漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「呆ホウ」<産衣で包んだ赤子>と「保ホ」「堡ホ」「褒ホウ」「褓ホウ」「葆ホウ」

2024年09月06日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 ホウ・ボウ・タイ・おろか・あきれる  口部 dāi

解字 呆は本来、保の省略字であるが、[字通]によると、元代(1271~1368)に俗語として保から分離して使われたのが始まりという。字形の変遷を保から抜き出すと上記のようになる。金文は子の下方に、ノ(斜線)が引かれているが、この斜線はオムツとされる。篆文は子の両側にハが描かれ、子をおむつや産衣で包んだ形である。本来は生まれた赤子を大事に包んで保護するかたち。しかし元代の俗語では、生まれた子は何も分からないため転じて、おろかの意となった。現代字は「口+木」の形に変化した。
意味 (1)おろか(呆か)。ぼんやりした。「痴呆チホウ」「阿呆アホウ」(おろかである。おろかな人) (2)あきれる(呆れる)。あっけにとられる。「呆気あっけ」「呆然ボウゼン」(①ぼんやりしたさま。②あっけにとられるさま)

イメージ 
 「産衣で包んだ赤子」
(呆・保・褓)
  保の意である「まもる」(堡)
 「形声字」(褒)
音の変化  ホウ:呆・褓・褒・葆  ホ:保・堡

産衣で包んだ赤子
 ホ・たもつ  イ部 bǎo

解字 甲骨文第1字は人が手を後ろにまわし赤子を背負っている形。第2字は「イ(人)+子」の形。金文は甲骨文第2字の子にノ(おむつ)をつけた形。篆文で子の左右にハ(おむつ)がつき、現代字で「イ(ひと)+呆」の保となった。意味は、人が子供を背負う形から、たもつ。子供を背負ったり抱いて保護するので、まもる意となる。
意味 (1)たもつ(保つ)。もつ。「保有ホユウ」「保持ホジ」「保健ホケン」(健康を保つ) (2)まもる。やすんじる。「保護ホゴ」「保安ホアン」「保険ホケン」(危険を集団でまもる制度)(3)責任を持つ。「保証ホショウ
 ホウ・ホ  衤部ころも bǎo
解字 「衤(衣)+保(=呆。産衣で包んだ赤子)」 の会意形声。保は、ここで呆(産衣で包んだ赤子)の意。これに衤(衣)をつけた褓は、赤子のうぶぎや、おむつを表す。
意味 むつき(褓)。うぶぎ。おむつ。「襁褓むつき・キョウホウ」とも書く。襁も、むつきの意。「御襁褓おむつ」(①おむつ。おしめ。 ②うぶぎ)
※「むつき」とは、むつ(睦・なれしたしむ)+き(着る)で、赤子に親しく着せるものの意。うぶぎやおむつを言う。
 ホ・ホウ・しげる  艸部 bǎo
解字 「艸(くさ)+保(たもつ)」の会意形声。草が生えるにまかせている状態をいう。[説文解字]は「草盛(さかり)の貌ボウ(すがた)」とする。
意味 (1)しげる(葆る)。草木がむらがり生える。「葆葆ホウホウ」「蓬葆ホウホウ」(頭髪が乱れているさま)(2)たもつ。守る。(=保)「葆護ホゴ」)(=保護) (3)宝ホウに通じ、たから。宝とする。「葆祠ホウシ」(宝としてまつる)(4)はねかざり。車の上や旗ざおの先につける羽飾り。「葆車ホウシャ」(五彩の羽毛を編み込んだ蓋いのある車)(5)姓のひとつ。

まもる
 ホ・ホウ とりで  土部 pù・bǎo・bǔ
解字 「土(つち)+保(まもる)」の会意形声。土塁でかこんだ、まもりのとりで。
意味 とりで(堡)。土や石で築いた小さな城。「堡砦ホサイ・ホウサイ」(とりで。堡も砦も、とりでの意)「橋頭堡キョウトウホ」(橋を守るため、その前方に設ける陣地。拠点。足場)「堡礁ホショウ」(堡の土塁のように島のまわりを取り囲むサンゴ礁。島と礁との間に浅い潟がある)

形声字
 ホウ・ほめる  衣部 bāo
解字 「衣(ころも)+保(ホウ)」の形声。ホウは包ホウ(つつむ)に通じ、外側からゆったりと包むような裾のひろい衣を褒衣と言った。この褒衣をほうびとして賜(たまわ)ることがあり、ほめる(褒める)意が出た。
意味 (1)体を包む大きな打ち掛け。ひろい。「褒衣ホウイ」(①ゆったりした衣。②褒美として賜った衣)「褒袖ホウシュウ」(広い袖)(2)ほめる(褒める)。「褒美ホウビ」(褒めて与えるもの)「褒賞ホウショウ」(ほめてたたえる)「褒章ホウショウ」(褒めてあたえる記章<記念のしるし>。紺綬褒章コンジュホウショウなど)「褒貶ホウヘン」(ほめることと、けなすこと)「毀誉褒貶キヨホウヘン」(褒めたり、けなしたりすること) 
<紫色は常用漢字>

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