安倍首相の勢いが不気味だ。
秘密保護法強行成立も凄まじかったが、その後の集団的自衛権解釈変更・武力行使容認を閣議決定で行おうとする画策に至っては、まるでヤンキーのノリ。
どうひねくり回しても現行憲法9条の読み方からは武力行使容認が導き出せないとなると、日本人の母親が赤ちゃんを抱いて米軍の船に乗っているポンチ絵をテレビに映し出し、「この船が攻撃されても日本が武力で守ることができなくていいのか。総理には国民の安全と生命を守る責任がある」など、三文芝居のような見得を切ってみせる、
与党を組む公明党をなだめるため、集団的自衛権のなかでは必要最小限度の武力のみ使用を可能にするという、玉虫色の「三要件」を示す一方、この武力行使は国連多国籍軍への参加など、集団安全保障での行動についても認めると、適用範囲は広がる一方だ。
オバマ政権は、2012年から5か年かけて、年間国防予算を1,500億ドル(15兆円)以上圧縮する計画を実施中で、戦争の拡大はできないのが実情だ。
しかし、現在のイラクの内乱には、また手を出さざるをえない。米国はかねてイラン(イスラムのシーア派大国)と敵対してきた。だが、国内多数派のシーア派を抑えてきたイラク大統領サダム・フセイン(スンニー派)を叩き潰し、同国のシーア派伸張のきっかけをつくったのは米国だからだ。
米軍のイラク侵攻(2003年)当時、日本の中東研究者が懸念してきた事態が、現実の問題となった。シリアではアサド政権もスンニー派の反政府勢力に追いつめられており、イラクでも「シリア化」が危惧される。
イラク派兵を否定してきたオバマ大統領もやむなく、100人規模の特殊部隊構成による軍事顧問団をイラク治安部隊に派遣する意向をほめのかしたが、6月19日の発表では、それが一気に300人に膨れあがった。
その対応・様態は、ベトナム戦争初期とそっくりだ。
1960年、アイゼンハワー政府が、小規模な軍事顧問団を南ベトナムに派遣したが、それが終わりなき泥沼介入の端緒だった。
イラクも国土を接するペルシャ湾の出入り口、石油タンカーが往来するホルムズ海峡に機雷が敷設されたら、日本が大きな危機に陥る。だから、機雷除去の掃海作業を、米軍なり多国籍軍なりと一緒にやる、と日本政府は言い出した。
確かにそうなると、集団的自衛権・集団安全保障、両領域での武力行使が必要になるだろう。機雷の敷設国が、これを取り除く国々は敵、掃海作業は戦闘行為と見なし、攻撃してくるからだ。武力対決は避けられまい(朝日新聞・6月21日朝刊)。
かくて安倍首相は、武力行使の範囲を集団的自衛権から集団安全保障にまで広げる段取りを、米国政府の新しい対イラク軍事方針の歩調に合わせていく。
□神保太郎「メディア批評第80回」(「世界」2014年8月号)の「(1)戦後最大の曲がり角へ--国民とメディアの「共犯関係」」
↓クリック、プリーズ。↓
秘密保護法強行成立も凄まじかったが、その後の集団的自衛権解釈変更・武力行使容認を閣議決定で行おうとする画策に至っては、まるでヤンキーのノリ。
どうひねくり回しても現行憲法9条の読み方からは武力行使容認が導き出せないとなると、日本人の母親が赤ちゃんを抱いて米軍の船に乗っているポンチ絵をテレビに映し出し、「この船が攻撃されても日本が武力で守ることができなくていいのか。総理には国民の安全と生命を守る責任がある」など、三文芝居のような見得を切ってみせる、
与党を組む公明党をなだめるため、集団的自衛権のなかでは必要最小限度の武力のみ使用を可能にするという、玉虫色の「三要件」を示す一方、この武力行使は国連多国籍軍への参加など、集団安全保障での行動についても認めると、適用範囲は広がる一方だ。
オバマ政権は、2012年から5か年かけて、年間国防予算を1,500億ドル(15兆円)以上圧縮する計画を実施中で、戦争の拡大はできないのが実情だ。
しかし、現在のイラクの内乱には、また手を出さざるをえない。米国はかねてイラン(イスラムのシーア派大国)と敵対してきた。だが、国内多数派のシーア派を抑えてきたイラク大統領サダム・フセイン(スンニー派)を叩き潰し、同国のシーア派伸張のきっかけをつくったのは米国だからだ。
米軍のイラク侵攻(2003年)当時、日本の中東研究者が懸念してきた事態が、現実の問題となった。シリアではアサド政権もスンニー派の反政府勢力に追いつめられており、イラクでも「シリア化」が危惧される。
イラク派兵を否定してきたオバマ大統領もやむなく、100人規模の特殊部隊構成による軍事顧問団をイラク治安部隊に派遣する意向をほめのかしたが、6月19日の発表では、それが一気に300人に膨れあがった。
その対応・様態は、ベトナム戦争初期とそっくりだ。
1960年、アイゼンハワー政府が、小規模な軍事顧問団を南ベトナムに派遣したが、それが終わりなき泥沼介入の端緒だった。
イラクも国土を接するペルシャ湾の出入り口、石油タンカーが往来するホルムズ海峡に機雷が敷設されたら、日本が大きな危機に陥る。だから、機雷除去の掃海作業を、米軍なり多国籍軍なりと一緒にやる、と日本政府は言い出した。
確かにそうなると、集団的自衛権・集団安全保障、両領域での武力行使が必要になるだろう。機雷の敷設国が、これを取り除く国々は敵、掃海作業は戦闘行為と見なし、攻撃してくるからだ。武力対決は避けられまい(朝日新聞・6月21日朝刊)。
かくて安倍首相は、武力行使の範囲を集団的自衛権から集団安全保障にまで広げる段取りを、米国政府の新しい対イラク軍事方針の歩調に合わせていく。
□神保太郎「メディア批評第80回」(「世界」2014年8月号)の「(1)戦後最大の曲がり角へ--国民とメディアの「共犯関係」」
↓クリック、プリーズ。↓