夗 エン 夕部
解字 金文・篆文は「タ(=月にく。からだ)+卩(ひざまずく人)」 の会意。人がひざまずいて身体をまげている形。まがる意を表す。現代字は卩の下部が湾曲して㔾となり、夗のかたちとなった。単独で使われることはない。音符に用いられると「まがる」「くぼんでまがる」イメージを持つ。
意味 ころがりふす。
イメージ
「まがる」(怨・宛・婉・腕・蜿・鴛・盌)
「形声字」(椀・碗・鋺・豌・苑)
音の変化 エン:怨・宛・婉・蜿・鴛・豌・鋺・苑 ワン:盌・腕・椀・碗
まがる
怨 エン・オン・うらむ 心部
解字 「心(こころ)+夗(まがる)」の会意形声。押し曲げられたような心の状態。抑圧されて相手をうらむ意となる。[説文解字]は、「恚ケイ(いかる・うらむ)也(なり)。心に従い夗の聲(声)」とする。
意味 うらむ(怨む)。うらみ。あだ。かたき。「怨恨エンコン」「憤怨フンエン」「怨念オンネン」「怨霊オンリョウ」(怨みを抱いてたたりをする霊魂)「怨嗟エンサ」(うらみなげく)
宛 エン・まがる・あたかも・あて・あてる 宀部
解字 「宀(建物)+夗(まがる)」の会意形声。祖先をまつる廟屋のなかで、ひざまずいて身体をまげて祈るさま。その姿がおごそかなさまから、副詞化し「あたかも・さながら」の意を生じた。なお、日本では宛先・宛名などの意味に仮借カシャ(当て字)される。
意味 (1)まげる(宛げる)。かがむ。「宛虹エンコウ」(弧をえがく虹)「宛丘エンキュウ」(中央が高くなった丘)「宛宛エンエン」(くねくねとまがる)(2)あたかも(宛も)。さながら(宛ら)。「宛然エンゼン」(あたかも) (3)[国]あて(宛て)。あてる(宛てる)。あてはめる。「宛先あてさき」「宛名あてな」
婉 エン・したがう 女部
解字 「女(おんな)+宛(身体をまげて祈る)」 の会意形声。宛は、廟屋のなかで身体をまげて祈る形。そこに女をつけた婉は、うずくまって祈る女を表し、祈る姿から、したがう・おだやか・しとやかの意となる。
意味 (1)したがう(婉う)。すなお。「婉順エンジュン」(2)おだやか。遠まわし。「婉曲エンキョク」「婉語エンゴ」(遠まわしに言う言葉)(3)うつくしい(婉しい)。しなやかで美しい。しとやか。「婉然エンゼン」「婉容エンヨウ」
腕 ワン・うで 月部にく
解字 「月(からだ)+宛(まがる)」の会意形声。上半身で曲がる部分がある肩口から手首までの部分。中国では手首のつけねをいう。
意味 (1)うで(腕)。かいな(腕)。肩から手首までのあいだ。また、肩から肘までのあいだ。「腕章ワンショウ」「上腕ジョウワン」(肩関節と肘関節のあいだ。二の腕)(2)うでまえ。はたらき。「手腕シュワン」「辣腕ラツワン」(3)手首のつけね。「腕骨ワンコツ」(手首の骨。手根骨。8個からなる)
蜿 エン 虫部
解字 「虫(へび)+宛(まがる)」の会意形声。蛇などがまがりくねるさま。
意味 (1)蛇や虫がからだをくねらせるさま。「蜿蜿エンエン」(蛇や竜がうねりながら動くさま。=「蜿蜒エンエン」)「蜿蜿長蛇エンエンチョウダ」(うねうねと長く続いているもののたとえ)(2)うねりまがる。「蜿蝉エンセン」(うねりまがるさま)
鴛 エン・おしどり 鳥部
鴛鴦(左がオス、右がメス)
解字 「鳥(とり)+夗(まがる)」の会意形声。背がくぼんでまがる鳥。
意味 「鴛鴦エンオウ・おしどり」に使われる字。鴛鴦はカモ目の水鳥。鴛エンは、後方のイチョウ葉形の羽が立つので背がくぼんで見えるオスの水鳥。鴦オウは、「央オウ+鳥」で中央が少しふくらんでみえるメス鳥。雄雌むつまじく離れないので、夫婦仲のむつまじいことに例える。「鴛鴦夫婦おしどりふうふ」
盌 ワン 皿部
解字 「皿(うつわ)+夗(まがる)」の会意形声。口が広く、くぼんでまがるように開いた皿(うつわ)を言った。のち、くぼみの深いものを含めて言う。中国で古くは盌が使われ、のち椀・碗ができた。
中国北宋時代の盌(中国のネットから)
意味 はち形のうつわ。椀・碗の原字。「茶盌チャワン」(茶道の抹茶碗に使われる)「玉盌ギョクワン」「酒盌シュワン」
形声字
椀 ワン 木部
解字 「木(き)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ木製のわんをいう。
意味 (1)わん(椀)。食物・汁などを盛る、まるく刳りぬいた木製の食器。また、木製に限らず用いられる。「膳椀ゼンワン」(お膳とお椀。また、食器類の総称)「飯椀めしわん」「汁椀ジュウワン・しるわん」(2)「椀飯オウバン」とは、オウはワンの転で、①椀に盛ってすすめる飯、②盛んな饗宴、の意)「椀飯振舞おうばんぶるまい」(江戸時代、民間で一家の主人が正月などに親戚縁者を招きご馳走をふるまったこと。転じて盛大な饗応。「大盤振舞」は当て字。「広辞苑」より)
碗 ワン 石部
解字 「石(磁器)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ磁器製のわんをいう。
意味 わん(碗)。食物・汁などを盛る、まるい形の陶磁器製の食器。「茶碗チャワン」
鋺 エン・かなまり 金部
解字 「金(金属)+宛(=椀・碗)」の会意形声。日本では椀・碗に通じ、金属製の盌(おわん)をいう。中国では夗エン(くぼんでまがる)に通じ、秤(はかり)の皿を言った。したがって発音はエン。
意味 (1)[国]かなまり(鋺)。金属製のわん。「銀(しろがね)の鋺(かなまる)を持ちて水を汲みありく」(竹取物語)(2)秤(はかり)の金属製の皿。「秤鋺ショウエン」(はかりの皿)
豌 エン 豆部
豌豆(「タネ(種)の販売広告」から)
解字 「豆(まめ)+宛(エン)」の形声。エンという名のマメ科の二年生または一年生作物。原産地は未詳。中国へ伝来する際の経由地である大宛エン国(中央アジア・ウズベキスタンのフェルガナ地方)から伝わったとされる豆。日本へは中国から渡来した。
意味 「豌豆エンドウ」に用いられる字。豌豆とは、マメ科の二年草。若いサヤと種子は食用となる。熟す前のエンドウをむき実にして食べるのをグリンピースという。エンドウマメ。「莢豌豆さやエンドウ」(若いエンドウで、莢ごと食用にする)
苑 エン・オン・その 艸部
解字 「艸(草)+夗(エン)」の形声。エンは園エン(その・庭園)に通じ、草木の生えた庭園。[説文解字]は「禽獸を養う也(なり)。艸に従い夗の聲(声)」とし、鳥や獣を飼う場所とするが、これは天子が林や池をつくり、鳥獣を飼い草花を植えて遊び楽しんだ所の意で、苑囿エンユウに、その意味が残っている。
意味 (1)その(苑)。庭園。「神苑シンエン」(神社の境内の庭園)「外苑ガイエン」(神社などの外側にある広い庭園)「苑囿エンユウ」(鳥やけものを放し飼いにしてある苑)「苑馬エンバ」(苑囿で飼われている馬)「鹿苑ロクオン」(釈迦が悟りをひらいた後、鹿が多く住む林の中ではじめて教えを説いたという所=鹿野苑ロクヤオン)(2)文人の集まる場所。また、学術や文芸の集められた所。「芸苑ゲイエン」(学芸の社会)「文苑ブンエン」(文学者の世界。文壇)「筆苑ヒツエン」(=文苑)
<紫色は常用漢字>
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解字 金文・篆文は「タ(=月にく。からだ)+卩(ひざまずく人)」 の会意。人がひざまずいて身体をまげている形。まがる意を表す。現代字は卩の下部が湾曲して㔾となり、夗のかたちとなった。単独で使われることはない。音符に用いられると「まがる」「くぼんでまがる」イメージを持つ。
意味 ころがりふす。
イメージ
「まがる」(怨・宛・婉・腕・蜿・鴛・盌)
「形声字」(椀・碗・鋺・豌・苑)
音の変化 エン:怨・宛・婉・蜿・鴛・豌・鋺・苑 ワン:盌・腕・椀・碗
まがる
怨 エン・オン・うらむ 心部
解字 「心(こころ)+夗(まがる)」の会意形声。押し曲げられたような心の状態。抑圧されて相手をうらむ意となる。[説文解字]は、「恚ケイ(いかる・うらむ)也(なり)。心に従い夗の聲(声)」とする。
意味 うらむ(怨む)。うらみ。あだ。かたき。「怨恨エンコン」「憤怨フンエン」「怨念オンネン」「怨霊オンリョウ」(怨みを抱いてたたりをする霊魂)「怨嗟エンサ」(うらみなげく)
宛 エン・まがる・あたかも・あて・あてる 宀部
解字 「宀(建物)+夗(まがる)」の会意形声。祖先をまつる廟屋のなかで、ひざまずいて身体をまげて祈るさま。その姿がおごそかなさまから、副詞化し「あたかも・さながら」の意を生じた。なお、日本では宛先・宛名などの意味に仮借カシャ(当て字)される。
意味 (1)まげる(宛げる)。かがむ。「宛虹エンコウ」(弧をえがく虹)「宛丘エンキュウ」(中央が高くなった丘)「宛宛エンエン」(くねくねとまがる)(2)あたかも(宛も)。さながら(宛ら)。「宛然エンゼン」(あたかも) (3)[国]あて(宛て)。あてる(宛てる)。あてはめる。「宛先あてさき」「宛名あてな」
婉 エン・したがう 女部
解字 「女(おんな)+宛(身体をまげて祈る)」 の会意形声。宛は、廟屋のなかで身体をまげて祈る形。そこに女をつけた婉は、うずくまって祈る女を表し、祈る姿から、したがう・おだやか・しとやかの意となる。
意味 (1)したがう(婉う)。すなお。「婉順エンジュン」(2)おだやか。遠まわし。「婉曲エンキョク」「婉語エンゴ」(遠まわしに言う言葉)(3)うつくしい(婉しい)。しなやかで美しい。しとやか。「婉然エンゼン」「婉容エンヨウ」
腕 ワン・うで 月部にく
解字 「月(からだ)+宛(まがる)」の会意形声。上半身で曲がる部分がある肩口から手首までの部分。中国では手首のつけねをいう。
意味 (1)うで(腕)。かいな(腕)。肩から手首までのあいだ。また、肩から肘までのあいだ。「腕章ワンショウ」「上腕ジョウワン」(肩関節と肘関節のあいだ。二の腕)(2)うでまえ。はたらき。「手腕シュワン」「辣腕ラツワン」(3)手首のつけね。「腕骨ワンコツ」(手首の骨。手根骨。8個からなる)
蜿 エン 虫部
解字 「虫(へび)+宛(まがる)」の会意形声。蛇などがまがりくねるさま。
意味 (1)蛇や虫がからだをくねらせるさま。「蜿蜿エンエン」(蛇や竜がうねりながら動くさま。=「蜿蜒エンエン」)「蜿蜿長蛇エンエンチョウダ」(うねうねと長く続いているもののたとえ)(2)うねりまがる。「蜿蝉エンセン」(うねりまがるさま)
鴛 エン・おしどり 鳥部
鴛鴦(左がオス、右がメス)
解字 「鳥(とり)+夗(まがる)」の会意形声。背がくぼんでまがる鳥。
意味 「鴛鴦エンオウ・おしどり」に使われる字。鴛鴦はカモ目の水鳥。鴛エンは、後方のイチョウ葉形の羽が立つので背がくぼんで見えるオスの水鳥。鴦オウは、「央オウ+鳥」で中央が少しふくらんでみえるメス鳥。雄雌むつまじく離れないので、夫婦仲のむつまじいことに例える。「鴛鴦夫婦おしどりふうふ」
盌 ワン 皿部
解字 「皿(うつわ)+夗(まがる)」の会意形声。口が広く、くぼんでまがるように開いた皿(うつわ)を言った。のち、くぼみの深いものを含めて言う。中国で古くは盌が使われ、のち椀・碗ができた。
中国北宋時代の盌(中国のネットから)
意味 はち形のうつわ。椀・碗の原字。「茶盌チャワン」(茶道の抹茶碗に使われる)「玉盌ギョクワン」「酒盌シュワン」
形声字
椀 ワン 木部
解字 「木(き)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ木製のわんをいう。
意味 (1)わん(椀)。食物・汁などを盛る、まるく刳りぬいた木製の食器。また、木製に限らず用いられる。「膳椀ゼンワン」(お膳とお椀。また、食器類の総称)「飯椀めしわん」「汁椀ジュウワン・しるわん」(2)「椀飯オウバン」とは、オウはワンの転で、①椀に盛ってすすめる飯、②盛んな饗宴、の意)「椀飯振舞おうばんぶるまい」(江戸時代、民間で一家の主人が正月などに親戚縁者を招きご馳走をふるまったこと。転じて盛大な饗応。「大盤振舞」は当て字。「広辞苑」より)
碗 ワン 石部
解字 「石(磁器)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ磁器製のわんをいう。
意味 わん(碗)。食物・汁などを盛る、まるい形の陶磁器製の食器。「茶碗チャワン」
鋺 エン・かなまり 金部
解字 「金(金属)+宛(=椀・碗)」の会意形声。日本では椀・碗に通じ、金属製の盌(おわん)をいう。中国では夗エン(くぼんでまがる)に通じ、秤(はかり)の皿を言った。したがって発音はエン。
意味 (1)[国]かなまり(鋺)。金属製のわん。「銀(しろがね)の鋺(かなまる)を持ちて水を汲みありく」(竹取物語)(2)秤(はかり)の金属製の皿。「秤鋺ショウエン」(はかりの皿)
豌 エン 豆部
豌豆(「タネ(種)の販売広告」から)
解字 「豆(まめ)+宛(エン)」の形声。エンという名のマメ科の二年生または一年生作物。原産地は未詳。中国へ伝来する際の経由地である大宛エン国(中央アジア・ウズベキスタンのフェルガナ地方)から伝わったとされる豆。日本へは中国から渡来した。
意味 「豌豆エンドウ」に用いられる字。豌豆とは、マメ科の二年草。若いサヤと種子は食用となる。熟す前のエンドウをむき実にして食べるのをグリンピースという。エンドウマメ。「莢豌豆さやエンドウ」(若いエンドウで、莢ごと食用にする)
苑 エン・オン・その 艸部
解字 「艸(草)+夗(エン)」の形声。エンは園エン(その・庭園)に通じ、草木の生えた庭園。[説文解字]は「禽獸を養う也(なり)。艸に従い夗の聲(声)」とし、鳥や獣を飼う場所とするが、これは天子が林や池をつくり、鳥獣を飼い草花を植えて遊び楽しんだ所の意で、苑囿エンユウに、その意味が残っている。
意味 (1)その(苑)。庭園。「神苑シンエン」(神社の境内の庭園)「外苑ガイエン」(神社などの外側にある広い庭園)「苑囿エンユウ」(鳥やけものを放し飼いにしてある苑)「苑馬エンバ」(苑囿で飼われている馬)「鹿苑ロクオン」(釈迦が悟りをひらいた後、鹿が多く住む林の中ではじめて教えを説いたという所=鹿野苑ロクヤオン)(2)文人の集まる場所。また、学術や文芸の集められた所。「芸苑ゲイエン」(学芸の社会)「文苑ブンエン」(文学者の世界。文壇)「筆苑ヒツエン」(=文苑)
<紫色は常用漢字>
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