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ダム撤去でサケは戻るか? アメリカ

2011-07-26 | 先住民族関連
ナショナルジオグラフィック ニュース July 26, 2011

Anne Minard for National Geographic News
 アメリカ西部を流れるクラマス川のダム4基を撤去し、危機に瀕するサケを保護する注目の計画がいよいよ連邦議会で審議される。
 撤去対象となるのは、カリフォルニア州にあるアイアンゲートダム、コプコ第一ダム、コプコ第二ダム、ジョン・C・ボイル(John C. Boyle)ダム。関連事業も含めた総費用は約10億ドル(約780億円)に上り、半分が連邦予算から拠出される予定だ。
 クラマス川でのサケ漁に依存する先住民族や、灌漑(かんがい)用水が必要な周辺農家も同意しており、ダムを所有する電力会社パシフィコープも支持している。
 ダムの存続条件にはサケの魚道の修正が求められており、パシフィコープは撤去の方が低コストと判断した。いずれにせよ最大の恩恵を受けるのは、サケたちのはずだ。
 この100年間でクラマス川を遡上(そじょう)するサケの数は、数百万単位から10万以下に激減した。環境保護団体「アメリカンリバーズ」や地元の先住民族は、ダム建設が主因だと主張している。
 カリフォルニア州の先住民族の一つ、ユロック族の漁業生物学者マイク・ベルチック(Mike Belchik)氏は、「われわれは太古の昔からクラマス川の魚に依存してきた」と話す。考古学的調査によると、この地では少なくとも9000年以上前から魚を捕って暮らしていたという。
◆特効薬ではない
 アメリカ魚類野生生物局が委託した第三者による科学調査が先日完了し、ダムの撤去がキングサーモン(マスノスケ)の生息数増加を促すことが確認された。ただし水質改善や、気候変動に伴う温水化への対処なども必要だと指摘されている。
◆クラマス川をめぐる衝突
 クラマス川は、オレゴン州東部からカリフォルニア州北部を通り、太平洋に流れ込む。川の流路は非常に多様で、雪解けの湧き水が集まる大きな泉を水源に、高地に広がる砂漠地帯を流れ海に至る。はるか昔から、川を遡上するサケの繁栄の基礎となってきた。同時に、ユロック族、カルック族、クラマス族、フーパ族など魚を捕らえて生活する先住民族も支えた。近年では、先住民族以外の漁師や農家たちもこの川に依存している。
 クラマス川には灌漑用のダムも建設されているが、今回の4基はすべて水力発電用である。4基合計で石炭360トン、7万世帯分の発電量に相当するという。
 クラマス川で開発が進むにつれ、サケの遡上は減っていった。
「ユロック族とカルック族が初めてダムの撤去を要請した10年以上前は嘲笑の的だった」とベルチック氏は語る。
 しかし、2001年から状況が変わる。干ばつが発生し、サケを守るために灌漑用水がせき止められ、農家が大ダメージを受けた。翌年はその反動で、州政府の判断により大量の川の水が灌漑に回され、サケの大量死が発生した。
「このときの大惨事から、農家と先住民族の話し合いが始まった」。農家の本音は灌漑用ダムの増設だが、最低限の農業用水確保が保証されたため今回の計画に合意した。
◆野心的な計画
 そして昨年、農家代表や先住民族、パシフィコープを含めた28の関係団体の間で、クラマス川の水力発電に関する和解合意が成立した。ダム4基の2020年までの撤去が定められている。
 要件の一つである科学調査が完了した後、オレゴン、カリフォルニアの両州で公共事業委員会が正式に合意を承認した。次の関門は連邦議会である。
 ダム撤去費用の4億5000万ドル(約350億円)については関係団体が支出を約束しているが、水質改善や再植林など、サケの回復に必要な5億ドル(約390億円)は連邦予算から計上されることになっている。
 連邦議会の交渉では、カリフォルニア州選出の共和党下院議員で、水道・電力小委員会の委員長を務めるトム・マクリントック氏がカギを握るとみられる。同氏は、「この電力不足の時代に、完全に良好な状態の4基の水力発電ダムを5億ドルもかけて破壊するなんて、とても正気とは思えない」とコメントしている。
 撤去計画が連邦議会を通過した場合、来年の3月までに内務省長官の承認を得ることが次のステップとなる。
◆先例
 クラマス川の計画は野心的だが、ワシントン州では既に2基の撤去が承認されており、今年の秋から実行される。対象はエルワ川にかかる堤高64メートルのグラインズキャニオンダムと、コロンビア川支流のホワイトサーモン川に建設されたコンディットダムである。
 この活動も支援してきたアメリカンリバーズの広報担当エイミー・コーバー氏は、次のように述べる。「ダムが建設された100年前には、それぞれ有益な役割を果たしていた。しかし今日では、危機に瀕するサケの遡上や、自由に流れる水面に時代の価値感がシフトしている。今やレクリエーションでの利用や人間性の回復が重要で、経済面でのメリットも意味が変化している」。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110726001&expand&source=gnews

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発掘調査、マチュピチュ発見百年

2011-07-26 | 先住民族関連
ナショナルジオグラフィック ニュースJuly 25, 2011

 1911年にマチュピチュを発見したアメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムは翌年、発掘チームを率いて調査を開始した。1915年にも一時的に訪れている(左)。
 3年前に発掘した建造物はジャングルに埋もれてしまっており、大きなショックを受けた様子が彼の日誌から伺える。
「遺跡がジャングルや茂みに戻って行くのを目の当たりにして泣きそうになった。かろうじて見通しが利く一角も、6頭の豚が占拠する始末! キャンプした小屋も汚れきっている。遺跡のほとんどは見えない。ああ、何てことだ!」。
 右は発掘も終わり整備された80年後の姿(1997年撮影)。類い希な美しさと歴史的重要性により1983年、ユネスコが世界遺産リストに登録した。
 1912年に訪れたビンガムの発掘チームは、建物や寺院の一部を対象として、特に金属品などの人工遺物がないか捜索を行った。
 しかし、当初はほとんど成果が出なかった。「付近で暮らす先住民の家族が山の斜面に隠された埋葬室にチームを案内してくれた。歴史的価値のある人工物の発見が始まった」と、テキサス大学オースティン校のクリストファー・ヒーニー氏は話す。
 埋葬室で発見された遺骨を基に、「インカの太陽神インティに仕える、選ばれし聖なる女性“太陽の処女”の寺院だったのではないか」とビンガムは考えた。
 この説は、「遺骨のほとんどが女性」という当時の骨学者の誤った報告に基づいていた。2000年に実施された再分析により、男女の比率はおよそ半々だと判明している。
Photographs by Hiram Bingham, National Geographic (left) and from Kuttig Travel/Alamy (right)
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2011072502&expand&source=gnews


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発見の瞬間、マチュピチュ発見百年

2011-07-26 | 先住民族関連
ナショナルジオグラフィック ニュース July 25, 2011

 ジャングルの草木に覆われたマチュピチュ遺跡(左)。100年前の1911年7月24日、初めて訪れたアメリカ、イェール大学の考古学者ハイラム・ビンガムが撮影した。右は現在の姿。
 ビンガムの想像とは異なり、マチュピチュを含めペルーで訪れた古代インカ遺跡はどれも隠されておらず、見捨てられてもいなかった。テキサス大学オースティン校のクリストファー・ヒーニー氏は、「尾根の頂部で先住民の家族を見つけ、ビンガムは非常に驚いたようだ」と話す。
 先住民たちはマチュピチュの石の建物を避け、尾根の他の場所で木の小屋を建てて生活していた。3組の家族が暮らしており、1人の少年が残りの山道の案内を買って出た。ついにビンガムは、後に世界的な注目を集める15世紀の都市の全体像を目の当たりにすることになる。
 マチュピチュの大半はジャングルのつる植物や樹木に覆われており、作物を栽培する開墾地が点在していた。「まさしく生活の場で、数百年間続いていた」とヒーニー氏は述べる。
「ビンガムの登場は彼らの生活に大きな変化をもたらしたはずだ。土地の所有者に存在を知られてしまったのだから。“家賃”を徴収されたかどうかはわからないが、1911年に住んでいた3組の家族の内、1915年には2家族が去っていった」。残った1家族は、最終的にペルー政府から遺跡の管理人として雇われたという。
 ヒーニー氏は昨年、『Cradle of Gold: The Story of Hiram Bingham, a Real-Life Indiana Jones, and the Search for Machu Picchu(黄金のゆりかご:マチュピチュを発見した“リアル・インディ・ジョーンズ”ハイラム・ビンガムの生涯)』を出版している。
Photographs by Hiram Bingham, National Geographic (left) and Harvey Lloyd, Getty Images (right)
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=2011072501&expand&source=gnews

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