カルテ番号 み・5（18）
彼女は遠くを見つめて言った。
「１０年間続けて気付くことがあるの。
もしも、あの時、太極拳教室に行ったなら、すぐ諦めたでしょうね。
多少続けたとしても、回復は難しかったでしょうね。
あの先生の言う通りだった。
あの先生に出会ってよかった・・・
って、まだ出会ってないのよねぇ、私、ふふふ」
彼女の太極拳はとても綺麗だった。
とても、のびのびとして、見ていて気持ちよかった。
その話を聞いていて、裕子の探しているものが見つかった気がする。
それは太極拳というわけではない。
探しているモノというか、方向というか・・・
ぜひ、彼女がメールした先生に会ってみたい。
そして、話してみたい。
「その先生の連絡先って、教えていただけますか？」
「あらあら、興味がありますの？
私も、今日、貴女にお話しして、一つの段階を卒業できたみたい。
だから、私も１０年前からの約束通り、会いに行くつもりよ。
私より、先に本物に会うなんて、少し嫉妬しちゃうわ、というのは嘘。
まだ、やっているのかどうか知らないけれど、教えますよ」
そう言って、彼女は携帯からアドレスを教えてくれた。
ネットで調べれば、ホームページがあるという。
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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