The Huffington Post | 執筆者: Chris D’Angelo
投稿日: 2017年03月12日 17時30分 JST 更新: 2017年03月12日 17時30分 JST
アメリカの首都ワシントンで3月10日朝、石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」(DAPL)の建設に抗議するアメリカ先住民らと支援者がデモ行進をした。
ダコタ・アクセス・パイプラインの建設地近くに居留地があるアメリカ先住民「スタンディングロック・スー族」の参加者数十人を含む数千人のデモ隊が行進し、ダコタ・アクセス・パイプライン、そして建設再開の大統領令に署名したトランプ大統領への抗議は7日から4日間に及んだ。
みぞれが降り、最高気温が0度近い真冬日、デモ隊はホワイトハウスに向けて出発する前に、パイプラインの建設許可を与えた陸軍工兵司令本部前に集結した。参加者は、行進しながら「石油は飲めない、採掘をやめろ」と口々に叫んだ。
スタンディングロック・スー族と支援団体「先住民族環境ネットワーク」が組織するアメリカ先住民たちのデモ行進は、陸軍工兵司令が2月7日に環境影響評価を中止し、パイプライン建設完了に許可を与えた約1カ月後に行われる。
モンタナ州北シャイアン族のレイモンド・キングフィッシャーさんはハフィントンポストUS版に、「2016年に6回スタンディング・ロックの居留地に足を運んで抗議に加わった」と語った。彼はトランプ政権に「我々はまだここにいる」と、抗議は終わっていないことを強調した。
「彼らは私たちに向き合わなければならない。私たちはどこへも行くつもりはない」と、キングフィッシャーさんは10日の行進中に語った。「彼らには、条約を守り、我々の権利を尊重する必要がある」
#NativeNationsMarchで歌に加わるモンタナ州北シャイアン族のレイモンド・キングフィッシャーさん
ホワイトハウスに向かう途中で、抗議デモの参加者たちはトランプ・インターナショナル・ホテルの前に集まり、ティーピー(アメリカ先住民のテント小屋)を立てて音楽やチャントを奏で、踊った。午前11時45分頃、彼らはホワイトハウス前の芝生のすぐ北にあるラファイエット広場に到着した。
ネブラスカ州オマハ族のメアリー・フィリップスさんはハフィントンポストUS版に「大統領はアメリカ先住民の声に耳を傾けていない」と語った。「彼が話を聞くまで、デモは続くだろう」
「大統領が先住民の居留地に行く機会はないでしょう」と、フィリップさnは言った。「現地に行って、何が起きているかを見る機会はないでしょう」
だから、先住民たちは大統領にメッセージを送ることにしたという。
トランプ氏は、何カ月にも及ぶ抗議活動を無視し、パイプライン建設再開を認める大統領令に署名した。トランプ氏は、「このプロジェクトが物議をかもすとは思えない」と発言した。
「抗議の電話なんて1本もなかった」とトランプ氏は語っている。「いいか、私が何かするときは、たいてい混乱がおきて騒ぎになるだろう? 誰からも、何の抗議もないじゃないか」
先住民のための人権団体「Peaceful Advocates for Native Dialogue and Organizing Support(原住民との対話と支援の組織化に関する平和的な信奉者たち)」代表で、ユタ州ホピ・チェマウェヴィ族のカール・ムーア氏は、民族服と羽で覆われた被り物を身にまとった多くの先住民たちと共に行進した。ムーア氏は、今回のデモ行進はパイプラインやトランプ氏への抗議だけではなく、先住民の自治権を求めるものだと語った。
「これは、この地球を守るという、アメリカ先住民が負っている神聖な義務を認めることです。私たちには環境を守るという、神から授かった義務があります」とムーア氏は言った。「そして、私たちの主権は尊重されなくてはなりません。それが尊重されたことなど今まで一度もありませんでした」
国中の部族たちがワシントンD.C.に何日間も集結し、ホワイトハウスに近いナショナル・モールにティーピーを立てた。
抗議集会では、スタンディングロック・スー族の代表デーブ・アーチャムボルト2世や民主党のタルシー・ギャバード下院議員がいた。ギャバード氏は2016年12月、抗議が激しくなる中、ノースダコタ州スタンディングロック・スー族の居留地にあった抗議デモの拠点「オセチ・サコウィン・キャンプ」に出向き、人々が凍える寒さの中で野営キャンプを張って抗議していた光景を目にしている。
部族の代表者らは9日、石油パイプラインの建設計画に反対するバーニー・サンダース上院議員と面会し、先住民らが直面している問題を話し合った。
抗議デモ参加者は10日、「先住民の権利を認めよ。私たちは存在する。私たちは抵抗する。私たちは立ち上がる」と書かれたプラカードを持ってデモ行進した。
ムーア氏は、「今こそ世界が目を覚ましてひとつになり、片隅に追いやられた全てのコミュニティのために戦い始めるべきだ」と語る。
「特権階級の人間は、このように片隅に追いやられたあらゆるコミュニティを支援し、先導する必要があるのです」とムーア氏は話した。「そうすれば、私たちは世界に変化を起こすことができます。アメリカだけでなく、世界を変えられます」
■ ダコタ・アクセス・パイプラインとは
ダコタ・アクセス・パイプラインは、「エナジー・トランスファー・パートナーズ」がノースダコタ州のバッケン油田からイリノイ州の石油ターミナルまでをつなぐ1172マイル(約1886キロメートル)のパイプラインをおよろ38億ドル(約4360億円)かけて建設するプロジェクト。建設ルート近くの居留地に住むアメリカ先住民スタンディングロック・スー族とその支援者たちが、水源のミズーリ川が汚染されることを懸念し、「水の保護者」として抗議デモを続けていた。
陸軍工兵司令部は2016年12月4日、ミズーリ川をせき止めたダム湖「オアへ湖」の地下を掘削する地役権(ある土地の便益のために、他人の土地を利用する権利)の承認を拒否し、地下にパイプラインを通す工事を認可しないと発表し、建設は中断されていた。バラク・オバマ前政権は、パイプラインによって起こり得る環境への影響を調べ、他のルートを探るための環境影響評価報告書をまとめるよう陸軍工兵司令部に指示した。
スタンディングロック・スー族はこの計画に一貫して反対しており、部族が生活する居留地の水資源に打撃を与え、神聖な土地を脅かし、連邦文化財保護法とスタンディングロック・スー族ら先住民の居留地を侵害しないと約束した1851年のフォート・ララミー条約に違反しており、連邦当局はパイプラインが環境に及ぼすリスクを適切に調査していないと主張している。
しかしトランプ大統領は1月24日、ダコタ・アクセス・パイプラインの工事を進め、カナダのアルバータ州からネブラスカ州までの1179マイル(約1897 キロメートル)をつなぐパイプライン「キーストーンXL」建設を手がける「トランスカナダ」に、オバマ前大統領が2015年に却下した建設計画の再申請をするように促す大統領令を出した。トランプ氏は建設再開で「多くの雇用、2万8000もの雇用を生む。素晴らしい建設計画だ」と述べた。
大統領令を受けて陸軍工兵司令部は7日、環境に及ぼす影響調査が完了するまで建設許可を与えないとしていた方針を覆し、環境影響評価の調査を中止し、建設を完了させる許可を与えると発表した。エナジー・トランスファー・パートナーズは9日からパイプラインの最終区間の建設を開始した。
ワシントン連邦地裁のジェームス・ボアズバーグ判事はエナジー・トランスファー・パートナーズ社に対し、ノースダコタ州の貯水湖の地下にパイプラインを通す工事再開を認めた。一方アメリカ先住民のスタンディングロック・スー族とシャイアンリバー・スー族は戦略を変更し、陸軍工兵部隊とエナジー・トランスファー・パートナーズに対する法廷闘争へと移行し、訴訟が現在も複数進行している。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/11/dapl_n_15306068.html
投稿日: 2017年03月12日 17時30分 JST 更新: 2017年03月12日 17時30分 JST
アメリカの首都ワシントンで3月10日朝、石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」(DAPL)の建設に抗議するアメリカ先住民らと支援者がデモ行進をした。
ダコタ・アクセス・パイプラインの建設地近くに居留地があるアメリカ先住民「スタンディングロック・スー族」の参加者数十人を含む数千人のデモ隊が行進し、ダコタ・アクセス・パイプライン、そして建設再開の大統領令に署名したトランプ大統領への抗議は7日から4日間に及んだ。
みぞれが降り、最高気温が0度近い真冬日、デモ隊はホワイトハウスに向けて出発する前に、パイプラインの建設許可を与えた陸軍工兵司令本部前に集結した。参加者は、行進しながら「石油は飲めない、採掘をやめろ」と口々に叫んだ。
スタンディングロック・スー族と支援団体「先住民族環境ネットワーク」が組織するアメリカ先住民たちのデモ行進は、陸軍工兵司令が2月7日に環境影響評価を中止し、パイプライン建設完了に許可を与えた約1カ月後に行われる。
モンタナ州北シャイアン族のレイモンド・キングフィッシャーさんはハフィントンポストUS版に、「2016年に6回スタンディング・ロックの居留地に足を運んで抗議に加わった」と語った。彼はトランプ政権に「我々はまだここにいる」と、抗議は終わっていないことを強調した。
「彼らは私たちに向き合わなければならない。私たちはどこへも行くつもりはない」と、キングフィッシャーさんは10日の行進中に語った。「彼らには、条約を守り、我々の権利を尊重する必要がある」
#NativeNationsMarchで歌に加わるモンタナ州北シャイアン族のレイモンド・キングフィッシャーさん
ホワイトハウスに向かう途中で、抗議デモの参加者たちはトランプ・インターナショナル・ホテルの前に集まり、ティーピー(アメリカ先住民のテント小屋)を立てて音楽やチャントを奏で、踊った。午前11時45分頃、彼らはホワイトハウス前の芝生のすぐ北にあるラファイエット広場に到着した。
ネブラスカ州オマハ族のメアリー・フィリップスさんはハフィントンポストUS版に「大統領はアメリカ先住民の声に耳を傾けていない」と語った。「彼が話を聞くまで、デモは続くだろう」
「大統領が先住民の居留地に行く機会はないでしょう」と、フィリップさnは言った。「現地に行って、何が起きているかを見る機会はないでしょう」
だから、先住民たちは大統領にメッセージを送ることにしたという。
トランプ氏は、何カ月にも及ぶ抗議活動を無視し、パイプライン建設再開を認める大統領令に署名した。トランプ氏は、「このプロジェクトが物議をかもすとは思えない」と発言した。
「抗議の電話なんて1本もなかった」とトランプ氏は語っている。「いいか、私が何かするときは、たいてい混乱がおきて騒ぎになるだろう? 誰からも、何の抗議もないじゃないか」
先住民のための人権団体「Peaceful Advocates for Native Dialogue and Organizing Support(原住民との対話と支援の組織化に関する平和的な信奉者たち)」代表で、ユタ州ホピ・チェマウェヴィ族のカール・ムーア氏は、民族服と羽で覆われた被り物を身にまとった多くの先住民たちと共に行進した。ムーア氏は、今回のデモ行進はパイプラインやトランプ氏への抗議だけではなく、先住民の自治権を求めるものだと語った。
「これは、この地球を守るという、アメリカ先住民が負っている神聖な義務を認めることです。私たちには環境を守るという、神から授かった義務があります」とムーア氏は言った。「そして、私たちの主権は尊重されなくてはなりません。それが尊重されたことなど今まで一度もありませんでした」
国中の部族たちがワシントンD.C.に何日間も集結し、ホワイトハウスに近いナショナル・モールにティーピーを立てた。
抗議集会では、スタンディングロック・スー族の代表デーブ・アーチャムボルト2世や民主党のタルシー・ギャバード下院議員がいた。ギャバード氏は2016年12月、抗議が激しくなる中、ノースダコタ州スタンディングロック・スー族の居留地にあった抗議デモの拠点「オセチ・サコウィン・キャンプ」に出向き、人々が凍える寒さの中で野営キャンプを張って抗議していた光景を目にしている。
部族の代表者らは9日、石油パイプラインの建設計画に反対するバーニー・サンダース上院議員と面会し、先住民らが直面している問題を話し合った。
抗議デモ参加者は10日、「先住民の権利を認めよ。私たちは存在する。私たちは抵抗する。私たちは立ち上がる」と書かれたプラカードを持ってデモ行進した。
ムーア氏は、「今こそ世界が目を覚ましてひとつになり、片隅に追いやられた全てのコミュニティのために戦い始めるべきだ」と語る。
「特権階級の人間は、このように片隅に追いやられたあらゆるコミュニティを支援し、先導する必要があるのです」とムーア氏は話した。「そうすれば、私たちは世界に変化を起こすことができます。アメリカだけでなく、世界を変えられます」
■ ダコタ・アクセス・パイプラインとは
ダコタ・アクセス・パイプラインは、「エナジー・トランスファー・パートナーズ」がノースダコタ州のバッケン油田からイリノイ州の石油ターミナルまでをつなぐ1172マイル(約1886キロメートル)のパイプラインをおよろ38億ドル(約4360億円)かけて建設するプロジェクト。建設ルート近くの居留地に住むアメリカ先住民スタンディングロック・スー族とその支援者たちが、水源のミズーリ川が汚染されることを懸念し、「水の保護者」として抗議デモを続けていた。
陸軍工兵司令部は2016年12月4日、ミズーリ川をせき止めたダム湖「オアへ湖」の地下を掘削する地役権(ある土地の便益のために、他人の土地を利用する権利)の承認を拒否し、地下にパイプラインを通す工事を認可しないと発表し、建設は中断されていた。バラク・オバマ前政権は、パイプラインによって起こり得る環境への影響を調べ、他のルートを探るための環境影響評価報告書をまとめるよう陸軍工兵司令部に指示した。
スタンディングロック・スー族はこの計画に一貫して反対しており、部族が生活する居留地の水資源に打撃を与え、神聖な土地を脅かし、連邦文化財保護法とスタンディングロック・スー族ら先住民の居留地を侵害しないと約束した1851年のフォート・ララミー条約に違反しており、連邦当局はパイプラインが環境に及ぼすリスクを適切に調査していないと主張している。
しかしトランプ大統領は1月24日、ダコタ・アクセス・パイプラインの工事を進め、カナダのアルバータ州からネブラスカ州までの1179マイル(約1897 キロメートル)をつなぐパイプライン「キーストーンXL」建設を手がける「トランスカナダ」に、オバマ前大統領が2015年に却下した建設計画の再申請をするように促す大統領令を出した。トランプ氏は建設再開で「多くの雇用、2万8000もの雇用を生む。素晴らしい建設計画だ」と述べた。
大統領令を受けて陸軍工兵司令部は7日、環境に及ぼす影響調査が完了するまで建設許可を与えないとしていた方針を覆し、環境影響評価の調査を中止し、建設を完了させる許可を与えると発表した。エナジー・トランスファー・パートナーズは9日からパイプラインの最終区間の建設を開始した。
ワシントン連邦地裁のジェームス・ボアズバーグ判事はエナジー・トランスファー・パートナーズ社に対し、ノースダコタ州の貯水湖の地下にパイプラインを通す工事再開を認めた。一方アメリカ先住民のスタンディングロック・スー族とシャイアンリバー・スー族は戦略を変更し、陸軍工兵部隊とエナジー・トランスファー・パートナーズに対する法廷闘争へと移行し、訴訟が現在も複数進行している。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/11/dapl_n_15306068.html