語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】赤字拡大で経営危機 ~原発大手アレバ社~

2015年03月24日 | 震災・原発事故
 (1)仏アレバ社は、世界最大の原子力産業複合企業だ。そのアレバ社が、深刻な経営危機に直面している。
 2014年度の純損失が49億ユーロ(6,600億円)に達し、同じく赤字だった2013年度の10倍にもなるのだ。好転のきざしは見えない。

 (2)危機の大きな要因は、経営戦略の破綻だ。アレバ社が社運を賭けて開発した新型原子炉「欧州加圧水型炉(EPR)」の、実用化の目処が立たないのだ。
 EPRの1基が、フィンランドで、2005年に建設に着工したのだが、
  ・2009年の営業運転開始予定が2018年にまで延びた。
  ・しかも、完成しても当初の費用見積額30億ユーロが85億ユーロに膨張するのが確実視されている。
  ・その超過分の支払をめぐって、同社はフィンランド側と国際商業会議所で仲裁手続き中だ。もし、支払責任を負わされたら、会社の存続が危うくなる。
  ・さらに、買収したウラン鉱山(アフリカ)も、ウラン価格低迷で評価損を計上する結果となった。

 (3)(2)は社内的要因だが、社外的要因もアレバ社の経営を厳しくした。
  ・欧州で原発の需要が低迷している。<例>ドイツの「脱原発」。
  ・「3・11」福島第一原発事故を契機として、世界的に原子力政策見直しの気運がある。
  ・原油価格低下に伴って、原発発電の価格競争力が後退した。

 (4)アレバ社は、3月4日に経営再建策を発表した。
  (a)国営の「フランス電力公社(EDF)」との連携強化と共同の原子力プラント輸出会社の設立。
  (b)中国市場の開拓とアフリカのウラン鉱山部門の中国売却
 ・・・・などが列挙されていたが、打開策にはほど遠い。

 (5)アレバ社の株式を99%所有する仏政府も、この問題では精彩を欠く。
 2012年に当選したオランド大統領(社会党)は、選挙中、環境派の支持を得るため、電力の原発依存度75%を「2025年までに50%に抑える」と公約した。だが、社会党政権はちっとも公約を実行せず、当初連立を組んでいた環境政党「ヨーロッパ・エコロジー=緑の党」は、2014年4月に政権を離脱した。
 国際環境団体グリーンピースなどは、「大統領の公約破り」と批判している。

 (5)フランス国内の原子力産業従事者は、22万人(アレバ社員45,000人を含む)以上だ。彼らの雇用を考えると、オランド(社会党)政権は容易に「脱原発」に踏み切ることができない、という事情がある。
 ただ、アレバ社の危機は、オランド政権の原子力政策のみならず、戦後フランスの「核優先」策(独自核戦力保持と国内原発58基との数が象徴する)を揺るがすのは確実だ。

□成澤宗男(編集部)「原子力大手アレバ 赤字拡大で経営危機」(「週刊金曜日」2015年3月20日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

    緋寒桜
   

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする