語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【言葉】心が折れそうな人のために

2015年03月18日 | 心理
 君の肉体がこの人生にへこたれないのに、魂のほうが先にへこたれるとは恥ずかしいことだ。

□マルクス・アウレーリウス(神谷美恵子・訳)『自省録』(岩波文庫、2007)
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   土佐水木
       
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【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~

2015年03月18日 | 社会
 (1)2月20日、次の法案が国会に提出された。
  (a)「株式会社日本政策投資銀行法改正案」
  (b)「株式会社商工組合中央金庫法等の改正案」
 これらは、今国会における財務省と経済産業省の最重要案件である。天下りのために。
 (a)は財務省の、(b)は経産省の政策金融機関に関する法案だ。建て前上は、民間の金融機関ができないことをやることになっているが、実際には業務が民間と重複する。
 また、国の丸抱えなので、本来は市場で淘汰されるべき企業にまで融資できる。
 その結果、税金投入が常態化するなど、日本の経済構造改革を阻害してきた。おまけに、官僚や族議員の利権の温床でもある。

 (2)批判に答えて小泉政権は、(1)-(a)と(b)の両行の政府保有株式を全て売却し、完全民有化することにした。
 しかし、完全民有化しても、
  (a)いざというとき、その都度政府が利子補給したり、緊急出費したりする仕組みさえ整えておけば、官僚と族議員にとって何の問題もない。
  (b)加えて、官僚と族議員たちは、リーマンショック、さらには東日本大震災などを理由に、政府が (1)-(a)と(b)の両行に随時出資できるようにするとともに、当初は
    「平成20年10月から5~7年後を目処」
とされていた株式の完全売却期限を
    「平成27年4月から5~7年後を目処」
として7年も先送りすることに成功してしまった。

 (3)(1)-(a)と(b)の両行とも、両省にとって最重要天下り機関だ。
 改革のあおりを受けて、トップの天下りポストを他の政府系金融機関とともに一時民間人に明け渡してしまったが、その後官僚に甘い安倍政権は、
  ・商工中金社長 ←杉山秀二・元経産次官
  ・日本政策金融公庫総裁 ←細川輿一・元財務次官
  ・国際協力銀行総裁 ←渡辺博史・元財務官
を就任させた。残る政投銀も時間の問題、とされる。

 (4)官僚から見ると、(3)でもまだ不安だ。なぜなら、現行法のままだと、遅くとも(1)-(a)と(b)の両行は平成34年には完全民営化されてしまうからだ。
 そこで、(1)-(a)と(b)の法案には、政府に対して「当分の間」株式を「保有する」義務を課すと書いた。この結果、完全民有化の時期は混沌としてきた。
 一方、この法案には、株式保有の必要がなくなったら「速やかに」売却する、とも書いてある。「速やかに」だから、かえって売却の時期が早まるかもしれない、などという両省の言い訳を安倍政権は目をつぶって了承した。
 むろん、政府が「必要だ」と言い続けるかぎり、無期限に民営化を先送りできる。何の意味もない文言だ。

 (5)財務・経産の両省の事務次官にとって、天下り確保は最優先課題だ。
 経産省では、電力自由化法案よりも(1)-(b)の法案のほうが優先度が高い。
 これほどまで官僚の思い通りの法案が出せるとは、両省は最初は考えていなかったかもしれない。しかし、経産省と財務省の幹部が鉄壁の協力態勢を敷けば、安倍政権も全く太刀打ちできなかった。
 しかも、現在の国会では与党が衆参で過半数を占めるから、法案は通ったのも同然。官僚側の完全勝利だ。

 (6)安倍総理は、今国会を「革新断行国会」と名づけ、施政方針演説で、吉田松陰の「知と行は二つにして一つ」という言葉を引用し、「求められていることは」・・・・改革の断行だった、と謳いあげた。
 しかし、今回の民営化先送りは、改革とは正反対の動きだ。引用された吉田松陰も、さぞ迷惑なことだろう。
 安倍総理は、今国会を次のように改名すべきだ。
   「改革断行国会」 → 「改革逆行国会」

□古賀茂明「改革逆行国会 ~官々愕々第147回~」(「週刊現代」2015年3月28日号)
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