権に対して憤り、共感した。
黒人居住区で支援活動に従事した人々には、黒人と白人が別々に暮らすべきだなどという考えは微塵も浮かばなかった。それは南アに関与した人々(古賀茂明もその一人)に共通の感情である。
(3)曽野が南アで(2)と同じものを見たはずなのに、正反対とも言える意見に到達した原因は何か。
(a)真実を知らなかった。・・・・白人やそれに連なる黒人団体などから、白人に都合のよい解説を聞いていた。
(b)上からの目線の発想。・・・・移民に対して同じ人間だという感覚がない。コラムの記述には、仕事をさせてやっているという感覚が見える。これは昔の南ア白人の考え方だ。
(c)相手の気持ちを考えない独善的態度。・・・・居住区を分けろといえば、移民の側は、低賃金でも仕事をもらえてよかった、と喜ぶどころか、「差別され搾取されている」となる。欧州で、中東やアフリカの移民が持つ感情と同じ。テロの温床だ。
(d)国際感覚の欠如。・・・・「居住を分ける」と行ったら、「アパルトヘイトだ!」となり、嫌悪感を生み出すのは世界の常識。反アパルトヘイト運動がピークの30年前の世界を見ていながら、これに気づかないとは驚きだ。
(4)さらに問題なのは、産経新聞だ。
曽野綾子には持論を述べる自由があり、産経新聞にはそれを掲載する権利がある。
他方、それと反対の意見を掲載する権利もあったが、それをあえてしなかった。曽野と同じ病根を抱えるからだろう。
「あらゆる差別は許されないと考えている」との口先の言い逃れでは許されない。曽野に反対する意見を大きく掲載すべきだ。過ちを改める勇気があるならば。
□古賀茂明「南アとアパルトヘイト ~官々愕々第144回~」(「週刊現代」2015年3月7日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】報道自粛に抗する声明」
「【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き」
「【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~」
「【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局」
「【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている」
「【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~」
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
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と述べた。
(2)(1)は人種差別・アパルトヘイトを称揚した、という国際的な批判を呼んでいる。
20~30年前の南アの実情を見てそう思うようになった、と曽野はいう。
後に大統領になるネルソン・マンデラが27年間の投獄生活から解放されたのは、1990年のことだ。その頃はアパルトヘイト撤廃の前夜だ。インフラが整い、豪邸が並ぶ白人居住区の一角には、一部の裕福な黒人が、何の問題も起こさずに居住していた。他方、都心部には一般の黒人が流入し、生活レベルや習慣の違いなどから白人が逃げ出してスラム化する例もあった。
一方SOWETOなどの黒人居住区は、劣悪な居住環境だが、一部には黒人富裕層が豪邸を建てているケースもあった。黒人居住区では、白人も黒人もない。黒人居住区の犯罪発生率は高く、住民の多くは教養や知識のレベルは低かった。しかし、黒人でも、高等教育を受けた人々は、知的で社会的使命感も非常に高く、人間的にも尊敬できるケースがほとんどだった。
そこにある偏見と抑圧の連鎖を生むのは、肌の色でも民族の違いでもない。その原因は、貧困と教育の欠如であることは明らかだった。
世界中が、その元凶である白人政権に対して憤り、共感した。
黒人居住区で支援活動に従事した人々には、黒人と白人が別々に暮らすべきだなどという考えは微塵も浮かばなかった。それは南アに関与した人々(古賀茂明もその一人)に共通の感情である。
(3)曽野が南アで(2)と同じものを見たはずなのに、正反対とも言える意見に到達した原因は何か。
(a)真実を知らなかった。・・・・白人やそれに連なる黒人団体などから、白人に都合のよい解説を聞いていた。
(b)上からの目線の発想。・・・・移民に対して同じ人間だという感覚がない。コラムの記述には、仕事をさせてやっているという感覚が見える。これは昔の南ア白人の考え方だ。
(c)相手の気持ちを考えない独善的態度。・・・・居住区を分けろといえば、移民の側は、低賃金でも仕事をもらえてよかった、と喜ぶどころか、「差別され搾取されている」となる。欧州で、中東やアフリカの移民が持つ感情と同じ。テロの温床だ。
(d)国際感覚の欠如。・・・・「居住を分ける」と行ったら、「アパルトヘイトだ!」となり、嫌悪感を生み出すのは世界の常識。反アパルトヘイト運動がピークの30年前の世界を見ていながら、これに気づかないとは驚きだ。
(4)さらに問題なのは、産経新聞だ。
曽野綾子には持論を述べる自由があり、産経新聞にはそれを掲載する権利がある。
他方、それと反対の意見を掲載する権利もあったが、それをあえてしなかった。曽野と同じ病根を抱えるからだろう。
「あらゆる差別は許されないと考えている」との口先の言い逃れでは許されない。曽野に反対する意見を大きく掲載すべきだ。過ちを改める勇気があるならば。
□古賀茂明「南アとアパルトヘイト ~官々愕々第144回~」(「週刊現代」2015年3月7日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】報道自粛に抗する声明」
「【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き」
「【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~」
「【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局」
「【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている」
「【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~」
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
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「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
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