語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中村稔「塔」

2015年09月16日 | 詩歌
 確実に天心を目差す
 柔軟であった日の心の軌跡。
 ゆるやかな破風はいくたびか地に叛き
 そして そのままにかたちをなした!

 木々はおのおのの緑をつくし
 林の向うには聚落がある。
 今日人々は忙しげに往来し
 もはや声をあげて笑うことをしない。

 島国の晴天は傷つきやすく
 ゆるやかな破風はふたたび又みたび
 地に叛き 地に叛きつつ空に触れ合う。

 ああ私たちが此処を発って 明日
 いくばくの瓦礫をつむとしても
 ついに稜角を成すことはないだろう・・・・。

□中村稔「塔」(『鵜原抄』、思潮社、1966:高村光太郎賞)
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 【参考】
【詩歌】中村稔「誕生」
【詩歌】中村稔「城」
【詩歌】中村稔「埴輪」
【メンタル・スケッチ】群衆
【メンタル・スケッチ】挽歌
【本】この1年に出会った本
【中村稔ノート】凧 ~戦禍の記憶~
【中村稔ノート】ある潟の日没 ~震災と戦災~
【読書余滴】追悼、森澄雄の生涯と仕事
書評:『本読みの達人が選んだ「この3冊」』
書評:『加藤周一自選集8 1987-1993』


【古賀茂明】軽減税率に関する本当の問題

2015年09月16日 | 批評・思想
 (1)消費税の軽減税率に係る財務省案が明らかになった。
    買うときの消費税はすべて10%だが、
    酒を除く食料品については2%分が後で還付される
という仕組みだ。ただし、いくつかの条件がある。
  (a)消費者は、マイナンバーカードを申請・入手しなくてはならない。
  (b)食料品購入時にはマイナンバーカードを提示する。
  (c)購入情報は、政府の情報センターに送られる。
  (d)還付を受けるには、年末調整で申告する。
    ①還付額は1人当たり年間4,000円程度。
    ②食料品20万円が軽減の対象になる。月平均2万円弱。
  (e)銀行口座の事前登録が義務付けられる。

 (2)(1)の制度のメリットは、
  (a)軽減税率の対象が食料品全体なので、販売店側の仕分けや事務の負担が小さく、消費者にもわかりやすい。対象品目選定に関する利権が発生しにくい。
  (b)還付段階で、所得によって還付額に差をつけて、格差を是正したり、子どもの分の合算を認めて子育て支援を行うこともできる。

 (3)(1)の制度のデメリットは、
  (a)買い物時点で10%の消費税を払うので、年末の還付を待てない貧困層への影響が深刻だ。痛税感は避けられない。消費者の節約志向を強め、景気に大きなマイナスを与える。
  (b)食料品販売店には専用端末が必要で、中小企業などに補助金を出すとしても、政府のコストは膨大になる。いわゆるITゼネコンの利権が拡大し、壮大な無駄遣いが生じる。
  (c)困窮した高齢者世帯などが還付手続きをするのは困難だし、マイナンバーカードの紛失、盗難、詐取などのリスクも高い。政府からの情報リスクも、年金情報漏洩事件からすると、相当高いと言わねばならぬ。税務署に銀行口座を把握されたくないとか、消費行動を国家に把握されたくない人は還付を受けられない。

 (4)(3)に列記したこと以上に、今回の案の最大の問題は、貧乏人が還付を受けるために真っ先にマイナンバーカードを持たざる得ないように追い込まれていく点だ。
 その結果、どうなるか。
 貧困層は、銀行口座が一つという世帯が多い。それを登録すると収入と支出を丸ごと政府に把握される。将来、生活保護受給者の口座を調べて、少しでも親戚からの仕送りがあれば生活保護の支給を停止する、というな事態も出てくる。
 これでは、国民の支持を得られない。

 (5)では、どうすればよいか。
  (a)マイナンバーの活用は、富裕層の脱税、医師の不正診療請求、政治家の汚職や政治資金規正法違反などの摘発に特化して始める。一般庶民への適用は、その後とする。
  (b)軽減税率導入は止める。その代わり、マイナンバーで把握された所得と資産、家族構成などに応じて貧困層、子育て層などに各種の支援策を講じる。政府が国民に対して保障すべき最低限度の生活(ナショナルミニマム)実現の手段としてマイナンバーを位置づけるのだ。・・・・これなら国民は納得するだろう。
  (c)マイナンバーと軽減税率還付のリンクはあまりにも俗悪だ。財務省は、本来あるべき制度、国民のための制度を提案してもらいたい。

□古賀茂明「軽減税率、本当の問題 ~官々愕々第170回~」(「週刊現代」2015年9月26日・10月3日号)
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 【参考】
【古賀茂明】国民のために働く官僚の左遷 ~読売新聞の問答無用~ 
【古賀茂明】安倍首相の「積極的軍事主義」が根付くとき
【古賀茂明】電力自由化は進んでいない
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【古賀茂明】安保法案の裏で利権拡大 ~原子力ムラ~
【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
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【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
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【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
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【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~


【詩歌】中村稔「誕生」

2015年09月15日 | 詩歌
 1

 つくろいようもなく破れた空の裂目から
 冬が押しよせ
 磔になった裸の木が
 枝々をばたつかせて慓える

 眼をつぶると
 空にいっぱいの夕焼がしたたり落ちる

 空は漏斗の形をしていて
 その吹きぬけの底に
 砂まじりの風が
 ぶつかってはひきちぎるのだ

 おれは
 漏斗の形をしたおれの心を背負って
 ボロ屑をあさるように
 そんな空のきれはしをさがしまわる

 --ああ そんな季節だ
 おまえが生れたのは!

 2

 爽やかな十月の風のなかに
 人造湖をかぎる突堤
 天をかぎるビルの稜線
 そして おれの生涯をかぎるおまえ。

 3

 屋上から抬頭する雲
 内庭に沈む一日の喧騒
 しずかにひろがるおれの領土
 おまえとその母親のための 夜。

 4

 炎天の下
 樹々の群立つ葉のように首を真直に立て
 枝々のように僕たちは腕をくむ

 わが子は曙のような笑みをうかべ
 肢をばたつかせ身をよじらせ
 前へ進もうとしては後ずさりし
 芋虫のような逼い方を覚えたばかり……

 夕ぐれ 熱気のこもる凪のなかの
 樹々に暮れのこる梢のように
 音もなく僕たちは時をおくり
 喘ぐような叫びをあげたりもする

 ああ わが子が曙のような笑みをうかべ
 大地に立って歩きはじめるのも
 もう間近だ。

□中村稔「誕生」(『鵜原抄』、思潮社、1966:高村光太郎賞)
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 【参考】
【詩歌】中村稔「城」
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【本】この1年に出会った本
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【中村稔ノート】ある潟の日没 ~震災と戦災~
【読書余滴】追悼、森澄雄の生涯と仕事
書評:『本読みの達人が選んだ「この3冊」』
書評:『加藤周一自選集8 1987-1993』

【安倍】政権のアキレス腱は稲田政調会長 ~ベタ記事が示唆~

2015年09月15日 | 批評・思想
 (1)内閣改造が近づき、自民党内がざわついている。
 再任がありえない閣僚の筆頭は下村博文・文科大臣である・・・・という点で、衆目は一致している。
   国立競技場問題
   五輪エンブレム選考の不手際
が無関係ではない。それに、
   学習塾業界からの献金問題
   国会での誤認答弁の繰り返し
が知られている。

 (2)文科省内では、早くも後任大臣に稲田朋美・自民党政務調査会長を想定しているという。
 たしかに、歴史修正主義の点で安倍首相と一致している。稲田会長本人も望むところだろう。
 しかし、事が予想どおりに進むか否か、定かではない。その原因は、稲田会長本人の最近の言動にある。
  (a)8月11日、BSフジに出演。「70年談話」では「お詫び」をすべきでないとし、談話後に東京裁判や連合国軍総司令部(GHQ)による占領政策を総点検する党内機関を設置したい、と発言した。
  (b)8月15日、靖国神社参拝後、稲田会長は境内で開かれていた「日本会議」主催の集会に参加し、「戦争指導者の責任が追求された東京裁判を検証する新組織を党内に設置する意向を重ねて示した」(8月16日付け「産経新聞」)。「70年談話」に「お詫び」が盛り込まれ、首相は靖国参拝を今回も回避した。党内タカ派の稲田会長の苛立ちが表に出た格好だ。

 (3)東京裁判の再検証はしかし、「東京裁判史観」否定の立場にほかならない。首相を含む歴史修正主義者たちが最重要視している部分でもある。
 にもかかわらず、「70年談話」では安倍カラーを抑制し、歴史修正主義もトーンを下げた。中国などへの配慮だけでなく、米国からの厳しい要求に屈したのだ、とされている。対米従属路線をひた走る安倍首相としては当然のことだった。

 (4)その米国にとって、東京裁判こそ戦後日本の方向性を貞得た占領政策の要をなす。米国は、占領統治のため、昭和天皇を戦犯に指名すべきという連合国多数の意見を押し切り、天皇制の存続を認めた。
 一方で、連合国多数の意見に合わせるために仕組まれたのが東京裁判だった。昭和天皇が負わされるはずの戦争責任を東条英機たちA級戦犯に押し付けることが、最初から日米間で決められていた。

 (5)(4)の事実は、今では判明している。
 しかし、日米政府の情報操作などによって、日本国内ではその事実がまだあまり知られていないし、忘れようとしている。
 にも拘わらずいま東京裁判の検証をすれば、そうした日米にとって「不都合な事実」が不可避的に改めて広く知られることになる。
 稲田会長の閣僚登用に、米国側は難色を示すはずだ。

 (6)8月26日付け「朝日新聞」朝刊のベタ記事は、自民党内の副幹事長会議の際、検証の取りやめを求める強い意見が出た、と伝えている。朝日紙の読者には唐突な話題だが、稲田会長が党内の要職にとどまったとしても、安倍政権のアキレス腱に変わりがないことを、同記事は示唆している。
 「ベタ記事恐るべし」

□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「政権のアキレス腱は稲田政調会長だとベタ記事が示唆!」(「週刊金曜日」2015年9月11日号)
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【詩歌】中村稔「城」

2015年09月14日 | 詩歌
 城壁と城壁との間の道を昇り又降り
 その一角から内部に逼いりこみ
 投げだされるように逼い出て一日を終える
 冬になれば路上には風の塊りがなだれ落ちる

 そのなかで人はよく微笑をたもち
 もはや温和にしか言葉を話さない
 偶々傍らの花瓶に花が挿してなかったとしても
 所詮言葉と言葉との間には無数の迷路がある

 城壁は泥土の上に連なって聳え
 眺瞰する陰湿な低地の隅々に
 迷路にみちびかれた夥しい人の住家がある

 夜 平原に灯が乱舞するころ
 人はおのがじし城壁をつむ 陰湿な低地の隅に
 すでに風の塊りを防ぐほどに城壁は強固であろうか?

□中村稔「城」(『鵜原抄』、思潮社、1966:高村光太郎賞)
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 【参考】
【詩歌】中村稔「埴輪」
【メンタル・スケッチ】群衆
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【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った

2015年09月14日 | ●佐藤優
 (1)北方領土交渉が、新生ロシア成立(1991年12月)後、最大の危機を迎えている。しかるに、首相官邸、外務省、マスメディアは事柄の本質をよくわかっていないらしい。

 (2)9月2日、モルグロフ・ロシア外務省次官(北方領土交渉担当官)が、前代未聞の挑発的発言を行った。
 <ロシアのモルグロフ外務次官は2日、北方領土問題について「私たちは日本側といかなる交渉も行わない。この問題は70年前に解決された」と述べた。インタファクス通信が伝えた。ロシア外務省の強硬姿勢で、日本側がプーチン大統領の訪日を受け入れることは困難な情勢とみられる。
 モルグロフ氏は、日本政府がメドベージェフ首相の北方領土訪問を批判していることに対して、こうした見解を示した。
 モルグロフ氏は「南クリル(北方領土のロシア側呼称)は第2次大戦の結果、法的に我々の側に移った。ロシアの主権と管轄権がこれらの島にあることに疑いはない」と強調。両国の交渉が中断していることについても、ウクライナ危機を理由に対ロ制裁に加わった日本側に責任があるという考えを示した。
 プーチン大統領は昨年5月には北方四島すべてが交渉の対象となるという考えを示していた。今回のモルグロフ氏の発言は、大統領の発言に反しており、これまでの交渉の流れにはそぐわない。ただ、現在のロシア外務省の厳しい対日姿勢を示したものだと言える。
 日本政府はプーチン氏の年内訪日の準備のために岸田文雄外相の訪ロを検討していたが、白紙に戻っている。(北京=駒木明義)>【注1】

 (3)駒木明義・「朝日新聞」モスクワ支局長は、政治部出身、北方領土交渉を過去20年近く詳細にウォッチしている一級の専門家だ。駒木支局長は、今回のモルグロフ次官の発言は「大統領の発言に反しており、これまでの交渉の流れにはそぐわない」と指摘する(まさにその通り)。
 モルグロフ次官は、「根室半島と歯舞群島の間に国境線を画定する、すなわち北方四島がロシア領であることを日本が認めるならば平和条約を締結してもよい」という交渉スタンスを示している。
 これは、過去の日露間の合意を完全に無視するものだ。
  (a)日ソ共同宣言(1956年10月)で、ソ連は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを約束している。日ソ共同宣言は、両国議会が批准した法的拘束力を持つ国際約束だ。
  (b)東京宣言(1993年10月)で、日露両国は、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することに合意している。
  (c)イルクーツク声明(2001年3月)で、プーチン大統領が、日ソ共同宣言と東京宣言を明示的に再確認している。
 (b)と(c)は、法的拘束力はないが、重要な政治的合意だ。今回のモルグロフ次官の発言は、ロシア外務省が過去に日本に対して行った約束を反故にする、と宣言した深刻な事態だ。

 (4)本来ならば、原田親人・駐露大使が緊急記者会見を行い、
 「日本政府としては今回のモルグロフ次官による従来のロシア政府の立場を否定する発言に当惑している。今後の対露外交政策について政府指導部と協議するために一時帰国する」
と宣言し、
 「こういう挑発行為のツケは高くつくぞ」
というシグナルを出さねばならない。しかし、首相官邸も外務省も、犬の遠吠えのような批判をするだけで、ロシアに「少しやりすぎた」と思わせるような措置をとっていない。
 こういう外交のていらくからすると、モスクワ勤務の日本人外交官が、ロシア秘密警察に個人的弱みでも握られている可能背も否定できない。

 (5)ロシア外務省の消極的姿勢を突破する力は、プーチン大統領にしかない。しかし、客観的に見た場合、プーチン大統領も頼りにならない。
 <ロシアのプーチン大統領は2日、東シベリア・ザバイカル地方のチタを訪れ、第二次大戦の犠牲者の記念碑に献花した。
 ロシア極東のシベリアではこの日、第二次大戦終結70年を祝う事実上の対日戦勝記念式典が行われ、軍人や各種兵器によるパレードが実施された。シベリアで行われた式典に国家元首が参加するのは初めてとみられる。プーチン氏はパレードには出席しなかったが、献花をすることで住民の愛国心を鼓舞する狙いがあったとみられる。
 現地報道によると、プーチン氏は地元住民らと握手を交わし、住民らは涙を浮かべていたという。>【注2】

 (6)スターリン・ソ連首相は、東京湾の米艦ミズーリ号の上で日本が降伏文書に署名した1945年9月2日に行ったラジオ演説で、次のように述べた。
 <1904年の日露戦争でのロシア軍隊の敗北は国民の意識に重苦しい思い出をのこした。この敗北はわが国に汚点を印した。わが国民は、日本が粉砕され、汚点が一掃される日がくることを信じ、そして待っていた。40年間、われわれ古い世代のものはこの日を待っていた。そして、ここにその日はおとずれた。きょう、日本は敗北を認め、無条件降伏文書に署名した。
 このことは、南樺太と千島列島がソ連邦にうつり、そして今後はこれがソ連邦を大洋から切りはなす手段、わが極東にたいする日本の攻撃基地としてではなくて、わがソ連邦を大洋と直接にむすびつける手段、日本の侵略からわが国を防衛する基地として役だつようになるということを意味している。>【注3】

 (7)2010年、ロシア政府は9月2日を「第二次世界大戦の日」に定め、毎年、シベリアや極東の各地で記念式典を開いている。
 プーチン大統領はしかし、これまでこの記念行事に参加したことはなかった。今回、日本のシベリア出兵の舞台となったチタで、軍事パレードの観閲は行わなかったとはいえ、対日戦争記念行事に参加することで、プーチン大統領は、第二次世界大戦をめぐる歴史認識についてスターリン主義に復帰した。
 この事実は、プーチンは対日関係改善の意欲をなくしつつあることを示す。

 (8)近未来に北方領土が進展する可能性は皆無だ。
 日本政府は、ロシアと提携して中国を牽制するカードを失った。その結果、沖縄の基地機能を強化し、中国を軍事的に作成するという論者が安倍政権の周辺で力を増すことになる。
 北方領土交渉の停滞のツケを沖縄が払わせられるリスクをいかに回避するか。

 【注1】記事「北方領土問題「解決済み」 ロシア外務次官」(朝日新聞デジタル 2015年9月3日)
 【注2】記事「プーチン大統領、シベリアでの対日戦勝式典で献花 愛国心の鼓舞狙う」(産経ニュース 2015年9月2日)
 【注3】「スターリンの「ソ連国民に対する呼びかけ」(放送)」(独立行政法人北方領土問題対策協会HP)

□佐藤優「ロシアと提携して中国を索制するカードを失った ~飛耳長目 第111回~」(「週刊金曜日」2015年9月11日号)

 【参考】
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 


【詩歌】中村稔「埴輪」

2015年09月13日 | 詩歌
 その魚はじつに久しい間睡っていた
 その眼はすでに見ひらかれたまま
 土砂にみたされて赭土の底にふかく
 みじろぎもしなかった 何物を見ることもなく

 洗われて掌の上にあるとき
 その魚の眼はなお見ひらかれていた
 その泪に
 かいまみた厨房の情景が疾走して過ぎた

 その魚よりもさらに風化しやすい
 掌の上にあるとき
 その魚は知らなかった
 何処から来て何処へ去るかを

 ああ その魚はみじろぎもしなかった 掌の上に
 そのひとつの物のかたちを。

 *

 中村稔は、千葉県木更津市生まれ。父・光三は、尾崎秀実、リヒャルト・ゾルゲの予審担当の主任判事。1952年、弁護士・弁理士登録。
 1946年、『世代』に参加。
 1950年、第一詩集『無言歌』刊行。1967年、詩集『鵜原抄』で高村光太郎賞。1977年、詩集『羽虫の飛ぶ風景』で読売文学賞(詩歌俳句部門)。1988年、『中村稔詩集 1944-1986』で芸術選奨文部大臣賞、1992年、『束の間の幻影』で読売文学賞(評論・伝記)。1996年、詩集『浮泛漂蕩』で藤村記念歴程賞。1998年、日本芸術院会員。『私の昭和史』に至る業績で2004年度朝日賞。2005年、『私の昭和史』で毎日芸術賞、井上靖記念文化賞受賞。2006年から10年まで芸術院第二部長。2001年、文化功労者。宮沢賢治、中原中也の評論・伝記、複数。日本近代文学館理事長を経て名誉館長。
 弁護士・弁理士としては、知的財産法一般を専門とする。現在は中村合同特許法律事務所代表パートナー。日本弁護士連合会無体財産権制度委員会委員長(1979年 - 1981年)、国際知的財産保護協会本部執行委員(1966年 - 1991年)、日本商標協会会長(1988年 - 1995年)などを歴任。

□中村稔「埴輪」(『鵜原抄』、思潮社、1966:高村光太郎賞)
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 【参考】
【メンタル・スケッチ】群衆
【メンタル・スケッチ】挽歌
【本】この1年に出会った本
【中村稔ノート】凧 ~戦禍の記憶~
【中村稔ノート】ある潟の日没 ~震災と戦災~
【読書余滴】追悼、森澄雄の生涯と仕事
書評:『本読みの達人が選んだ「この3冊」』
書評:『加藤周一自選集8 1987-1993』


【絵画】ユトリロと古きよきパリ

2015年09月13日 | 歴史
    

 (1)「作品--モンマルトル パリ」は、モーリス・ユトリロ(1883-1955)がパリを描いた作品を年代別にとりあげる。
 併せて、
   ①関係する当時の写真、
   ②同じ情景の、現代の写真(<例>サン=ミッシェル河岸)
を付す。
 ユトリロ作品へのガイドであるとともに、ユトリロが活きた時代と今のパリ案内ともなっている。写真豊富で、眺めるだけで楽しい。付図のユトリロ関連地図を片手に、モンマルトル界隈を散策することもできる。

 (2)井上輝夫「モーリス・ユトリロの生涯」によれば、母のシュザンヌ・ヴァラドンは野生児で、人のいうことを聞くような人物ではなかったらしい。モデルとしてピュヴィス・ド・シャヴァンヌを始め、高名な画家をわたり歩いた。ルノアール「ブージヴァルの踊り」の踊り子のモデルはシュザンヌである。
 この間、シュザンヌも画家としての腕を磨いた。
 モーリスがアルコールに溺れ、幽閉状態の晩年を送ったことを、この強烈な個性の母親との関連で見ると興味深い。

 (3)横江文憲「パリ 絵画と写真の出会い」は、ユトリロと同時代人だった写真家ウジェーヌ・アジェに焦点をあてて写真と絵画との関係を論じる。
 ユトリロとの関係でいえば、写真でしか把えることのできない時間(瞬間)を読み取り、それを絵画に昇華していった。それまでの絵画が、ある視点からの対象把握であり、いわば長時間の時空間を平面に構成する。写真を用いることにより、ある瞬間の時空間を平面に構成することができるようになったのだ。
 ただし、ユトリロの場合、写真に対する接し方が違っている。アルコールに溺れ、奇行を繰り返し、泥酔しては乱暴した、そういう姿を知っている人びとから、街中で絵を描いているとき罵声を浴びせかけられ、仕事を邪魔されることもたびたびだった。そのため、ますます孤独な制作を強いられるようになり、おのずと室内で絵はがきや写真を用いて制作するようになったのだ。ユトリロにとって、写真は代理体験できる手段でありさえすれば、それでよかった。写真の持つ平面の表象に眼を向けていたのだ。

□井上輝夫/横江文憲/熊瀬川紀『ユトリロと古きよきパリ』(新潮社(とんぼの本)、1985)
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    ルノアール「ブージヴァルの踊り」
   

【詩歌】鳥見迅彦「霧の尾根」

2015年09月12日 | 詩歌
 残雪と偃松(はいまつ)と残雪と偃松と
 黒と銀と黒と銀と
 ゆらゆれる尾根をわたって
 一人の人がゆく

 その人はふりかえらない
 ふりかえることは孤独にとって罠である
 もしも背後の景色のほうが美しかったら
 どうする?
 もとのみちを帰るのか?

 霧がやってきてゆがんだその人の後姿を乳色のカーテンでかくしたときに
 おそるおそる頬をまわしたのは 臆病なけもののようなその人だ
 何が見えた?
 見えたのは霧にとりかこまれた自分だけではなかったか? それが罠だ
 ついに罠にかかった痛ましい過ちを
 やがては消えてゆく霧も運び去ってはくれない

 残雪と偃松と残雪と偃松と
 ゆらゆれる尾根をわたって
 二度とはふりかえらない人がゆく
 黒と銀と黒と銀と・・・・

□鳥見迅彦「霧の尾根」(『けものみち』、昭森社、1955:第6回H氏賞)
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【古賀茂明】国民のために働く官僚の左遷 ~読売新聞の問答無用~ 

2015年09月12日 | 社会
 (1)8月28日(金)、安保法案で揺れる国会周辺の騒ぎをよそに、永年住み慣れた霞が関を追われ、さいたま市の新都心ビルへと静かに去っていった男がいた。
 翌29日、日経新聞朝刊に「望まぬ契約勧誘規制『さらに検討』特商法改正へ中間報告」という見出しが載った。
 さいたま市に去っていった男は、消費者庁でこの問題を担当する「参事官」だった。

 (2)特定商取引法改正をめぐる新聞業界のドン、読売新聞の横暴の話【注】の続きだ。
 2015年3月、老人などの消費者被害で問題となっている訪問販売の規制強化を行うために、消費者委員会特定商取引法専門調査会で議論が始まった。
 現在、特定商取引には「再勧誘禁止」というルールがある。一度断られたら、再度勧誘してはいけない、ということだ。しかし、実際にはこれに違反して、しつこく勧誘し、それによって被害を受けるお年寄りは後を絶たない。
 そこで特定商取引法専門調査会では、訪問販売拒否を示すステッカー表示がある家に対して、訪問販売の勧誘を禁止する画期的な規制導入を検討していた。
 関連業界は猛反発し、その急先鋒が新聞業界だった。まともな反対理由を示せず、徐々に追い込まれていった。
 一発逆転を狙って血迷ったのか、読売新聞が驚くべき暴挙に出た。調査会に出た山口寿一・東京本社社長が、自分の発言中に笑った委員がいたと怒って、同社から山口俊一・消費者担当大臣や川上正二・消費者委員会委員長などに謝罪要求の抗議文を送り、その抗議文の写しを菅義偉・官房長官にも送ったのだ。
 これを知った消費者庁幹部は慌てた。「俺には菅がついているぞ」と恫喝されたことを悟ったからだ。
 「お断りステッカー」の導入は、あっさりと見送られた。
 そして、「見せしめ」とばかりに、今回の報復人事が行われたのだ。

 (3)(1)の参事官は、経産省からの出向者だ。
 霞が関は、不文律として、他省庁出向の場合は任期2年という暗黙のルールがある。彼の場合、着任から1年で異動だから極めて異例だ。しかも、経産省の異動は7月末から8月初めにやっている。タイミングも変だ。誰がどう見ても「おかしい」、つまり、「あれは左遷だ」と分かる。

 (4)むろん、マスコミの突っ込みには回答が用意されている。
 異動先は、出先機関の関東経済産業局地域経済部長。参事官は課長職だから、見かけ上、出世したように見える。
 ただし、経産省では課長待遇の冷遇ポストだ。
 さいたま市のオフィスは、霞が関の官庁オフィスとは違い、訪れる人はほとんどない。シーンと静まりかえって、時計が止まっているようなところだ。
 消費者のために大新聞と命懸けで闘い、菅長官のお友だちの読売新聞に睨まれ、最後は幹部にはしごを外された参事官。そして、この左遷劇。
 昨今、ここまで闘う官僚は珍しい。国民は応援したくなるはずだ。リベンジする機会はあるはずだ。

 【注】「【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~

□古賀茂明「読売新聞と闘った官僚 ~官々愕々第169回~」(「週刊現代」2015年9月19日号)
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 【参考】
【古賀茂明】安倍首相の「積極的軍事主義」が根付くとき
【古賀茂明】電力自由化は進んでいない
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【古賀茂明】安保法案の裏で利権拡大 ~原子力ムラ~
【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る

2015年09月11日 | ●片山善博
 (1)8月11日、九州電力は川内原子力発電所第1号機の原子炉を起動し、再稼働させた。
 福島の過酷事故の始末がまだついていないし、事故原因すら究明されていないのに。
 原発に頼らずとも電力は足りている、自然エネルギー開発に力を入れるべき、火山災害のリスクが考慮されていない、避難計画が不十分、etc.さまざまな批判や強い反対意見がある中で、九電は再稼働させた。

 (2)政府は、九電など電力各社の再稼働方針に呼応し、orそれを促すかのようにぴったり寄り添っている。安倍晋三・首相も再稼働には積極的で、「世界で最も厳しい規制基準をクリアしたと原子力規制委員会が判断した原発については再稼働を認めていく」という考えを繰り返し表明している。
 福島の事故後に新しい基準が作られたのは事実だ。ただ、それが「世界で最も厳しい規制基準」であるかどうかは検証されていない。政府も、その根拠について具体的に説明していない。単に「世界で最も」などと勝手に吹聴しているだけではないか(疑念)。

 (3)田中俊一・原子力規制委員会委員長は、規制委員会による審査は
   「規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない」
と述べている。施設が基準に適合していると判断しただけであって、それが安全だとは保証できない、ということだ。すげないものの、実に率直な見解ではある。
 田中委員長のこの見解と、首相の物言いとの間に大きな懸隔があるのは明らかだ。

 (4)政府や電力会社が再稼働を正当化するもう一つの理由は、原発が立地する自治体の首長の同意だ。たしかに、鹿児島県知事も薩摩川内市長も川内原発の再稼働について同意している。
 首長の同意は必ずしも法律上の要件ではない。ただ、新潟県知事の同意を得られる見込みがないことから、柏崎刈羽原発の再稼働にとりかかれないでいる東京電力の事情を見れば明らかなように、現実問題として首長の同意がなければ電力会社は原発を再稼働させることができない。
 原発の運転に係る県知事や市町村長の同意とは、かくも大きな意味を持ち、責任の重い判断だ。

 (5)このたびの川内原発再稼働について、鹿児島県知事は「再稼働に同意する」と言わず、「やむを得ない」としているが、事実上同意したことには変わりない。
 この同意は、はたして妥当な判断に基づくものだったのか、どうか。気になる点が幾つかある。
  (a)知事は再稼働について「国が安全性を十分に保証する」ことが必要だ、との考えを述べていた。知事は、このたびの同意にあたり、「原子力規制委員会により安全性が確保されることが確認された」としているが、(3)で見たように当の田中委員長は「安全だとは言わない」と言っている。委員長のこの発言を知事が知らないはずはない。知事が「安全性が確保されることが確認された」理由と根拠については、もっと質されてしかるべきだった。

  (b)「万が一、事故が発生した場合には、国が責任をもって対処するということについて、政府の考えが明確に示された」ことも、知事が同意の判断をするに至った根拠の一つにあげている。たしかに、宮沢洋一・経済産業大臣も菅義偉・内閣官房長官もその趣旨の方針を表明していた。仮に原発事故が起こった時、国が事故への対応に全面的に責任を持ってくれて、それで県民の安全は大丈夫ということであれば、それに越したことはない。
    ただし、本当に大丈夫であるかどうか、あらかじめ十分に確認しておかなければならない。いくら国が「責任を持って対処する」と言ったとしても、それが安請け合いやその場しのぎ、or気休めだったとすれば、そんなものは屁の突っ張りにもならないからだ。知事は、国のその方針に実態が伴っているか、ちゃんと確認しているのか。
    <例>東日本大震災によりメルトダウンしていた東電福島第一原発では、放射線量が高い環境下で原子炉に水を注入しなければならなかった。当初それを自衛隊などが試みたもののうまくいかず、最終的には東京消防庁のハイパーレスキュー隊がその任務を果たした。
    ハイパーレスキュー隊は、大規模災害や特殊災害に対応するための特別な資機材を保有し、隊員たちは専門的かつ高度な訓練を受けている。もし、彼らの存在と活躍がなければ、福島の事故はもっと過酷なものとなり、被害はもっと深刻かつ広範囲に及んだはずだ。
    では、仮に川内原発で何らかの原因により同じような状況が現出した場合、事故への対応に「全面的に責任を持つ」国は、これにいったいどんな手を打つことができるのか。福島の時とは違って、自衛隊が水を注入する術を既に身に着けているのか。それならそれで安心だが、国は再稼働に併せてそのことになんら言及していない。いまだに福島の時と似たような実情にあると推察せざるを得ない。
    もし、国が川内原発でも福島と同じように東京消防庁をあてにしているとしたら、それは非現実的だ。東京から比較的近距離にある福島県でさえ、東京消防庁からの派遣は、限られた退院のやり繰りの面でも「兵站」の面でも決して容易ではなかった。これが福島県よりはるか遠方の鹿児島への派遣となると、その実現性はほぼ無い。

 (6)鹿児島県知事は、再稼働に同意するにあたって、国に対して少なくとも(5)の点は確認しているはずだが、その確認した内容を県民に公表しておかねばならない。それは再稼働に対する県民の漠然たる不安の一部を解消することにつながるはずだからだ。だが、この種のことに知事は触れていない。
 もし、国に確認したところ、自衛隊はこの面ではいまだにあてにできないし、東京消防庁をあてにすることも現実的でないということであって、これでは県民に説明できないということであれば、知事が再稼働に同意を与えたことは早計の誹りを免れない。県民の安全を第一に考えるべきなのに、それを二の次にしているからだ。

 (7)再稼働に同意するにしても、いざという時の注水の「めど」ぐらいはつけておくべきで、それが県民の安全を守る知事の責任ある態度だ。同時に、福島の事故を閲したわが国の原発立地自治体がまず学んでおくべき教訓の一つだ。よもやそんなことはないだろうが、もしこうした基礎的なことすら国に確認しないまま同意の判断をしたのだとすれば、それは論外というしかない。

 (8)国の側だけでなく、県や市町村の側の問題もある。
 福島の原発事故では、住民の避難が難渋を極めた。市町村の避難計画が十分に整備されていなかったことがその一因だ。
 では、川内原発の場合の避難計画はどうか。再稼働に同意する際の知事の記者会見録を見る限り、知事は避難計画をあまり重要視していない(印象)。いざとなったら、柔軟かつ臨機応変に対応できるとの自負も垣間見える。
 しかし、大震災が原因で原発事故が発生した時には、県庁や自治体庁舎も被災したり、一時的に機能麻痺に陥ったりしかねない。現に、東日本大震災では、福島県では役場自体が避難を余儀なくされたし、県庁舎も被災して知事以下職員が近くの建物に移らざるを得なかった。そんな大混乱の中にあっても臨機応変に整然とした対応ができると考えているとしたら、想像力が少々不足している。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「川内原発再稼働への知事の「同意」を診る ~日本を診る第71回~」(「世界」2015年10月号)
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【詩歌】中原中也「雪の宵」

2015年09月10日 | 詩歌
       青いソフトに降る雪は
       過ぎしその手か囁(ささや)きか  白秋

 ホテルの屋根に降る雪は
 過ぎしその手か、囁きか
  
   ふかふか煙突煙(けむ)吐いて、
   赤い火の粉も刎(は)ね上る。

 今夜み空はまつ暗で、
 暗い空から降る雪は・・・・

   ほんに別れたあのをんな、
   いまごろどうしてゐるのやら。

 ほんにわかれたあのをんな、
 いまに帰つてくるのやら

   徐(しづ)かに私は酒のんで
   悔と悔とに身もそぞろ。

 しづかにしづかに酒のんで
 いとしおもひにそそらるる・・・・

   ホテルの屋根に降る雪は
   過ぎしその手か、囁きか

 ふかふか煙突煙吐いて
 赤い火の粉も刎ね上る。

□中原中也「雪の宵」(『山羊の歌』(文圃堂、1934)所収)
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 【参考】
【詩歌】中原中也「言葉なき歌」
【詩歌】中原中也「北の海」
【詩歌】中原中也「春日狂想」
【詩歌】中原中也「幸福」
【詩歌】中原中也「朝鮮女」
【詩歌】中原中也「朝の歌」
【詩歌】中原中也「曇天」
【詩歌】中原中也「つみびとの歌 ~阿部六郎に~」
【詩歌】中原中也「夕照」
【詩歌】中原中也「骨」
【詩歌】中原中也「月夜の浜辺」
【詩歌】中原中也「一つのメルヘン」
【詩歌】中原中也「湖上」
【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
【詩歌】中原中也「サーカス」
【詩歌】丸ビル風景 ~正午~


【食】食品表示法の施行で添加物が明確に

2015年09月10日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)食品表示法が4月に施行された。わかりやすい食品表示を目的として。
 何かが特別に改善されたわけではない。今までとほとんど変化はない、と感じる消費者が多数だろう。
 ただ一点、少し分かりやすく変わった。すなわち、「加工食品の原材料と添加物の明確化」だ。
 従来の原材料表示は、添加物以外の原材料に続いて、何の区分けをすることもなく、原材料と同じように添加物を続けて表示してもよかった。これが、食品表示法では、①添加物以外の原材料と②添加物とを明確に区分することになった。

 (2)原材料と添加物の表示例。
  (a)大原則・・・・原材料と添加物をそれぞれ別欄に表示し、欄ごとに「原材料名」「添加物」の項目名を記す。
  (b)(a)のほかに次の表示をすることも「できる」。
    ①原材料と添加物をそれぞれ別欄に表示し、項目は両者共通に「原材料」と記す。
    ②原材料と添加物を同一欄に表示するが、改行して区別し、項目は両者共通に「原材料」と記す。
    ③原材料と添加物を同一欄に表示し、両者の区別は「/」で記し、項目は両者共通に「原材料」と記す。<例>砂糖/ゲル化剤(ペクチン)

 (3)(2)の(a)と(b)を比べると、区別している意味あいが、
    (a)>(b)-①>(b)-②>(b)-③
の順に薄れているのがわかる。
 どうしても事業者の負担を減らしたいから「できる規定」を作る。本来、「できる規定」はイレギュラーなのに、それがいつの間にか標準になっていくのが常だ。
 (b)-①は、欄を設けているのだから項目名を「原材料名」「添加物」とすればよいのに、少しでも添加物と消費者に悟られないために「添加物」という言葉を省略する。
 (b)-②の改行も、改行の意味が分かりづらい。
 (b)-③の「/」も、とても明確とはいえない表示法だ。

 (4)それでも、少しは進歩したと言える。
 今までの表示は、どこまでが添加物以外の原材料で、どこから添加物なのか、よくわからなかった。
 しかし、これからは、(a)はさて措き、(b)の3つの表示例を示せばいい。
 おそらく事業者の多くは(b)-③の「/」を使ってくるだろう。文字数が少なくて済むし、何よりも添加物が何かが一番わかりにくい表示例だからだ。

 (5)わかりにくいからといっても、「/」が何を意味するのか、消費者にだんだんと浸透していくだろう。そうなれば、添加物が多い食品なのか、少ない食品なのかが、一般の消費者にも一目でわかるようになる。
 添加物が多い食品より少ない食品のほうがいいにきまっている。できるだけ添加物の少ない商品を選ぶ消費者が増えるだろう。
 まだまだ消費者より事業者の利益を優先する消費者庁だが、この変更に関しては、消費者のための食品表示であることを少しは理解し、実践したのだ、と受け止めてあげたい。
 食品表示法は、非常に理解しづらい文面だ。わかりやすい食品表示にするためには、「わかりやすい法律を作る」ことが最低条件だ。改善の余地はまだまだあるのだ。

□垣田達哉「食品表示法の施行で添加物が明確に でもイレギュラー表示はナシよ」(「週刊金曜日」2015年9月4日号)
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【詩歌】中原中也「言葉なき歌」

2015年09月09日 | 詩歌
 あれはとほいい処にあるのだけれど
 おれは此処(ここ)で待つてゐなくてはならない
 此処は空気もかすかで蒼(あを)く
 葱(ねぎ)の根のやうに仄(ほの)かに淡(あは)い

 決して急いではならない
 此処で十分待つてゐなければならない
 処女(むすめ)の眼(め)のやうに遥かを見遣(みや)つてはならない
 たしかに此処で待つてゐればよい

 それにしてもあれはとほいい彼方(かなた)で夕陽にけぶつてゐた
 号笛(フイトル)の音(ね)のやうに太くて繊弱だつた
 けれどもその方へ駆け出してはならない
 たしかに此処で待つてゐなければならない

 さうすればそのうち喘(あへ)ぎも平静に復し
 たしかにあすこまでゆけるに違ひない
 しかしあれは煙突の煙のやうに
 とほくとほく いつまでも茜(あかね)の空にたなびいてゐた

□中原中也「言葉なき歌」(『在りし日の歌』(創元社、1938)所収)
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 【参考】
【詩歌】中原中也「北の海」
【詩歌】中原中也「春日狂想」
【詩歌】中原中也「幸福」
【詩歌】中原中也「朝鮮女」
【詩歌】中原中也「朝の歌」
【詩歌】中原中也「曇天」
【詩歌】中原中也「つみびとの歌 ~阿部六郎に~」
【詩歌】中原中也「夕照」
【詩歌】中原中也「骨」
【詩歌】中原中也「月夜の浜辺」
【詩歌】中原中也「一つのメルヘン」
【詩歌】中原中也「湖上」
【詩歌】中原中也「汚れつちまつた悲しみに・・・・」
【詩歌】中原中也「サーカス」
【詩歌】丸ビル風景 ~正午~

【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本

2015年09月09日 | ●佐藤優
 (1)9月3日、北京(中国)で行われた「中国人民好日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念軍事パレード」に潘基文・国連事務総長が出席した。
 <外務省幹部は、学生らの民主化運動を軍が弾圧した1989年の天安門事件を念頭に、「虐殺があった場所で軍がパレードするところに居合わせることになる」と指摘。「(出席した場合)国連が掲げる自由、人権、民主的という要素を体現しているのか」と不快感を示した。>【注1】

 (2)日本政府の懸念表明に対する潘事務総長の返答について、「人民網」(中国共産党系)はこう伝えた。
 <潘事務総長は北京での軍事パレードへの出席は自らの仕事だと表明した。現在全世界が第2次大戦という人類史上最大の悲劇の終結70周年を記念し、国連創設70周年も記念している。国連創設は世界平和を永遠に保つためだ。軍事パレードを含む記念行事への出席は、歴史の教訓を汲み取り、明るい未来を創造する助けとなる。したがって、これは国連事務総長として当然のことだ。>【注2】
 「人民網」は、潘事務総長の短い返答について、次のような解説を加えた。
 <第1に、人類はどのような「歴史の教訓」を汲み取るべきか。第2次大戦時、日独は世界的範囲で大規模な侵略を行い、人類にかつてない惨禍をもたらすとともに、国際社会をかつてないほど団結させた。国際社会は協力してファシズムの世界的拡張を粉砕し、抑圧された民族の正当な権利を守った。第2次大戦は日本の対中侵略で始まり、中国軍民は日本の侵略に長期間断固として抵抗し、反撃を加え、日本軍に大きな打撃を与えた。周知の通り、中国は抗日戦争期間に重大な犠牲を払い、アジア太平洋地域全体の日本軍国主義への反対に卓越した貢献を果たし、そのために国連の5つの常任理事国の1つとなった。人類の安全に対する中国のリーダーシップはしっかりと確立された。
 (中略)次に、潘事務総長が中国側の招待を受け入れ、抗日戦争勝利70周年軍事パレードに出席するのは「当然のこと」だ。潘事務総長は日本側の非難に反論したうえ、第2次大戦での中国の貢献と犠牲が世界の人々に認められ、感謝されていることを肯定した。潘事務総長の訪中は国連に対する中国の多くの貢献に感謝するためだ。>【注3】

 (3)史実に照らした場合、連合国の一員として日本と戦ったのは中華民国だった。中華人民共和国は、中華民国との連続性を認めていない。それにも拘わらず、対日戦争で、当時存在していなかった中華人民共和国も連合国の一員である、という神話を作ろうとしている。
 ちなみに、英語では連合国も国連も United Nation だ。
 潘事務総長の軍事パレードへの出席は、国連が中国の神話形成を追認した、という意味を持つ。日本政府が米国やEUに対する働きかけをきちんと行っていたならば、潘事務総長の軍事パレードへの出席は阻止できていたはずだ。
 また日本外交が敗北した。

 【注1】記事「国連総長出席へ、日本は懸念伝達 中国抗日戦勝70年行事(朝日新聞デジタル 2015年8月29日)
 【注2】記事「潘基文事務総長の返答 安倍首相、分かったか?」(人民網日本語版 2015年09月01日)
前掲記事。
 【注3】前掲記事。

□佐藤優「中国政府の「神話」に敗れた日本 ~佐藤優の人間観察 第127回~」(「週刊現代」2015年9月19日号)
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 【参考】
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
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【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
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【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
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