(1)税を通じた富の再分配・・・・に焦点をあてた市民運動組織が、2月に相次いで旗揚げした。
「民間税調」
「公正な税制を求める市民連絡会」
(2)2月8日に第1回フォーラムを開いた「民間税調」は、水野和夫・日本大学教授/元内閣官房内閣審議官、三木義一・青山学院大学教授/元政府税調専門家委員会委員らが提唱した。
政権に近い位置にいた人々が、政府の政策の追認しかできない政府税調に限界を感じた結果、対抗軸の創設となった。
日本では、税をめぐる透明性が他の先進国に比べてきわめて低い。主権者(国民)の間で税制論議が起きるよう、税制やその使途・財政の情報をわかりやすく提供することを目指す。【設立宣言】
(3)「公正な税制を求める市民連絡会」は、反貧困運動の中心になった宇都宮健児・弁護士、雨宮処凜・作家らが呼びかけ、2月15日、問題提起のための緊急市民シンポジウムを開催した。
利益をあげている大手企業には、さらに有利となる法人税率の引き下げや、兵器への大幅な支出増がある。その一方で、財政難を理由に介護報酬や生活保護基準を引き下げる。こうしたアベノミクス予算に対抗する市民のネットワーク作りが狙いだ。
(4)「民間税調」と「公正な税制を求める市民連絡会」に共通するのは、格差の是正、分厚い中間層の回復へ向けた再分配のための税制・財政を市民レベルで作っていこうとする姿勢だ。
(2)のフォーラムも(3)のシンポジウムも、会場は立ち見も出る満席だった。
関心の高さの背景に、「放置すれば資産は集積し、格差は広がり続ける」【トマ・ピケティ】事態への危機感がある。いずれの集会でもピケティが引用された。「ピケティは日本に合わない」とするさまざまな火消し論にもかかわらず、ピケティの議論が日本社会で実感を持って受けとめられ始めている。
(5)ピケティによれば、戦後世界の平等化は、
・二つの大戦による富裕層の資産の崩壊
・戦費調達のための富裕層への課税強化
・ロシア革命による革命への不安
・兵士を送り出す低・中所得層への配慮
・大恐慌による統制経済への合意
などによる再分配の仕組みの構築があったからこそ可能だった。
ところが、戦後に再開した富の再蓄積で富裕層の政治への発言力が強まり、1980年代以降、レーガン、サッチャー、中曽根政権下で
・労組の解体
・資産税の最高税率の引き下げ
などによって壊されていく。
(6)日本では、グローバル化による製造業の海外脱出で柱となる雇用が失われた。所得っを見るかぎり、「格差」どころか、国民全体が下へずり落ちつつある。
だが、そんな中、過去の蓄積の結果である資産の有無が人々の生活を一段と左右し、格差拡大を生み出す。
だからこそ、
「成長と賃金」 → 「資産と再分配」
に焦点をあてた経済政策へと力点は移らざるをえない。
(7)経済成長は、再分配の仕組みがあってこそ・・・・という事実を、日本人は戦後30年の間に忘れ去った。それが、1980年代以降の再分配機能の解体を許した。
いま、ようやく、再分配機能の復活という歴史の転換点の入口の、そのまた入口に立ち会いつつあるのかもしれない。
□竹宮三恵子「公正な税を求める市民運動が映す「資産と再分配」 ~竹宮三恵子の経済私考~」(「週刊金曜日」2015年3月6日号)
↓クリック、プリーズ。↓
「民間税調」
「公正な税制を求める市民連絡会」
(2)2月8日に第1回フォーラムを開いた「民間税調」は、水野和夫・日本大学教授/元内閣官房内閣審議官、三木義一・青山学院大学教授/元政府税調専門家委員会委員らが提唱した。
政権に近い位置にいた人々が、政府の政策の追認しかできない政府税調に限界を感じた結果、対抗軸の創設となった。
日本では、税をめぐる透明性が他の先進国に比べてきわめて低い。主権者(国民)の間で税制論議が起きるよう、税制やその使途・財政の情報をわかりやすく提供することを目指す。【設立宣言】
(3)「公正な税制を求める市民連絡会」は、反貧困運動の中心になった宇都宮健児・弁護士、雨宮処凜・作家らが呼びかけ、2月15日、問題提起のための緊急市民シンポジウムを開催した。
利益をあげている大手企業には、さらに有利となる法人税率の引き下げや、兵器への大幅な支出増がある。その一方で、財政難を理由に介護報酬や生活保護基準を引き下げる。こうしたアベノミクス予算に対抗する市民のネットワーク作りが狙いだ。
(4)「民間税調」と「公正な税制を求める市民連絡会」に共通するのは、格差の是正、分厚い中間層の回復へ向けた再分配のための税制・財政を市民レベルで作っていこうとする姿勢だ。
(2)のフォーラムも(3)のシンポジウムも、会場は立ち見も出る満席だった。
関心の高さの背景に、「放置すれば資産は集積し、格差は広がり続ける」【トマ・ピケティ】事態への危機感がある。いずれの集会でもピケティが引用された。「ピケティは日本に合わない」とするさまざまな火消し論にもかかわらず、ピケティの議論が日本社会で実感を持って受けとめられ始めている。
(5)ピケティによれば、戦後世界の平等化は、
・二つの大戦による富裕層の資産の崩壊
・戦費調達のための富裕層への課税強化
・ロシア革命による革命への不安
・兵士を送り出す低・中所得層への配慮
・大恐慌による統制経済への合意
などによる再分配の仕組みの構築があったからこそ可能だった。
ところが、戦後に再開した富の再蓄積で富裕層の政治への発言力が強まり、1980年代以降、レーガン、サッチャー、中曽根政権下で
・労組の解体
・資産税の最高税率の引き下げ
などによって壊されていく。
(6)日本では、グローバル化による製造業の海外脱出で柱となる雇用が失われた。所得っを見るかぎり、「格差」どころか、国民全体が下へずり落ちつつある。
だが、そんな中、過去の蓄積の結果である資産の有無が人々の生活を一段と左右し、格差拡大を生み出す。
だからこそ、
「成長と賃金」 → 「資産と再分配」
に焦点をあてた経済政策へと力点は移らざるをえない。
(7)経済成長は、再分配の仕組みがあってこそ・・・・という事実を、日本人は戦後30年の間に忘れ去った。それが、1980年代以降の再分配機能の解体を許した。
いま、ようやく、再分配機能の復活という歴史の転換点の入口の、そのまた入口に立ち会いつつあるのかもしれない。
□竹宮三恵子「公正な税を求める市民運動が映す「資産と再分配」 ~竹宮三恵子の経済私考~」(「週刊金曜日」2015年3月6日号)
↓クリック、プリーズ。↓