朝日新聞 2011年07月29日
■すべてを明日の糧として 今こそ、アイヌの知恵と勇気を
宇梶 静江《著》
■自然と人間への愛伝える
浦河出身のアイヌ民族である著者は、1973年に「東京ウタリ会」(現・関東ウタリ会)を創設した。古布絵(こふえ)作家としても活躍し、アイヌ文化伝承の功績で今年、吉川英治文化賞を受賞。エネルギーに満ちた半生の自伝エッセーだ。
アイヌ解放運動家として知られる著者だが、子ども時代からの揺れる心の軌跡がつづられる。貧しい生活と周囲からの差別に立ち向かうものの、当時は「アイヌはなぜ貧しく、差別されるのか」を学べる本も教えてくれる人もいなかった。
仕事を求めて移り住んだ東京で和人の男性と結婚。アイヌを表に出す必要のない生活の中、抑えていた「アイヌとして生きたい」思いが噴き出し、新聞に同胞の連帯を呼びかける投書が載ったことが民族解放の運動へとつながっていく。
自然を敬い、命を大切にし、困った人を助ける。著者が親から受け継ぎ実践する“アイヌの生き方”は、今の時代にこそ必要な普遍的な価値観だ。友に語りかけるような飾り気のない文章からは、著者の強さと、自然と人間に対する愛の大きさが伝わる。「何もおそれるな。ひとりひとりが輝くいのち」という呼びかけが心に響く。
(清流出版・1785円)
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000861107290001
■すべてを明日の糧として 今こそ、アイヌの知恵と勇気を
宇梶 静江《著》
■自然と人間への愛伝える
浦河出身のアイヌ民族である著者は、1973年に「東京ウタリ会」(現・関東ウタリ会)を創設した。古布絵(こふえ)作家としても活躍し、アイヌ文化伝承の功績で今年、吉川英治文化賞を受賞。エネルギーに満ちた半生の自伝エッセーだ。
アイヌ解放運動家として知られる著者だが、子ども時代からの揺れる心の軌跡がつづられる。貧しい生活と周囲からの差別に立ち向かうものの、当時は「アイヌはなぜ貧しく、差別されるのか」を学べる本も教えてくれる人もいなかった。
仕事を求めて移り住んだ東京で和人の男性と結婚。アイヌを表に出す必要のない生活の中、抑えていた「アイヌとして生きたい」思いが噴き出し、新聞に同胞の連帯を呼びかける投書が載ったことが民族解放の運動へとつながっていく。
自然を敬い、命を大切にし、困った人を助ける。著者が親から受け継ぎ実践する“アイヌの生き方”は、今の時代にこそ必要な普遍的な価値観だ。友に語りかけるような飾り気のない文章からは、著者の強さと、自然と人間に対する愛の大きさが伝わる。「何もおそれるな。ひとりひとりが輝くいのち」という呼びかけが心に響く。
(清流出版・1785円)
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000861107290001