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マリナーズはイチローが入団した2001年以来プレーオフに進出していない。というかそれ以来、優勝争いに参加していない。報道も勝てないマリナーズより、ヒットを打ち続けるイチローの話題ばかりだった。愛着のあるマリナーズではあったが、常にFA近くになると移籍の噂は絶えなかった。
メジャー球団のチーム強化策は、高給取りのベテランを移籍させ、有望な若手を揃えその数年後に常勝チームを作るのが常。2001年のマリナーズもそうだった。1998年のランディ・ジョンソン、2000年のケン・グリフィーJrしかり。ここ近年はイチローもその強化策との狭間にいたはすだ。
そのチーム強化策と11年半の愛着のある球団で心が揺れていたに違いない。このままでいいのか、マリナーズにとっても、自分にとっても…。アスリートにとって勝利は何物にも代えがたい。ここ数年、マリナーズは最下位争いばかり。天才は勝ちに飢えていたことも間違いのない事実だろう。自分のステップアップ(彼は刺激と表現した)のために球団を出れば、全てがうまく回るのではないか…。そう考えても無理はない。
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彼は想定外のことを嫌うと聞いた。その彼が愛してやまないマリナーズの再建のために、自分から環境を変えるという「想定外」を選んだのだ。ヤンキースはこの天才を、プレーオフまでの期間限定戦力として獲得したという噂もある。真意は分からないが、彼のこの3カ月の仕事ぶりで来季の契約が決まってくる訳だ。
今年の10月で39歳になる孤高の天才。刺激を求めたNYのユニフォーム姿が、違和感なく受け入れられたのは私だけではないと思う。ビジター用のユニフォームだったこともあるが…。ホーム用のピンストライプ姿がマッチして来たとき、環境を変え刺激を求めたことへの答えが出るのではないだろうか。来季の契約書のサインとともに…。