(秋田魁新報 7月10日付)
物事は見方によって様相が異なってくる。例えば大都市と地方。商業施設の集積といった「便利さ」が尺度なら大都市に軍配が上がるが、豊かな自然など「住み心地」で測れば地方が優位に立つ
▼日本という国も視座を変えれば多元的な固有文化が見えてくる、と指摘するのは民俗学者の赤坂憲雄さん。政府の復興構想会議の委員も務める赤坂さんの著書「東西/南北考」(岩波新書)は、東北地方を再考する上で示唆に富んでいる
▼同書は「ひとつの日本」という従来の東西論は既に破綻しているとし、南北論の立場から「いくつもの日本」を考えるべきだと訴える。東西論とは大和朝廷以降の単一民族的な見方、南北論とは縄文時代までさかのぼり「異族」の存在を前提とした見方だ
▼アイヌ語の地名が多く残り、独自の文化が息づく東北を「西日本に源流を発するヤマトや和人の文化一色に塗りこめることは、もはやできない」と記す赤坂さん。古代蝦夷(えみし)の研究を土台に、新たな東北学の構築が必要という主張は胸を突く
▼東日本大震災を受け、東北を見詰め直す機運が高まっている。政府も「復興の主役は被災地だ」と言う。だが辞任した復興相の放言に象徴されるように、地方軽視の姿勢が目に付くのはなぜだろう
▼政府は地方分権を一層進めた「地域主権」を掲げる。その言葉に魂は入っているのか。12日から秋田市で始まる全国知事会議では地方の視座で検証するとともに、目指すべき東北像にも踏み込んでほしい。
(2011/07/10 10:43 更新)
http://www.sakigake.jp/p/column/hokuto.jsp?kc=20110710ax
物事は見方によって様相が異なってくる。例えば大都市と地方。商業施設の集積といった「便利さ」が尺度なら大都市に軍配が上がるが、豊かな自然など「住み心地」で測れば地方が優位に立つ
▼日本という国も視座を変えれば多元的な固有文化が見えてくる、と指摘するのは民俗学者の赤坂憲雄さん。政府の復興構想会議の委員も務める赤坂さんの著書「東西/南北考」(岩波新書)は、東北地方を再考する上で示唆に富んでいる
▼同書は「ひとつの日本」という従来の東西論は既に破綻しているとし、南北論の立場から「いくつもの日本」を考えるべきだと訴える。東西論とは大和朝廷以降の単一民族的な見方、南北論とは縄文時代までさかのぼり「異族」の存在を前提とした見方だ
▼アイヌ語の地名が多く残り、独自の文化が息づく東北を「西日本に源流を発するヤマトや和人の文化一色に塗りこめることは、もはやできない」と記す赤坂さん。古代蝦夷(えみし)の研究を土台に、新たな東北学の構築が必要という主張は胸を突く
▼東日本大震災を受け、東北を見詰め直す機運が高まっている。政府も「復興の主役は被災地だ」と言う。だが辞任した復興相の放言に象徴されるように、地方軽視の姿勢が目に付くのはなぜだろう
▼政府は地方分権を一層進めた「地域主権」を掲げる。その言葉に魂は入っているのか。12日から秋田市で始まる全国知事会議では地方の視座で検証するとともに、目指すべき東北像にも踏み込んでほしい。
(2011/07/10 10:43 更新)
http://www.sakigake.jp/p/column/hokuto.jsp?kc=20110710ax