長文なので2月11日の記事をふたつに分けることにしました。
4.成熟社会における長期的展望と国際的視点から
20世紀は、あらゆる都市が競いあうように空港、高層ビル、道路、鉄道建設を建設し、市街地を広げ、利便性を追求してきました。人口増に対応する高度成長期時代の政策を今現在の視点で批判するものではありませんが、今後も同様の手法をとれば都市は必ず疲弊します。
JR島本駅西地区を鉄道駅の周辺であるという理由で開発するならば、島本町の面積規模と人口規模からすればそれは都市の集約ではなく、市街地の拡充に他なりません。インフラ整備と維持管理にかかる費用負担増が懸念されます。現状でも改札口前の町道ならびにエレベーター、トイレなどの維持管理に年間約900万円を費やしています。人口減少時代には重い負担です。
なにより21世紀は都市の美しさが問われる時代です。景観、眺望、水、大気、土、食、農の環境、さらには教育・文化・歴史・芸術・スポーツ環境などが重視され、個の成熟を支えることが求められます。先進国が都市公園や市民農園で都市に憩いの空間を創造しているように、当該地の田園風景はその役割を期待以上に担うと確信します。
すなわちJR島本駅西側の農地、農空間は「公共の福祉」に供する存在であり、今以上の利便性を高めるための開発を必要とするものではありません。駅ができて8年近く経ち、東側駅前広場から阪急水無瀬駅までの楠公道路に穏やかな賑わいが定着しています。
観光的な賑わい、訪日外国人旅行(インバウンド)の視点ではサントリー山崎蒸溜所のあるJR山崎駅(駅舎は京都府大山崎町、ホームの一部が島本町)のポテンシャルが圧倒的に高く、住民の生活圏という意味では阪急水無瀬駅周辺の商業圏の維持、活性化こそが喫緊の課題です。
JR島本駅周辺は、昭和初期の歴史を目撃してきた場としての文脈を大切にして、西側の農地、農空間を保全するのが島本町にとって最も望ましい選択と確信します。
5.地区計画における建築物の高さ制限と景観形成
地区計画案における文教・医療複合エリアの高さの最高制限を当初の25mから30mに検討したという経緯があり、そこには当該地への進出を希望される医療法人の建築計画が反映されています。このように事業者側の事情によって地区計画が変更されるとしたら、島本町の景観はどのように守っていけばよいのでしょうか。
そもそも町には景観条例も景観計画もなく、島本町にとって景観とはなにかという定義はいまなお定められていません。将来にどのような景観を残し、創造していくかという共通認識がないまま、事業が進められているのは極めて問題であると考えます。
近年、後鳥羽上皇の水無瀬離宮と庭園に関する遺跡が相次ぎ発見されていますが、桜井の農地はその庭園都市の一部に位置付けることができる可能性があります。借景としてではなく、たとえば修学院離宮のなかに田園があるように、周囲の地形を生かした壮大な庭園都市の一部としての田園であったという考え方です。
日本史上に非常に重要な意味があるかもしれない田園風景として、周辺の遺跡発掘調査を経た学術的な判断を待ってみたいと考えています。以上のようなことから、仮に開発するとしても、それは待ち合わせができる程度の最小限の駅前広場と駅に隣接する医療エリアのみに留めおき、里山里地の景観を守り抜くべきです。
さもないと、島本町は水と緑に恵まれた自然豊かな町としての誇りと優位性を失ってしまいます。
6.農と農地のもつ多面的機能を重視します
農産物を生産する機能はもちろん、農地は洪水・土砂災害を防止しています。当該地は深刻な内水被害が想定される青葉地区の水害を抑制する役割を果たしているはずです。農地は虫、鳥など多様な生き物を活かし豊かな自然環境を育み、空間を形成し、景観と眺望、風の道をつくっています。ホームで電車を待つ時間を憩いに変えてくれます。
どんと焼き、レンゲ畑、鯉のぼり、コスモス畑など地域の賑わいや伝統文化の保全に、地権者の善意と地域住民の力を結集しています。また、人が農に関わることで様々な学びが得られ、特に子どもたちが田んぼで田植えや稲刈り体験をした場合、食に関する意識の変化がみられます。
農地の多機能性をみつめる農(小規模多品種有機栽培)に魅せられ、親子で農を体験したいと思う人が増えています。その多くは一過性のものであっても、そのなかから就農をめざす若者が必ず生まれてくるでしょう。その繰り返しを行う場としての農地、農業を守っていくのが本来、島本町の役割ではないでしょうか。
後継者不足を理由に優良農地を諦めていては、日本の農と食は滅びてしまいます。保留区域設定は農と農地の多面的機能をすべて失う市街化に向かうものであり、賛成することはできません。
以上のような観点から、保留区域設定の撤廃、もしくは必要最小限の開発に留めおくための区域設定の見直しを求める意見書を、昨秋大阪府に提出しました。
合計15件の意見書が出され、すべて保留区域設定に反対するものでした。明日、大阪府都市計画審議会を傍聴し、どういった審議がされるのか、公聴会の公述や意見書がどのように扱われるかを傍聴しに行く予定です。
4.成熟社会における長期的展望と国際的視点から
20世紀は、あらゆる都市が競いあうように空港、高層ビル、道路、鉄道建設を建設し、市街地を広げ、利便性を追求してきました。人口増に対応する高度成長期時代の政策を今現在の視点で批判するものではありませんが、今後も同様の手法をとれば都市は必ず疲弊します。
JR島本駅西地区を鉄道駅の周辺であるという理由で開発するならば、島本町の面積規模と人口規模からすればそれは都市の集約ではなく、市街地の拡充に他なりません。インフラ整備と維持管理にかかる費用負担増が懸念されます。現状でも改札口前の町道ならびにエレベーター、トイレなどの維持管理に年間約900万円を費やしています。人口減少時代には重い負担です。
なにより21世紀は都市の美しさが問われる時代です。景観、眺望、水、大気、土、食、農の環境、さらには教育・文化・歴史・芸術・スポーツ環境などが重視され、個の成熟を支えることが求められます。先進国が都市公園や市民農園で都市に憩いの空間を創造しているように、当該地の田園風景はその役割を期待以上に担うと確信します。
すなわちJR島本駅西側の農地、農空間は「公共の福祉」に供する存在であり、今以上の利便性を高めるための開発を必要とするものではありません。駅ができて8年近く経ち、東側駅前広場から阪急水無瀬駅までの楠公道路に穏やかな賑わいが定着しています。
観光的な賑わい、訪日外国人旅行(インバウンド)の視点ではサントリー山崎蒸溜所のあるJR山崎駅(駅舎は京都府大山崎町、ホームの一部が島本町)のポテンシャルが圧倒的に高く、住民の生活圏という意味では阪急水無瀬駅周辺の商業圏の維持、活性化こそが喫緊の課題です。
JR島本駅周辺は、昭和初期の歴史を目撃してきた場としての文脈を大切にして、西側の農地、農空間を保全するのが島本町にとって最も望ましい選択と確信します。
5.地区計画における建築物の高さ制限と景観形成
地区計画案における文教・医療複合エリアの高さの最高制限を当初の25mから30mに検討したという経緯があり、そこには当該地への進出を希望される医療法人の建築計画が反映されています。このように事業者側の事情によって地区計画が変更されるとしたら、島本町の景観はどのように守っていけばよいのでしょうか。
そもそも町には景観条例も景観計画もなく、島本町にとって景観とはなにかという定義はいまなお定められていません。将来にどのような景観を残し、創造していくかという共通認識がないまま、事業が進められているのは極めて問題であると考えます。
近年、後鳥羽上皇の水無瀬離宮と庭園に関する遺跡が相次ぎ発見されていますが、桜井の農地はその庭園都市の一部に位置付けることができる可能性があります。借景としてではなく、たとえば修学院離宮のなかに田園があるように、周囲の地形を生かした壮大な庭園都市の一部としての田園であったという考え方です。
日本史上に非常に重要な意味があるかもしれない田園風景として、周辺の遺跡発掘調査を経た学術的な判断を待ってみたいと考えています。以上のようなことから、仮に開発するとしても、それは待ち合わせができる程度の最小限の駅前広場と駅に隣接する医療エリアのみに留めおき、里山里地の景観を守り抜くべきです。
さもないと、島本町は水と緑に恵まれた自然豊かな町としての誇りと優位性を失ってしまいます。
6.農と農地のもつ多面的機能を重視します
農産物を生産する機能はもちろん、農地は洪水・土砂災害を防止しています。当該地は深刻な内水被害が想定される青葉地区の水害を抑制する役割を果たしているはずです。農地は虫、鳥など多様な生き物を活かし豊かな自然環境を育み、空間を形成し、景観と眺望、風の道をつくっています。ホームで電車を待つ時間を憩いに変えてくれます。
どんと焼き、レンゲ畑、鯉のぼり、コスモス畑など地域の賑わいや伝統文化の保全に、地権者の善意と地域住民の力を結集しています。また、人が農に関わることで様々な学びが得られ、特に子どもたちが田んぼで田植えや稲刈り体験をした場合、食に関する意識の変化がみられます。
農地の多機能性をみつめる農(小規模多品種有機栽培)に魅せられ、親子で農を体験したいと思う人が増えています。その多くは一過性のものであっても、そのなかから就農をめざす若者が必ず生まれてくるでしょう。その繰り返しを行う場としての農地、農業を守っていくのが本来、島本町の役割ではないでしょうか。
後継者不足を理由に優良農地を諦めていては、日本の農と食は滅びてしまいます。保留区域設定は農と農地の多面的機能をすべて失う市街化に向かうものであり、賛成することはできません。
以上のような観点から、保留区域設定の撤廃、もしくは必要最小限の開発に留めおくための区域設定の見直しを求める意見書を、昨秋大阪府に提出しました。
合計15件の意見書が出され、すべて保留区域設定に反対するものでした。明日、大阪府都市計画審議会を傍聴し、どういった審議がされるのか、公聴会の公述や意見書がどのように扱われるかを傍聴しに行く予定です。