Q1 独学のメリットは?
A 独学の良い所は、自分の空いている時間に、自分のペースで勉強できるということです。
(中略)独学をしていてしばしば起きる間違いは、全部を均等なペースで勉強してしまうこと。分からなくて時間がかかる所はすっ飛ばし、すぐ理解できる所にも均等に時間をかけてしまうと、分からない所は分からないままになり、もっと速く進める所で時間を浪費することになる。
それぞれの人に合ったペース、それぞれの科目に合ったペースで学ぶことがとても大事です。
Q2 自身の独学経験は?
A (中略)ブラジルでは、大検を目指して独学しました。教材として使ったのは、日本の参考書や問題集です。日本の参考書は解説がとても分かりやすく、よくできているので、一人でも勉強しやすかった。ただ、1冊だけでは理解できないこともあるので、日本からブラジルに行くときには、各科目について3冊くらい参考書を買い込んで船便で送りました。(中略)
Q3 意志が弱くてもできる?
A (中略)では、続けるにはどうすればいいか。
僕の場合は、目標の3割ぐらい達成できたら上出来だと考えてやっていました。だったら目標を最初から下げればいいと思うかもしれませんが、僕の場合は、目標を3割に下げたら、今度は下げた目標の3割でよしとしてしまう(笑)。だから、目標は高めにしておくくらいでちょうどよかった。(中略)
社会人が忙しい中、ちょっとずつ時間をつくって勉強するのですから、そんなにきちっとできるわけがない。できないときはできないでいいし、時間があってやる気になったときに進めればいい。
Q4 本はどう読めばいい?
A 本を読むことは、本の内容を覚えて、知識として頭の中に入れることだと考えがちです。しかし今必要とされているのは、単に書かれていることを覚えるのではなく、書かれていることを通して、自分がどう考えているかという自分の思考を深めていくことなんです。
今の時代、知識やデータはタブレット端末1台で持ち運べてすぐに取り出せる。情報を頭の中に入れ、字面を暗記することには意味がありません。
では、どうすれば読書によって思考を深めることができるのか。
大事なのは、書いてあることをうのみにせず、疑ってかかることです。書いてあることを素直に受け取ってしまうと、それ以上思考が深まらない。あえて疑い、あえて反論してみる。自分で考えながら批判的に読むことが重要です。(中略)
僕の場合、本を端から端まで全部読むことは少ないかもしれません。途中でやめることもありますし、必要な部分だけを読むこともある。本を読むのはあくまで自分の思考を深めるためで、全部読むことが目的ではないと割り切っているからです。極端なことを言えば、1ページだけでも自分にとって重要なことが得られれば、その本を読む価値はあったと考えればいいのです。
Q5 独学で大事なことは?
A 独学に欠かせないのは、学んだことをアウトプットすることです。
勉強した内容を単にコピペしたり要約したりするのではなく、自分の言葉で書き出してみる。そうすると、あやふやな所や、分かったつもりで意外に分かっていない所がはっきりしてきます。
また、人に説明するのも良い訓練になります。説明を聞いてもらうだけでいい。自分がよく理解していないと、相手に易しい言葉で説明することはできません。書き出してみるのと同じで、人に説明することで、どの辺りが分かっていないのか、どこを学び直せばいいのかが見えてきます。
Q6 独学を続けるコツは?
A 僕にとって有効な方法は、複数の学習を並行して走らせておくことです。
一つのことだけに集中してしまうと、それがうまくいかなくなったとき、すごくストレスがたまって挫折感を味わうことになる。そこで心が折れてしまうことがあるんです。
でも、三つ四つ学習テーマを持っていれば、一つが駄目でも別のテーマがうまくいってくれることもある。それで、気持ちのバランスが取れて落ち込まずに済みます。
逆に、一つのことが気持ちよく勉強できると、うまくいっていなかった別のことが、すんなり理解できたりするんですよ。
よく人から「独学で分からない所が出てきたらどうすればいいのですか」と聞かれます。答えはシンプルで、取りあえず飛ばせばいい。先に進んでから後で戻ると、意外と分かるようになることも多いんです。何でもいっぺんに理解しようとせず、焦らずに時間をかけることも必要です。(後略)
□柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)「東大教授が勉強のコツを伝授/今こそ独学を始めよう! ~特集「独学力」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年10月7日号)を一部引用
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「
【独学】力が今、なぜ必要とされているか? ~学習量の足りない日本のビジネスパーソン~」