(1)東京電力福島第一原発の汚染水が、大量に垂れ流されている。
この事件を、安倍政権が矮小化しようとしている。
(a)事故当初から、大量の汚染水が原発の港湾外へ垂れ流しだった。
(b)(a)の事実を1年以上前から把握していたのに、東電は対策を講じなかった。
(c)原子力規制委員会も報告を受けながら、放置していた。
など驚くべき事実が明らかになった。さらに驚くべきことは、安倍政権は、
①当初、この問題発覚から1週間以上も謝らず、
②この期に及んでも「汚染水の影響は、第一原発の港湾内でブロックしている」と強弁していることだ。
(2)今さら驚くほどのことでもない、とも言える。3・11以降、汚染水問題については経産省も東電も、二つの暗黙の方針を持っていたからだ。
(a)東電を破綻させないことが至上命題であり、全ての事故処理対策はその命題に反しない範囲でのみ行う。
2011年3月に、松永和夫・経産省事務次官(当時)と奧正之・三井住友銀行頭取(当時)の密約により、東電に2兆円の無担保の融資を実行する代わりに東電を破綻させないことが決まった【注1】。その結果、経産省は東電に可能な限りの税金投入を行う一方、税金投入の対象になりにくいものに東電は極力カネをかけない、という暗黙の方針ができたのだ。
2号機の建屋屋上にたまった高濃度汚染水が、排水路を通じて港湾外に流れ出していたのだが、その対策は、
①汚染水を原発の港湾外に流さないよう、排水路を港湾内に付け替える。
②建屋屋上をカバーで覆う。
というようなことだ。これらは、東電が比較的容易にできるから、国の支援対象にはしにくい。ということは、なるべくならやらないで、東電の負担を減らしたい、ということになる。
(b)汚染水は薄めて海に流すしかない、という考えだ。当初から経産省内では囁かれていた。
今の排出基準は、大規模放射能漏れではなく、極めて小規模な一時的な放射能漏れを前提としている。
今回のような大規模事故について、本来は、フローの濃度だけではなく、総量の規制を導入すべきなのだが、それは封印されている。どんなに薄めても、総量規制の上限を超えれば、海へ流せなくなるからだ。現在の規制なら、雨水や地下水で薄めて海へ流せばよい。海水で薄めれば、何の問題もないように見える、という発想だ。
(3)安部総理が、国際オリンピック委員会(IOC)で、東京五輪誘致のために行った「汚染水の影響は港湾内0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックしている」という発言【注2】が、(2)の暗黙の方針をさらに強化した。
当初、政権に擦り寄るコメンテーターが多かった。「嘘かどうかなどを議論するよりも、汚染水の処理が国際公約になったのだから、これで本格的な対策につながる、と前向きにとらえればよい」などと。
しかし、嘘は嘘の連鎖を呼ぶのだ。最初の嘘がバレないように、ますます情報を隠し、歪曲し続けることになるのだ。
果たして、それが起きた。汚染水が港湾外にダダ漏れしていた、という事実は、安部総理のIOCにおける発言が大嘘だったことを証明する。
「そんなことを認めてはまずい」という雰囲気が現場を支配したのは確実だ。東電は、国民・被災者は二の次、経産省、安倍政権第一で仕事をしている。「自分たちのためにではなく、安部総理のために嘘をつく」ことが免罪符になるのだ。
安部総理の「大嘘の罪」は大きい。
【注1】
「【原発】福島県民はなぜ刑事告訴告発をしたか ~告訴団長は語る~」
「【震災】原発>経産官僚の暗躍 ~原発戦犯たちの懲りない所業~」
「【震災】原発>経産省歴代次官の大罪 ~原発官僚~」
「【震災】原発>経産省人事の旧態依然 ~安達事務次官と東電との癒着~」
「【震災】原発が経産省の天下りを養うシステム」
「【震災】東電解体案(古賀ペーパー)の古賀茂明氏にクビの宣告」
「【震災】原発>握りつぶされた「東電解体案」 ~東電の政治力~」
「【震災】原発>経済産業省の「電力閥」」
【注2】
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~」
「【原発】東京放射能汚染地帯 ~オリンピック競技候補会場~」
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
□古賀茂明「汚染水。安部総理「大嘘の罪」 ~官々愕々第146回~」(「週刊現代」2015年3月21日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~」
「【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~」
「【古賀茂明】報道自粛に抗する声明」
「【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き」
「【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~」
「【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局」
「【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている」
「【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~」
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
この事件を、安倍政権が矮小化しようとしている。
(a)事故当初から、大量の汚染水が原発の港湾外へ垂れ流しだった。
(b)(a)の事実を1年以上前から把握していたのに、東電は対策を講じなかった。
(c)原子力規制委員会も報告を受けながら、放置していた。
など驚くべき事実が明らかになった。さらに驚くべきことは、安倍政権は、
①当初、この問題発覚から1週間以上も謝らず、
②この期に及んでも「汚染水の影響は、第一原発の港湾内でブロックしている」と強弁していることだ。
(2)今さら驚くほどのことでもない、とも言える。3・11以降、汚染水問題については経産省も東電も、二つの暗黙の方針を持っていたからだ。
(a)東電を破綻させないことが至上命題であり、全ての事故処理対策はその命題に反しない範囲でのみ行う。
2011年3月に、松永和夫・経産省事務次官(当時)と奧正之・三井住友銀行頭取(当時)の密約により、東電に2兆円の無担保の融資を実行する代わりに東電を破綻させないことが決まった【注1】。その結果、経産省は東電に可能な限りの税金投入を行う一方、税金投入の対象になりにくいものに東電は極力カネをかけない、という暗黙の方針ができたのだ。
2号機の建屋屋上にたまった高濃度汚染水が、排水路を通じて港湾外に流れ出していたのだが、その対策は、
①汚染水を原発の港湾外に流さないよう、排水路を港湾内に付け替える。
②建屋屋上をカバーで覆う。
というようなことだ。これらは、東電が比較的容易にできるから、国の支援対象にはしにくい。ということは、なるべくならやらないで、東電の負担を減らしたい、ということになる。
(b)汚染水は薄めて海に流すしかない、という考えだ。当初から経産省内では囁かれていた。
今の排出基準は、大規模放射能漏れではなく、極めて小規模な一時的な放射能漏れを前提としている。
今回のような大規模事故について、本来は、フローの濃度だけではなく、総量の規制を導入すべきなのだが、それは封印されている。どんなに薄めても、総量規制の上限を超えれば、海へ流せなくなるからだ。現在の規制なら、雨水や地下水で薄めて海へ流せばよい。海水で薄めれば、何の問題もないように見える、という発想だ。
(3)安部総理が、国際オリンピック委員会(IOC)で、東京五輪誘致のために行った「汚染水の影響は港湾内0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックしている」という発言【注2】が、(2)の暗黙の方針をさらに強化した。
当初、政権に擦り寄るコメンテーターが多かった。「嘘かどうかなどを議論するよりも、汚染水の処理が国際公約になったのだから、これで本格的な対策につながる、と前向きにとらえればよい」などと。
しかし、嘘は嘘の連鎖を呼ぶのだ。最初の嘘がバレないように、ますます情報を隠し、歪曲し続けることになるのだ。
果たして、それが起きた。汚染水が港湾外にダダ漏れしていた、という事実は、安部総理のIOCにおける発言が大嘘だったことを証明する。
「そんなことを認めてはまずい」という雰囲気が現場を支配したのは確実だ。東電は、国民・被災者は二の次、経産省、安倍政権第一で仕事をしている。「自分たちのためにではなく、安部総理のために嘘をつく」ことが免罪符になるのだ。
安部総理の「大嘘の罪」は大きい。
【注1】
「【原発】福島県民はなぜ刑事告訴告発をしたか ~告訴団長は語る~」
「【震災】原発>経産官僚の暗躍 ~原発戦犯たちの懲りない所業~」
「【震災】原発>経産省歴代次官の大罪 ~原発官僚~」
「【震災】原発>経産省人事の旧態依然 ~安達事務次官と東電との癒着~」
「【震災】原発が経産省の天下りを養うシステム」
「【震災】東電解体案(古賀ペーパー)の古賀茂明氏にクビの宣告」
「【震災】原発>握りつぶされた「東電解体案」 ~東電の政治力~」
「【震災】原発>経済産業省の「電力閥」」
【注2】
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~」
「【原発】東京放射能汚染地帯 ~オリンピック競技候補会場~」
「【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~」
□古賀茂明「汚染水。安部総理「大嘘の罪」 ~官々愕々第146回~」(「週刊現代」2015年3月21日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~」
「【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~」
「【古賀茂明】報道自粛に抗する声明」
「【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き」
「【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~」
「【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局」
「【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている」
「【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~」
「【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す」
「【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~」
「【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~」
「【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走」
「【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案」
「【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で」
「【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権」
「【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り」
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
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「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
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「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」