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先のブルガリア戦では、本田、岡崎が合流しておらず、攻撃に精彩を欠き0-2と破れていただけに不安は募っていた。この日は2人共に先発したとはいえ、合流したのはほんの2日前。しかし、そこで決める辺り並大抵ではない。
攻撃にタメをつくり、サイドの選手が上がってDFの裏を突くのがこのチームの方針。本田が入ることで、その方針が明確になる。裏を返せば、本田がいないと機能しない。それは先のブルガリア戦でも顕著だった。本来はFWがやるべき仕事を本田がやっている。FWにもう一人、存在感があり、ボールキープができる選手がいれば、攻撃の起点が2ヶ所になって多彩な攻めができると感じる。
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本田と共に遠藤の存在も欠かせない。レベルが高くなればなるほど、ボランチの役割が重要になり、サッカーを熟知していないと務まらないポジション。歴代最高の代表キャップを務める遠藤。代表の控えには細貝、高橋がいるが、遠藤を脅かす存在にはなってはいない。W杯でベスト8、ベスト4、優勝を狙うためには控え組のレベルアップが課題となろう。
この試合、ザックは後半34分にFW前田に代わってDF栗原を投入した。多分ザックの考えは、吉田と栗原の長身2人のセンターバックで、オーストラリアの高さを駆使したパワープレーを啄ばもうをしたのだろう。その為、今野を左サイドバックに、長友を1列前に上げた。
ピッチで戦っている選手は、攻撃でいい形を作っていた。どんどん攻めて勝ちをもぎ取ろうという意識がヒシヒシ伝わっていたが、ザックは引き分け狙いの逃げ切りを考えたのだろうか。それとも万が一に備えての栗原投入だったのかは彼にしか分からない。
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結果、栗原投入が裏目に出た。練習でも試していなかった布陣になったことで、ポジショニングがあいまいになり、右サイドバックの内田は3バックと勘違いしポジションを上げて、背後のスペースをMFトミー・オアーに突かれた。オアーのセンタリングは精度を欠いたが、それが功を奏し川島の手をかすめゴールに吸い込まれた。ザックのコンピュータが狂った…。
そんな状況を一蹴したのがPKをもぎ取り、自ら決めた本田圭佑。とにもかくにも、本田に救われた一戦だった。日本国民が、日本代表が、ザックが。