語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【安保】進む武器輸出 急接近する“戦争”と“ビジネス”

2015年03月03日 | 社会
 (1)「三本の矢」のたとえは経済政策の話だ・・・・と思っていると間違う。
 安全保障政策のバージョンもあるのだ。すなわち、
   「集団的自衛権の行使容認」
   「武器輸出三原則の撤廃」
   「政府開発援助(ODA)大綱の見直し」
 この三点セットが防衛政策における三本の矢なのだ。
 安倍政権は、「積極的平和主義」の名のもとに三本の矢を次々と放ち、戦後日本の安全保障政策をひっくり返した。

 (2)手始めとなったのが、「武器輸出三原則」の撤廃だ。
 昨年4月、安倍政権は閣議決定によって
   「武器輸出三原則」 → 「防衛装備移転三原則」
へと取り替えた。
 ついで、昨年7月、安倍晋三・首相が強くこだわってきた「集団的自衛権の行使容認」を閣議決定した。
 今年2月、これまた閣議決定で
   「ODA大綱」 → 「開発協力大綱」
に差し替えた。・・・・従来のODAでは、他国の軍隊へ支援しなかった。これが、「非軍事分野に限って」という条件付きで他国軍を支援できるように変わった。

 (3)こうした防衛政策の大転換は、日本にも“戦争ビジネス”を育成する土壌が整えられたことを意味する。
 武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則では、
   「国際条約の違反国などへの輸出禁止」
などの条件を満たしたうえで、国家安全保障会議(NSC)の審査で認められれば、日本の企業が他国に武器関連製品を輸出できるようになった。新たな三原則には、日本の防衛産業を兵器の国際共同開発や生産に参加させやすくする狙いもある、という。

 (4)さっそく日本の企業は動き出した。
 昨年6月、パリ、「ユーロサトリ」(世界最大規模の軍事製品展示会)には三菱重工業、川崎重工業、日立製作所、東芝、富士通、NECなど名だたる企業13社が参加した。
 「今までは抑制的にやっていたが、今後は強みのある技術をもっと積極的に売り込める」【山本正己・富士通社長】
 国内の防衛産業市場は1兆7,000億円程度だが、世界の市場規模は40兆円超だ。企業が武器関連商品の輸出に意欲を示すのは、ビジネスの論理からすれば当然といえる。

 (5)武器輸出三原則撤廃に合わせ、政府も動き出した。(2)のとおり、ODA大綱を見直し、ODA予算による他国軍への支援に道を拓いた。
 防衛省では、「能力構築支援事業」(東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国軍を対象)において、これまでの人材支援だけでなく、防衛装備品の供与もできるよう法整備を図るよう検討中だ。
 ODAとは別枠の防衛省予算とはいえ、最初から軍事目的の装備品供与を想定している。「軍事版ODA」だ。【毎日新聞・社説】【注】

 (6)米国の巨大な軍産複合体のようなものが突如形成されるとは考えにくい。
 しかし、官民足並みをそろえた武器輸出の振興を通じて、「戦争」に対する心理的なハードルがぐんと低くなるだろうことは想像に難くない。
 安倍政権による防衛政策の大転換によって、日本においても“戦争”と“ビジネス”とが急速に接近し始めている。
 
 【注】社説「社説:他国軍への援助 ODA原則の抜け道だ」(毎日新聞電子版 2015年2月16日)

□佐々木実「「積極的平和主義」で進む武器輸出 急接近する“戦争”と“ビジネス” ~佐々木実の経済私考~」(「週刊金曜日」2015年2月27日号)
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