漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「雋シュン」と「儁シュン」「鐫セン」

2024年09月10日 | 漢字の音符
  成り立ちの「いわれ」がおもしろい字です。
 シュン・セン・すぐれる  隹部 jùn・juàn 

解字 金文は隹(とり)が脚を出して飛翔するさま。(しかし隹が飛翔するときは脚を後ろにまっすぐ伸ばすので、脚を出すのは着地の準備をしている形である。)。篆文は隹の下が弓を下向きにした形に変化したので、[説文解字]は「肥肉也(なり)。弓に従う、所以(だから)隹を射る」と解釈して「弓で隹(鳥)を射た肥肉(肥えた肉)」とする。現代字は雋となり、俊シュンに通じ、すぐれる意味で用いられる。
意味 (1)鳥の肥肉。鳥の肉が肥えてうまいさま。「雋永センエイ」(①肥えてうまい肉。②詩文が味わい深いさま) (2)すぐれる(雋れる)。「雋朗シュンロウ」(才知にすぐれ明敏なさま)「雋乂シュンガイ」(=俊乂シュンガイ。すぐれた人。「乂」は賢い意 )(3)姓のひとつ。

イメージ
 「すぐれる」(雋・儁)
 「形声字」(鐫)
音の変化  シュン:雋・儁  セン:鐫

すぐれる
 シュン シュン・すぐれる  イ部 jùn
解字 「イ(ひと)+雋(シュン)」の形声。シュンは俊シュンに通じて、すぐれる意があり、イ(ひと)がついた儁シュンはすぐれた人の意。
意味 (1)すぐれた人。「儁傑シュンケツ」(儁も傑も、すぐれる意)「儁異シュンイ」(才知がすぐれていて普通の人と異なる人)(2)すぐれる(儁れる)。まさる。「儁逸シュンイツ」(とりわけすぐれていること。=俊逸)「儁秀シュンシュウ」(=俊秀)

形声字
 セン・のみ・ほる  金部 juān
解字 「金(金属)+雋(シュン⇒セン)」の形声。[説文解字]は「木を穿(うが)つ鐫セン也(なり)」とし金属製の鐫(のみ)をいう。また、「金に従い雋センの聲(声)。一に曰く石を琢(たた)く也(なり)」と石を加工する工具ともする。
(1)のみ(鐫)。穴をあける工具。(2)ほる(鐫る)。える。ほりつける。うがつ。「鐫刻センコク」(3)ひき下げる。しりぞける。「鐫黜センチュツ」(しりぞけられる。黜はしりぞける意)(4)いましめる。忠告を与える。「鐫喩センユ」(深く教えさとす)

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音符「戔セン」<戈と戈でたたかう> と「残ザン」「浅セン」「銭セン」「賤セン」「餞セン」「箋セン」「牋セン」「践セン」「綫セン」「盞サン」「桟サン」

2024年09月08日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 セン・サン・ザン  戈部  jiān        

解字 甲骨文字は武器である戈(ほこ)とそれを上下反転させた戈を並べた形で、戈と戈を向かい合わせ、戦闘の状態を表している。甲骨文字はたたかう・戦闘の意[甲骨文字辞典]。篆文は戈を上下に重ねた戔センになった。本来は戦闘の意だが、戦闘により生き残った者が「すくない」ことから、後代には「ちいさい」「みじかい」「うすい」など小・薄・短のイメージで使われる。新字体に用いられるとき、戔 ⇒ 㦮に変化する。
意味 (1)そこなう。 (2)すくない。わずか。 (3)サの音。サンの発音のサだけ生かした万葉仮名の用法。「素戔嗚尊すさのおのみこと」(日本神話で天照大神あまてらすおおみかみの弟)

イメージ  
 戈と戈で「たたかう」(戔・残)
 戦いで生き残った者が「すくない」(賤・浅)
 後に発生したイメージ「ちいさい・うすい・短い」(銭・餞・盞・箋・牋・桟・践)
 「形声字」(綫)
音の変化  セン:戔・賤・浅・銭・餞・箋・牋・践・綫  サン:盞・桟  ザン:残

たたかう
 ザン・のこる・のこす  歹部 cán
解字 旧字は殘で「歹(ほね)+戔(たたかう)」の会意形声。歹ガツは死者の骨の一部を表わし、たたかいで死んだ兵士の骨が戦場に残っていること。また、骨が残る戦闘の、むごいことをいう。新字体は残に変化。
意味 (1)のこる(残る)。のこす(残す)。のこり。「残雪ザンセツ」「残業ザンギョウ」 (2)そこなう(残なう)。むごい。「残酷ザンコク」「残虐ザンギャク

すくない
 セン・いやしい  貝部 jiàn
解字 「貝(財貨)+戔(少ない)」の会意形声。財貨が少ない人の意から、まずしい・身分が低い・いやしい意となる。
意味 (1)いやしい(賤しい)。身分がひくい。しず(賤)。「賤民センミン」(いやしい身分とされた人。低い身分として差別をうけた人々)「下賤ゲセン」(身分の低いこと。品性がいやしいこと)「賤の女しずのめ」(身分の低い女子)(2)いやしむ。さげすむ。「賤侮センブ」(賤も侮も、さげすむ意) 
 セン・あさい  氵部 qiǎn・jiān
会意 旧字は淺で「氵(水)+戔(少ない)」の会意形声。水が少ない、即ち、あさい意。新字体は浅に変化。
意味 (1)あさい(浅い)。「浅瀬あさせ」「遠浅とおあさ」「浅学センガク」 (2)あさはか。「浅薄センパク」 (3)あっさりしている。あわい。「浅緑あさみどり」(4)姓のひとつ。「浅井あさい」「浅岡あさおか」「浅見あさみ」(5)地名。「浅間山あさまやま」(長野・群馬両県にまたがる活火山)

小さい
 セン・ぜに  金部 qián
解字 旧字は錢で「金(金属)+戔 (小さい)」の会意形声。小さな銅などの金属の意で、金属の貨幣を表わす。新字体は銭に変化。
意味 (1)ぜに(銭)。かね。貨幣。「金銭キンセン」「日銭ひぜに」「銭湯セントウ」(銭を払って入浴する湯) (2)貨幣の単位。せん(銭)。1円の100分の1。
 セン・はなむけ  食部 jiàn
解字 「食偏の旧字(たべる)+戔 (小さい)」の会意形声。別れる人に贈るこじんまりとした酒食の宴。
意味 (1)はなむけ(餞)。送別する。※「はなむけ」とは旅立つ方向に馬の鼻を向けること。「餞送センソウ」(旅立つ人を見送る)「餞亭センテイ」(送別の宴の会場)「餞別センベツ」(旅立つ人に贈る金品や言葉)
 サン・さかずき  皿部 zhǎn
解字 「皿(うつわ)+戔(小さい)」の会意形声。小さいうつわで、さかずきをいう。皿(さら)は日本では平たい器だが、本来はふくらみのある器をいう。
意味 さかずき(盞)。小さい酒杯。「酒盞シュサン」「一盞イッサン」(一杯のさかずき)
うすい
 セン・ふだ  竹部 jiān
解字 「竹(たけ)+戔(うすい)」の会意形声。文字を書いた薄い竹のふだ。古代は筆写の材料に竹を用いたが、紙ができてからは紙のふだをいう。  
意味 (1)ふだ。はりふだ。「付箋フセン」 (2)手紙や文章を書く紙。「便箋ビンセン」「処方箋ショホウセン
 セン・ふだ  片部 jiān
解字 「片(木片)+戔(うすい)」の会意形声。文字を書きつける薄い木のふだ。のち、紙などのふだをいう。
意味 (1)ふだ(牋)。かきつけ。手紙。「牋簡センカン」(文書)「牋翰センカン」(紙と筆)「牋札センサツ」(手紙・書簡)「牋草センソウ(文書の下書き・草稿) (2)申し立てる書状。「牋奏センソウ」(上奏の文)
みじかい
 サン・かけはし  木部 zhàn  
解字 旧字は棧で「木(き)+戔(短い)」の会意形声。短い木や板を並べて作った構造物をいう。新字体は桟に変化。

蜀の桟道(「三国志街道をゆく」より)

木曽の桟(長野県上松町・木曽路名所図会)
意味 (1)かけはし(桟)。けわしい所に横に平行して掛け渡した橋。「桟道サンドウ」「蜀の桟道」(陝西省の沔ベン県より四川省(蜀)の剣閣に至る道で、難所の崖に短い木や板を用いて作った道)「木曽の桟(かけはし)」(木曽川沿いの通行困難な断崖に差し込んだ丸太の上に板などをあてて通り道とした桟道)「桟橋サンバシ」(船に人や荷物をのせるため短い木や板を用いて作った橋)(2)ねだ。床板を張るための横木。「桟敷サジキ」(土間や地面より一段と高く作った席)(3)さん(桟)。戸や障子のほね木。「ガラス戸の桟サン
 セン・ふむ  足部 jiàn  
解字 旧字は踐で「足(あし)+戔(みじかく・こきざみ)」の会意形声。足をみじかく小刻みにしっかりとふむこと。
意味 (1)ふむ(践む)。ふみ行なう。「践行センコウ」(ふみおこなう。実行すること)「実践ジッセン」 (2)のぼる。位につく。「践位センイ

形声字
 セン・すじ  糸部 xiàn
解字 「糸(いと)+戔(セン)」の形声。センという名の糸。[説文解字]は「縷(いと・いとのように長いもの・いとすじ)也(なり)」とし、いと・いとすじをいう。字はまた線につくる。
意味 (1)いと。いとすじ。すじ(綫)。「綫縷センル」(細い糸)「綫索センサク」(糸すじをたどってもとめる。消息をさぐる)「綫金センキン」(鉱脈)「綫車センシャ」(糸車)(2)ぬいいと。「綫脚センキャク」(縫い目)
<紫色は常用漢字>

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音符「呆ホウ」<産衣で包んだ赤子>と「保ホ」「堡ホ」「褒ホウ」「褓ホウ」「葆ホウ」

2024年09月06日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 ホウ・ボウ・タイ・おろか・あきれる  口部 dāi

解字 呆は本来、保の省略字であるが、[字通]によると、元代(1271~1368)に俗語として保から分離して使われたのが始まりという。字形の変遷を保から抜き出すと上記のようになる。金文は子の下方に、ノ(斜線)が引かれているが、この斜線はオムツとされる。篆文は子の両側にハが描かれ、子をおむつや産衣で包んだ形である。本来は生まれた赤子を大事に包んで保護するかたち。しかし元代の俗語では、生まれた子は何も分からないため転じて、おろかの意となった。現代字は「口+木」の形に変化した。
意味 (1)おろか(呆か)。ぼんやりした。「痴呆チホウ」「阿呆アホウ」(おろかである。おろかな人) (2)あきれる(呆れる)。あっけにとられる。「呆気あっけ」「呆然ボウゼン」(①ぼんやりしたさま。②あっけにとられるさま)

イメージ 
 「産衣で包んだ赤子」
(呆・保・褓)
  保の意である「まもる」(堡)
 「形声字」(褒)
音の変化  ホウ:呆・褓・褒・葆  ホ:保・堡

産衣で包んだ赤子
 ホ・たもつ  イ部 bǎo

解字 甲骨文第1字は人が手を後ろにまわし赤子を背負っている形。第2字は「イ(人)+子」の形。金文は甲骨文第2字の子にノ(おむつ)をつけた形。篆文で子の左右にハ(おむつ)がつき、現代字で「イ(ひと)+呆」の保となった。意味は、人が子供を背負う形から、たもつ。子供を背負ったり抱いて保護するので、まもる意となる。
意味 (1)たもつ(保つ)。もつ。「保有ホユウ」「保持ホジ」「保健ホケン」(健康を保つ) (2)まもる。やすんじる。「保護ホゴ」「保安ホアン」「保険ホケン」(危険を集団でまもる制度)(3)責任を持つ。「保証ホショウ
 ホウ・ホ  衤部ころも bǎo
解字 「衤(衣)+保(=呆。産衣で包んだ赤子)」 の会意形声。保は、ここで呆(産衣で包んだ赤子)の意。これに衤(衣)をつけた褓は、赤子のうぶぎや、おむつを表す。
意味 むつき(褓)。うぶぎ。おむつ。「襁褓むつき・キョウホウ」とも書く。襁も、むつきの意。「御襁褓おむつ」(①おむつ。おしめ。 ②うぶぎ)
※「むつき」とは、むつ(睦・なれしたしむ)+き(着る)で、赤子に親しく着せるものの意。うぶぎやおむつを言う。
 ホ・ホウ・しげる  艸部 bǎo
解字 「艸(くさ)+保(たもつ)」の会意形声。草が生えるにまかせている状態をいう。[説文解字]は「草盛(さかり)の貌ボウ(すがた)」とする。
意味 (1)しげる(葆る)。草木がむらがり生える。「葆葆ホウホウ」「蓬葆ホウホウ」(頭髪が乱れているさま)(2)たもつ。守る。(=保)「葆護ホゴ」)(=保護) (3)宝ホウに通じ、たから。宝とする。「葆祠ホウシ」(宝としてまつる)(4)はねかざり。車の上や旗ざおの先につける羽飾り。「葆車ホウシャ」(五彩の羽毛を編み込んだ蓋いのある車)(5)姓のひとつ。

まもる
 ホ・ホウ とりで  土部 pù・bǎo・bǔ
解字 「土(つち)+保(まもる)」の会意形声。土塁でかこんだ、まもりのとりで。
意味 とりで(堡)。土や石で築いた小さな城。「堡砦ホサイ・ホウサイ」(とりで。堡も砦も、とりでの意)「橋頭堡キョウトウホ」(橋を守るため、その前方に設ける陣地。拠点。足場)「堡礁ホショウ」(堡の土塁のように島のまわりを取り囲むサンゴ礁。島と礁との間に浅い潟がある)

形声字
 ホウ・ほめる  衣部 bāo
解字 「衣(ころも)+保(ホウ)」の形声。ホウは包ホウ(つつむ)に通じ、外側からゆったりと包むような裾のひろい衣を褒衣と言った。この褒衣をほうびとして賜(たまわ)ることがあり、ほめる(褒める)意が出た。
意味 (1)体を包む大きな打ち掛け。ひろい。「褒衣ホウイ」(①ゆったりした衣。②褒美として賜った衣)「褒袖ホウシュウ」(広い袖)(2)ほめる(褒める)。「褒美ホウビ」(褒めて与えるもの)「褒賞ホウショウ」(ほめてたたえる)「褒章ホウショウ」(褒めてあたえる記章<記念のしるし>。紺綬褒章コンジュホウショウなど)「褒貶ホウヘン」(ほめることと、けなすこと)「毀誉褒貶キヨホウヘン」(褒めたり、けなしたりすること) 
<紫色は常用漢字>

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音符「尋ジン」<左右の手をひろげて長さをはかる>「蕁ジン」「潯ジン」「鱘ジン」

2024年09月04日 | 漢字の音符
 ジン・たずねる・ひろ  寸部 xún

解字 甲骨文字は両手をひろげて、線であらわされた長さを計っている形。たずねる意で、地方や敵対勢力に赴く際に用いられており、地形や敵情を測りながら進むことであろう[甲骨文字辞典]。篆文第一字(六書通)は、右手と左手を合わせた形(上と下が手で、右の口と左の工は真ん中にまとめている)、右手と左手を拡げて長さを計る形を示す。篆文第二字で、計る動作をくりかえす意の彡がつき、下の手⇒寸に変化した形ができて、現代字へとつながる。新字体の尋ジンは、右手(ヨ+口)と左手(工+寸)からなる。(旧字体はヨの右が出る)
 意味は、人が両手をひろげて長さを計ること。また、その長さをいう。物の長さや距離を計ることは、対象をさぐることであるから、さぐる・たずねる・さがす意となる。
意味 (1)たずねる(尋ねる)。さぐる。問いただす。「尋究ジンキュウ」(たずねさぐる)「尋問ジンモン」(たずね問う)「尋花問柳ジンカモンリュウ」(花や柳を尋ねて春の景色を楽しむ)(2)ひろ(尋)。両手を左右に広げた長さ。1尋は8尺(周・春秋・戦国)でメートル換算で180㎝。「千尋ちひろ」(非常に長いこと。また、深いこと)(3)ふつう。なみ。(大人が両手を広げた長さがほぼ同じことから)「尋常ジンジョウ」(ふつう。人並み)「尋常小学校」(明治19年から昭和15年までの日本の初等教育機関の名称)(4)地名。「東尋坊トウジンボウ」(福井県北部海岸の険しい海食崖で知られる景勝地)
覚え方 ヨエロ寸スンジン

イメージ
 「長さを計る・両手を拡げた長さ」
(尋・潯・
 「形声字」(蕁)
音の変化  ジン:尋・蕁・潯・鱘
 
長さを計る・両手を拡げた長さ
 ジン・ふち  氵部 xún
解字 「氵(みず)+尋の旧字(長さを計る)」の会意形声。尋は、ここでは水の深さをはかる意で、深さをはかるほど水をたたえたふちをいう。
意味 (1)ふち(潯)。水を深くたたえたふち。ふちの水際。(2)川の名。地名。「潯陽江ジンヨウコウ」(江西省九江市付近を流れる長江の別称)「潯陽ジンヨウ」(江西省九江市の唐代の古称)
 ジン  魚部 xún
解字 「魚(さかな)+尋の旧字(両手を拡げた長さ)」の会意形声。両手を拡げて測るほどの長さがある大きな魚のチョウザメ。
 
チョウザメ(「大紀元新聞網」(Joe Weisner, Jones Sport Fishing)より)
意味 ちょうざめ。「ちょうざめ」。チョウザメ科の硬骨魚の総称。体長は1~2メートル。写真のチョウザメは3メートルある超特大魚。川を遡上して産卵し稚魚は海や湖に戻って成長する。卵はキャビアとして珍重される。蝶鮫とも書く。名前の由来は、体表にある硬いウロコが蝶の形をしていること、全体的な形がサメに似ていることから。

背と側面に蝶形のウロコが見える。(中国のネットから)

形声字
 ジン・シン  艸部  qián・xún
解字 「艸(草)+尋(ジン)」の形声。①ジンという名の草。②「蕁麻ジンマ」に用いられる。
意味 (1)ユリ科の多年草。根茎に解熱作用のある薬草。はなすげ(蕁)。(2)「蕁麻ジンマ」とは、イラクサ科の多年草。いらくさ。茎と葉に細かい刺毛があり、皮膚に当るとチクチクして痛くなる。刺草ともいう。「蕁麻ジンマ・いらくさ」(イラクサ)「蕁麻疹ジンマシン」(皮膚がかゆくなり赤くはれる急性皮膚病。イラクサのトゲに刺されたような皮疹ができることから)
蕁麻の外皮から細縄ができる

①秋に枯れた茎を刈り取り外皮をとりだしたもの。②裂いてから縒って細い縄を作る。細い縄は布を織る繊維の材料となる。アイヌ民族が生活用具として利用していたという。「実はすごいぞ!イラクサ!」より。
<紫色は常用漢字>

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音符「夐ケイ」<はるか> と「瓊ケイ」

2024年09月02日 | 漢字の音符
  音符「夐ケイ」と「瓊ケイ」
夐 ケイ・はるか 攵部 xuàn・xiòng 



 上は奐カン、中は夐ケイ、下は攴ボク
解字 上の奐カンの金文は身体をひねった大のかたちの人が股間をひろげており、その下に両手を描く。女性が分娩するとき、介助の人が両手で子どもをとりあげる形で換カンの原字。篆文は上部が人の側面となり股間と分離し、現代字は両手が大に変化した奐カンになった。
 一方、ケイの篆文は「奐カンの上部+𥄎ケツ・ケチ」で[説文解字]は「𥄎(目+攴)に従い、人の穴の上に在るに従う」とし、「營(営)求(尋訪・尋ね訪れる)也(なり)」とするが意味が分かりにくい。𥄎(目+攴)ケツ・ケチは、目を攴ボク(手で棒などを持って打つ)意であり、ネットの[漢字林(非部首部別) 攴部]によると「ちらっと横目で見る」意とする。私は「高い穴(洞穴)の上の人が、おそるおそる(真下を見るのではなく)チラッと横目で遠くを見る意から「はるか」の意味がある会意字と解釈したい(私見です)。
意味 (1)はるか。とおい。「夐絶ケイゼツ」(はるかにかけ隔てる。=夐遠ケイエン)「夐然ケイゼン」(はるかなさま)「敻古ケイコ」(はるかな昔)(2)もとめる。 

イメージ 
 「はるか」(夐)
 「形声字」(瓊)
音の変化 ケイ:夐・瓊

形声字
 ケイ・たま・に  王部 qióng
解字 「王(玉・貴石)+敻(ケイ)」の形声。ケイという名の宝石。「たま」や「玉の美しい色」などの意味がある。
意味 (1)たま(瓊)。美しい玉。「瓊音ケイオン」(①玉の音。澄んで調子の高い音響。②手紙の美称)「瓊樹ケイジュ」(①玉の生じる木。その花を食べると長生きするという。②玉のように美しい木)「瓊枝玉葉ケイシギョクヨウ」(皇室の子孫・一族のたとえ)「瓊杯ケイハイ」(玉のさかずき。玉杯)(2)に(瓊)。①赤い色の玉。②万葉仮名の用法。「瓊瓊杵尊ににぎのみこと」(日本神話の神。アマテラスの孫にあたる神)(3)玉のように美しい。「瓊筵ケイエン」(①玉のように美しいむしろ。②美しい宴席)「瓊宮ケイキュウ」(美しい御殿)
鑑真ゆかりの花・瓊花ケイカ
「瓊花ケイカ」とは、スイカズラ科の花で5弁の花を8個付けることから八仙花ともいい中国・隋の皇帝、煬帝ヨウダイも愛したといわれる。唐招提寺を創建した鑑真和上の故郷・揚州市(江蘇省)の名花であり、和上の没後1200年の1963(昭和38)年に中国仏教協会から同寺に贈られた。唐招提寺はこの花が咲く御影堂供華園(くげえん)を4月末から5月初めに毎年特別公開している。
 鑑真和上(688~763)は唐の学僧。揚州江陽県の生まれで戒律・天台教学などを習学した。入唐僧侶の栄叡らの要請により渡航を決意、暴風・失明などの苦難をおかして、753年に来日。東大寺に初めて戒壇を設け、のち戒壇道場として唐招提寺を建立し、大和上の号を賜った。

鑑真ゆかりの花・見頃(ブログ「神仏霊場遥拝の旅」より)
 なお鑑真和上が日本に上陸したとされる嘉瀬かせ津があった佐賀市にも揚州市から1990(平成2)年に贈られ、同市の佐賀県森林公園に植えられており4月中旬ごろに満開になる。
 
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音符「不フ」<まるくふくらむ> と「杯ハイ」「盃ハイ」「坏ハイ」「胚ハイ」「否ヒ」「丕ヒ」「歪ワイ」

2024年09月01日 | 漢字の音符
   フ <まるくふくらむ>  改訂しました。
 果実(くだもの)はふつう花のなかにある子房がふくらんで大きくなるが、リンゴやバラなどバラ科の花の果実は、花びらと萼ガクを支えている花托の部分がふくらんで果実になる。不は、こうしたバラ科の実がふくらみ始めたさまを描いた字とされている。

リンゴの摘果前の花(「りんご屋さん 弐七農園」より)
 上の写真は、リンゴの摘果(果実を大きくするため間引く)前の状態で、右の花は雄しべや雌しべ、花萼がついた状態、左は花托がふくらみ花萼が残っている状態で、雄しべや雌しべは落ちている。
 
観賞用のバラ(ルゴサ)の実。(ブログ「野に草」より)
 観賞用のバラの実は花托がふくらみ、下へ垂れさがり、実の先に萼がついており、不の甲骨文字に似ている。
 フ・ブ  一部 bù・fǒu

解字 甲骨文字の不は、バラ科の実がふくらみかけた時を描いたものとされ、上の三角形がふくらみかけた実、下へ垂れた数本の曲線が残って付いている萼を表している。花が散って、実がふくらんできたさまの象形。この字が基になって金文以降、形の変遷をかさね現代字の不になった。
 本来の意味で使われることはなく、不の音(フ・ブ)を借りて否定の意味を表す。
意味 (1)~でない。よくない。「不可フカ」「不安フアン」「不作フサク」「不利フリ

イメージ 
 「打ち消す(仮借)」
(不・否・歪)
 原義から「まるくふくらむ」(杯・盃・坏・丕・胚)
音の変化  フ:不  ハイ:杯・盃・坏・胚  ヒ:否・丕  ワイ:歪

打ち消す
 ヒ・いな・いや  口部 fǒu・pǐ
解字 「口(くち)+不(打ち消す)」 の会意形声。「不」の意志を口で示すこと。
意味 (1)いな(否)・いや(否)。打ち消す。同意しない。「否定ヒテイ」「否決ヒケツ」「否応いやオウ」(いやいや。決してそうでない)
 ワイ・ゆがむ・ひずむ・いびつ  止部 wāi
解字 「正(ただしい)+不(打ち消す)」の会意。正しくないこと。真っすぐでないこと。転じて、ゆがむ意味になる。
意味 ゆがむ(歪む)。ひずむ(歪む)。正くない。「歪形ワイケイ」(小判形)「歪曲ワイキョク」(曲げてゆがめる)「歪(いびつ)」(「飯櫃いいびつ」の略。楕円形であることから、ゆがむさま)

まるくふくらむ
 ハイ・さかずき  木部 bēi
解字 「木(き)+不(まるくふくらむ)」 の会意形声。液体をいれる、まるくふくらんだ木の器で、さかずきの意。
意味 (1)さかずき(杯)。酒をうける器。「乾杯カンパイ」「玉杯ギョクハイ」(玉でつくった杯。さかずきの美称)「苦杯クハイ」(苦い液をいれた杯。つらい経験のたとえ) (2)賞として与える金属製のさかずき。カップ。「金杯キンパイ」「賞杯ショウハイ」(賞として与える杯)(3)器に入ったもの、また船を数える言葉。「一杯イッパイ
 ハイ・さかずき  皿部 bēi
解字 「皿(まるみをおびた器)+不(まるくふくらむ)」の会意形声。ほぼ同じ意味の字を重ねた形。まるくふくらんだ器で、さかずきの意。杯の俗字。皿は日本では底が平らで丸い器だが、本来は、まるみをおびた器の意。
意味 (1)さかずき(盃)。杯の俗字。(2)日本では婚礼などお祝い用にもちいる底の浅い皿のような盃(さかずき)をいう。
 お祝い用朱盃(販売広告から)
 ハイ・つき  土部 huài・pī・pēi・péi
解字 「土(つち)+不(まるくふくらむ)」の会意形声。まるくふくらんだ丘や、積み上げた土のやま。日本では「杯」に対し土製の食物を盛る器(つき)の意で使われる。
意味 (1)おか(丘)。積み上げた土の山。(2)しらじ(白土)。陶磁器を作る素地の土。「坏土ハイド」(3)[国]つき(坏)。食物を盛る器。「高坏たかつき」(食物を盛る脚付きの台)
高坏 「文化遺産オンライン」より
 ヒ・おおきい  一部 pī
解字 「一(最初)+不(まるくふくらむ)」の会意形声。ふくらみはじめた最初の段階で、はじめ・もとの意。はじめ・もとの意から転じて天子の意となったため、おおきい・さかんの意味ともなる。
意味 (1)はじめ。もと。(2)天子。「丕子ヒシ」(天の元子の意から天子。また天子の長男)「丕祚ヒソ」(天子の位)「丕命ヒメイ」(天子の命令)(3)おおきい(丕きい)。さかん。「丕基ヒキ」(大きな基礎)「丕業ヒギョウ」(大きな事業)「丕顕ヒケン」(大いにあきらか)
 ハイ・はらむ  月部にく pēi
解字 「月(からだ)+丕」の会意形声。丕は、「一(最初)+不(ふくらむ)」で、ふくらみはじめた最初の段階、胚は、人がみごもる意。
意味 (1)はらむ(胚む)。みごもる。きざす。「胚胎ハイタイ」(みごもること。きざすこと)(2)はい(胚)。発生初期の個体。「胚芽ハイガ」(種子の中で芽となって生長する部分)「胚子ハイシ」(受精後、発生しはじめた卵細胞)
<紫色は常用漢字>

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