オランダで骨董店を営む祖父と暮らす画家の卵ヘヨンの元に届けられるデイジーの花。名前も姿も知らない送り主こそ運命の恋人だと信じるヘヨンは、肖像画の客として現れたジョンウに心惹かれる。一方、殺し屋という職業ゆえに人知れずヘヨンを見守り続けてきたパクウィは…。
主演が、チョン・ジヒョンとチョン・ウソンなので、完全な韓国映画だと思っていたが、監督は、「インファナル・アフェアー」で有名な香港映画のヒットメイカー、アンドリュー・ラウ。クレジットは韓国映画だが、どことなく香港映画のような雰囲気もあり、これはこれでありかなと思った。
また、全編、オランダのアムステルダムで撮影されており、古い建物が並ぶ町並みや運河、田舎の花畑などの風景は見ているだけで、異国の地にいるようで楽しい。
それ以上に素晴らしかったのが、主人公3人の感情がうまく表現されているところだ。ヘヨンを陰ながら見つめているパクウィ(普通の男性がそんなことしたらストーカーといわれるが、チョン・ウソンだから許されるのだろう)。ヘヨンが待ち続けていた恋人は自分ではないとはっきり言えず悩みながらも、彼女と付き合うジョンウ。どちらも無口な役柄ながらも、その心情はよく伝わってくる。二人の間で揺れ動くヘヨンの気持ちは、僕には共感はできないが、納得はさせられるうまい演出だった。香港映画のようなアクションの迫力は控えめではあるが、3人の人物像がしっかり描かれているため、それでもなかなか見応えのあるドラマに仕上がっていたと思う。
悲しいストーリーではあるが、ラストはそういったものを感じさせない終わらせ方だったところにも好感が持てた。