北海道新聞 04/07 22:00
【平取】アイヌ民族の暮らし方の一端を体験し、自らの生き方を見つめ直す―。3月中旬、日高管内平取町で民族文化の継承を目指す若い住民が企画した「シケレペキャンプ」が初めて開かれた。参加者は雄大な自然の中でアイヌ独自の精神文化に触れつつ、今の生活の「便利さ」などに思いを巡らせた。
「自然に感謝」参加者実感
「イチイの木はアイヌ語でクネニ。弓になる木という意味です。アイヌ民族は枝を切るときも自然への感謝の気持ちを忘れません」。 東日本大震災 から丸6年の3月11日、平取町二風谷地区のシケレベ川沿い。澄んだ空気に包まれた山林で、キャンプを主催した実行委の一人であるハンターの門別徳司さん(34)が参加者に語りかけた。
京都や札幌などから参加した20~40代の5人は、弾力があるイチイの枝で作った弓を応用する伝統的な火おこし道具「イキサプ」作りに挑戦。「アイヌの人はこんな方法で弓を作っていたんだから、すごいよね」と目を輝かせた。
キャンプは地元のアイヌ民族ら5人が企画し、今回を含めて来年3月までに6回を予定。3月11日に始めたのは、震災を機に問われた日本社会のあり方や人間としての生き方を、参加者と一緒に考えたいとの思いからだった。
イキサプは、弓の弦に木の棒を巻き付け、棒の先端を木製の台に置き、弓を前後に動かして棒を回しながら摩擦で火をおこす。しかし、懸命に弓を動かしても、なかなか火はつかない。
実行委員長の農業貝沢太一さん(46)は「火をつけるのは大変な作業。かつてアイヌ民族も頻繁には火おこしをせず、一度ついた火をとても大事にしていました」と説明した。アイヌ民族は火の神・アペフチカムイを敬ってきた。火おこしは「史料」として残る民具がどのように使われていたかを知ってもらう狙いがあった。
キャンプは1泊2日。昼食で参加者は、門別さんが捕獲したシカの肉のオハウ(汁物)や、イナキビごはんなどのアイヌ料理を味わった。震災が発生した午後2時46分には、被災者を悼んで黙とう。夜の懇親会では、アイヌ民族を先住民族と認めた二風谷ダム訴訟(1997年判決)の原告だった貝沢さんの父耕一さん(71)の話に耳を傾けた。
参加した小樽市のカフェ経営小笹芽里さん(32)は「アイヌ料理はおいしくて、体にもいいと思った。キャンプを通じて、人は自然の中で生きているんだと実感できました」と満足そうだった。
貝沢さんは「参加者はこちらが思っていたよりも積極的に火おこし作業に取り組んでくれた。キャンプを通じて、参加者や私たちの中にどのような変化が起きるのかが楽しみです」と話した。
次回のキャンプは5月下旬で、町内でアイヌ民族の伝統的な農耕機具を作り、アワやヒエを植える。問い合わせは貝沢さんのメールrik060u328dad@gmail.comへ。(静内支局 敦沢政俊)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/life-topic/life-topic/1-0387443.html
【平取】アイヌ民族の暮らし方の一端を体験し、自らの生き方を見つめ直す―。3月中旬、日高管内平取町で民族文化の継承を目指す若い住民が企画した「シケレペキャンプ」が初めて開かれた。参加者は雄大な自然の中でアイヌ独自の精神文化に触れつつ、今の生活の「便利さ」などに思いを巡らせた。
「自然に感謝」参加者実感
「イチイの木はアイヌ語でクネニ。弓になる木という意味です。アイヌ民族は枝を切るときも自然への感謝の気持ちを忘れません」。 東日本大震災 から丸6年の3月11日、平取町二風谷地区のシケレベ川沿い。澄んだ空気に包まれた山林で、キャンプを主催した実行委の一人であるハンターの門別徳司さん(34)が参加者に語りかけた。
京都や札幌などから参加した20~40代の5人は、弾力があるイチイの枝で作った弓を応用する伝統的な火おこし道具「イキサプ」作りに挑戦。「アイヌの人はこんな方法で弓を作っていたんだから、すごいよね」と目を輝かせた。
キャンプは地元のアイヌ民族ら5人が企画し、今回を含めて来年3月までに6回を予定。3月11日に始めたのは、震災を機に問われた日本社会のあり方や人間としての生き方を、参加者と一緒に考えたいとの思いからだった。
イキサプは、弓の弦に木の棒を巻き付け、棒の先端を木製の台に置き、弓を前後に動かして棒を回しながら摩擦で火をおこす。しかし、懸命に弓を動かしても、なかなか火はつかない。
実行委員長の農業貝沢太一さん(46)は「火をつけるのは大変な作業。かつてアイヌ民族も頻繁には火おこしをせず、一度ついた火をとても大事にしていました」と説明した。アイヌ民族は火の神・アペフチカムイを敬ってきた。火おこしは「史料」として残る民具がどのように使われていたかを知ってもらう狙いがあった。
キャンプは1泊2日。昼食で参加者は、門別さんが捕獲したシカの肉のオハウ(汁物)や、イナキビごはんなどのアイヌ料理を味わった。震災が発生した午後2時46分には、被災者を悼んで黙とう。夜の懇親会では、アイヌ民族を先住民族と認めた二風谷ダム訴訟(1997年判決)の原告だった貝沢さんの父耕一さん(71)の話に耳を傾けた。
参加した小樽市のカフェ経営小笹芽里さん(32)は「アイヌ料理はおいしくて、体にもいいと思った。キャンプを通じて、人は自然の中で生きているんだと実感できました」と満足そうだった。
貝沢さんは「参加者はこちらが思っていたよりも積極的に火おこし作業に取り組んでくれた。キャンプを通じて、参加者や私たちの中にどのような変化が起きるのかが楽しみです」と話した。
次回のキャンプは5月下旬で、町内でアイヌ民族の伝統的な農耕機具を作り、アワやヒエを植える。問い合わせは貝沢さんのメールrik060u328dad@gmail.comへ。(静内支局 敦沢政俊)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/life-topic/life-topic/1-0387443.html