(1)遺伝子組み換え(GM)食品表示に動きが起きている。韓国、台湾、中国で。
日本は、その動きから取り残されている。
(2)2015年4月に食品表示法が施行された。同法を所管する消費者庁は、機能性表示食品問題への対応に追われている。GM食品の表示など、消費者からの要望の強い食品表示制度の改正がまったく前に進んでいない。
板東久美子・消費者庁長官の見通しによれば、
「(8月27日)現在、マンパワーが法律施行後の対応に裂かれており、懸案事項への対応ができない」
それでも、
「遺伝子組み換え食品表示問題は、インターネット表示、加工食品の原料原産地表示、食品添加物表示と並び、検討を行うことになっており、年内にも検討会を立ち上げる。
ただし、
「消費者団体にもいろいろな意見があり、業界団体の意見も聞いたりしながら、実現にどれほどの困難さがあるかを判断の材料にしたい」
つまり、優先順位をつけて改正ができる範囲から進めたい、とのこと。
これは、GM食品表示の厳格化は、業界団体が強く反対していて、なかなか実現しない、という実態を婉曲に述べたものだ。
(3)(2)のような日本の動きに対して、韓国、台湾、中国ではGM食品の厳格化が進んでいて、ヨーロッパに近い厳密な表示制度に移行しつつある。
その動きと比較してみると、日本の表示の遅れが一目瞭然だ。
①表示対象食品、②表示対象原材料・品目、③混入率をどこまで認めるか・・・・について、
日本・・・・①食用油や醤油など大半の食品が表示の対象外、②上位3品目(重量比5%以上)に限定、③5%以上
韓国・・・・①日本と同じ、②全成分表示、③1%以上
台湾・・・・①食用油や醤油など蛋白質が含まれない食品も表示、②限定の扱いなし、③3%以上、さらに0.9%以上をめざす
中国・・・・①全食品表示、②台湾と同じ、③1%以上
EU・・・・①中国と同じ、②全成分表示、③0.9%以上
(4)これと違った意味で注目されているのが米国だ。
市民団体が地元政府に働きかけ、州独自のGM食品表示法を制定する動きが強まっている。バーモント州では、来年度からGM食品表示が行われることになった。
しかし、それに対する業界の攻撃はすさまじく、州法を無効にする食品表示法案が提出されている。
それは、米国食品医薬品局(FDA)が安全性を評価して必要としたもののみ表示を義務づける、というもの。具体的には、全米共通の「遺伝子組み換えでない表示(Non-GMO)」認証プログラムを作り、Non-GMO認証のハードルを高くする、というものだ。
名目はGM食品表示の全米統一化だが、この法律が施行されると、各スウェーデンの表示法は無効になる。
(5)米国の市民団体は、(4)の法案はGM食品表示をさせず、州政府の表示法を無効にすることを目的とした「GM食品表示妨害法」だ、と指摘している。
この法案が持つ性格は、そこにとどまらない。企業の活動をやりやすくし、自治体の権利を弱め、国の力を強化する。そのため、米国内でこれまでGM作物・食品に関する規制の根拠となった法律や規則のすべてを無効にする可能性がある。その結果、GMOを野放しにしてしまう、と複数のメディアは伝えている。
連邦議会下院は7月23日にこの法案を可決し(賛成275,反対150)、これから上院で審議される。
(6)米国の動きは、直接日本にも影響しそうだ。
TPPによって、この法案の中身が米国内で強制されるだけでなく、日本を含め参加国の表示制度そのものが攻撃されることになりかねない、と米国メディアは伝えている。
アジアのような表示厳密化は、日本ではたして可能か。
□天笠啓介「アジアではGM食品表示の厳格化進む。米国はGM食品表示妨害法が審議中」(「週刊金曜日」2015年9月11日号)
↓クリック、プリーズ。↓
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」
日本は、その動きから取り残されている。
(2)2015年4月に食品表示法が施行された。同法を所管する消費者庁は、機能性表示食品問題への対応に追われている。GM食品の表示など、消費者からの要望の強い食品表示制度の改正がまったく前に進んでいない。
板東久美子・消費者庁長官の見通しによれば、
「(8月27日)現在、マンパワーが法律施行後の対応に裂かれており、懸案事項への対応ができない」
それでも、
「遺伝子組み換え食品表示問題は、インターネット表示、加工食品の原料原産地表示、食品添加物表示と並び、検討を行うことになっており、年内にも検討会を立ち上げる。
ただし、
「消費者団体にもいろいろな意見があり、業界団体の意見も聞いたりしながら、実現にどれほどの困難さがあるかを判断の材料にしたい」
つまり、優先順位をつけて改正ができる範囲から進めたい、とのこと。
これは、GM食品表示の厳格化は、業界団体が強く反対していて、なかなか実現しない、という実態を婉曲に述べたものだ。
(3)(2)のような日本の動きに対して、韓国、台湾、中国ではGM食品の厳格化が進んでいて、ヨーロッパに近い厳密な表示制度に移行しつつある。
その動きと比較してみると、日本の表示の遅れが一目瞭然だ。
①表示対象食品、②表示対象原材料・品目、③混入率をどこまで認めるか・・・・について、
日本・・・・①食用油や醤油など大半の食品が表示の対象外、②上位3品目(重量比5%以上)に限定、③5%以上
韓国・・・・①日本と同じ、②全成分表示、③1%以上
台湾・・・・①食用油や醤油など蛋白質が含まれない食品も表示、②限定の扱いなし、③3%以上、さらに0.9%以上をめざす
中国・・・・①全食品表示、②台湾と同じ、③1%以上
EU・・・・①中国と同じ、②全成分表示、③0.9%以上
(4)これと違った意味で注目されているのが米国だ。
市民団体が地元政府に働きかけ、州独自のGM食品表示法を制定する動きが強まっている。バーモント州では、来年度からGM食品表示が行われることになった。
しかし、それに対する業界の攻撃はすさまじく、州法を無効にする食品表示法案が提出されている。
それは、米国食品医薬品局(FDA)が安全性を評価して必要としたもののみ表示を義務づける、というもの。具体的には、全米共通の「遺伝子組み換えでない表示(Non-GMO)」認証プログラムを作り、Non-GMO認証のハードルを高くする、というものだ。
名目はGM食品表示の全米統一化だが、この法律が施行されると、各スウェーデンの表示法は無効になる。
(5)米国の市民団体は、(4)の法案はGM食品表示をさせず、州政府の表示法を無効にすることを目的とした「GM食品表示妨害法」だ、と指摘している。
この法案が持つ性格は、そこにとどまらない。企業の活動をやりやすくし、自治体の権利を弱め、国の力を強化する。そのため、米国内でこれまでGM作物・食品に関する規制の根拠となった法律や規則のすべてを無効にする可能性がある。その結果、GMOを野放しにしてしまう、と複数のメディアは伝えている。
連邦議会下院は7月23日にこの法案を可決し(賛成275,反対150)、これから上院で審議される。
(6)米国の動きは、直接日本にも影響しそうだ。
TPPによって、この法案の中身が米国内で強制されるだけでなく、日本を含め参加国の表示制度そのものが攻撃されることになりかねない、と米国メディアは伝えている。
アジアのような表示厳密化は、日本ではたして可能か。
□天笠啓介「アジアではGM食品表示の厳格化進む。米国はGM食品表示妨害法が審議中」(「週刊金曜日」2015年9月11日号)
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