漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「虒シ」<虎の皮をはぎとる>と「褫チ」「篪チ」「逓テイ」

2024年09月23日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 シ・チ  虎部 sī

解字 篆文は「𠂆の形+虎」の会意。[説文解字]は「委虒イシ。 虎の角あるものなり」とするが実態が明らかでなく、白川静氏は[字通]で「字形は虎皮を剥取(はぎとり)する形であるから、褫(はぎとる)の初文であろう」としている。私もこの説に賛成である。現在の字形は虒となり、発音はシ・チの二音がある。
意味 (1)「委虒イシ」(伝説上の動物の名。虎に似ており、角を持つ)。(2)「虒祁シキ」とは、宮殿の名。春秋時代、晋の平公が築いたとされる。なお、虒シ・チは褫・逓テイの二字で皮を「はぎとる」イメージがある。(3)ちのふえ。篪の俗字。

イメージ 
 「虎に似た動物の名」(虒)
 虎の皮を「はぎとる」(褫・逓)
 「形声字」(篪)

音の変化  シ:虒  チ:褫・篪  テイ:逓

はぎとる
 チ・うばう  衣部 chǐ
解字 「衣(ころも)+虒(はぎとる)」の会意形声。衣をはぎとること。
意味 うばう(褫う)。はぐ。衣服をぬがせ奪い取る。官職をはぎとる。「褫奪チダツ」(衣服・官職・権利などを奪い取る)「褫気チキ」(気をうばわれる。たまげる)

はぎとった虎の皮
[遞] テイ  辶部 dì
解字 旧字のは「辶(ゆく)+虒(はぎとった虎の皮)」 の会意形声。はいだ虎の皮をもってゆくこと。虎の皮を持って交易する意で、物が順次伝わってゆく意味となる。新字体は、旧字の虎の部分が「二+巾」に変わった逓になった。
意味 (1)次々と伝え送る。「逓信テイシン」(郵便や電信などで順次取り次いで伝える)「逓送テイソウ」(荷物や郵便を順次、駅から駅へと送ること)「駅逓エキテイ」(宿駅から宿駅へと荷物などを送ること。うまつなぎ。)「逓信省テイシンショウ」(もと内閣の各省の一つ。1949年に郵政省と電気通産省に別れて廃止された)(2)しだいに。だんだん。「逓減テイゲン」「逓増テイゾウ
覚え方 野()から野()へふたつ()のきん()を伝えゆく() 信省

形声字
 チ  竹部 chí

周の篪(「百度百科」より)
解字 「竹(=籥ヤクの略体。竹笛)+虒(チ)」 の形声。チという名の竹笛。籥ヤクは、穴が三つまたは六つある短い笛なのに対し、篪は長い横笛で低音部を担当する。
意味 ちのふえ(篪)。横笛の一種。八つまたは七つの穴で、分類百科辞典の[爾雅ジガ]に、長さは一尺四寸、小は一尺二寸とある。「吹篪スイチ」(ちのふえを吹く)「鳴篪メイチ」「壎篪ケンチ」(ケンは土を焼いて作った紡錘形の笛。と音色がよく調和するところから、兄弟の仲が良いことのたとえ)「篪竹チチク」(竹の名)

<紫色は常用漢字>  

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