ウオーカープラス2017/11/12 11:00
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4b/91/6919cd3e2bf7a52998aaee9ebfb155c4_s.jpg)
「ポロトコタン」の名称で親しまれている白老町のアイヌ民族博物館。2020年には国立の総合施設に生まれ変わります。その準備のため、現在の営業形態は来年の3月まで。ポロト(大きい湖)のほとりにある小さなコタン(村)の雰囲気を味わえるのはあとわずかです。
元々白老の町中にアイヌの集落はありましたが、より多くの人がアイヌ文化に触れられるようにと1965年にこの場所へ移設。1984年に民具などの資料を展示する民族博物館が完成し、現在の形となりました。
アイヌ民族博物館には文化・歴史を研究する学芸課などとともに伝承課があり、古式舞踊の舞台を務めたり、各種儀式を執り行う役割を担っています。古式舞踊は1日に8回公演がありますが、その合間を縫って、スタッフの制服である民族衣装を縫ったり、チセの修繕をしたり儀式で使う道具を作ったりしています。写真のチセ群の入口にある左側の木彫りのクマは現在儀式などを執り行っている祭主が大きな丸太から彫ったものです。
このようにアイヌの暮らしに必要なものをこの施設内で作っているので、その製造過程を目にすることもあります。例えばチセの炉に下がっているサケ。
これは単なる飾りではなく、毎年秋に獲れたものを食用に干し、燻して春に販売しています(ことしの販売は終了)。
また、タイミングが良ければ湖の中に沈められた木の皮や、チセの壁でなびく木の薄皮を見かけるかもしれません。これはチセで実演しているアットウシ(樹皮で作る織物)の材料です。
ほか、カフェリムセで出している保存食のペネイモ(300円)の加工も園内で行っています。凍らせては解凍し…を繰り返し発酵させたジャガイモが材料です。その後水に浸しアクを抜いて搗く…というとんでもない手間をかけたものを丸めて焼いています。
独特の香ばしさがあり、ひと口食べるとほろ苦いような。外がカリッと、中がモチっとしているところはまさにイモ餅なのですが、全く異なる風味で、ちょっと癖になりそう。
カフェリムセではほかオハウ(汁物。450円)も食べることができます。具的には三平鍋のようなイメージ。サケの味が引き立つあっさり塩味が体に染みます。
毎時15分近くになると園内放送が流れます。「インカラクス、イコシネウエウタラ イタカンチキ ヌワ イコレヤン…」。アイヌ語です。まるで外国にいるような気分にさせてくれます。意味は分からないけれど、やさしいイントネーションが何とも心地よい…。すぐに日本語で案内が流れ、古式舞踊の案内だとわかります。
アイヌ民族博物館では滞在時間1時間から90分程度でも楽しめるように、と古式舞踊の舞台は毎時15分から行われます。チセ内部で演じられるため、雰囲気もばっちりです。
舞台では踊りだけでなく、アイヌの代表的な楽器であるムックリやトンコリの演奏や歌の披露もある充実した25分です。ムックリは竹でできた口琴で、びょ~んというちょっと変わった音がしますが、風や雨、動物の声や演奏する人の感情などを表現しています。
踊りは白老地方に伝わるものなど。イヨマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)は手拍子と歌だけで始まりますが、そのうち男性が剣を取り出し鍔をかちゃかちゃとならしはじめ、どんどん盛りあがっていきます。アイヌの古式舞踊は国の重要無形民俗文化財でありユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
舞台終了後は、演じていた人と観客との交流タイム。チセの外で演者と写真を撮る人、トンコリに触らせてもらう人などなどスタッフの方と話す機会が多いのもこの博物館の特徴です。渉外広報課の西條林哉さんは「体験してもらうことが大事だと思っていますが、主人公は人。スタッフは自分たちが文化伝承を担っているという自負を持って働いていますので、なんでも聞いてください」と話します。
アイヌの暮らしを紹介している博物館へもぜひ。人間とは対等な関係である一方で、人知の及ばない存在とされていた「カムイ」に感謝しながら、彼らの用意してくれた自然物を利用していたアイヌの人々のていねいな暮らしぶりがよくわかります。海に近いこの地方ならではの漁労のようすにも触れています。
博物館出口の売店にはアイヌ模様が刺繍されたコースターや、木彫りのストラップなど気軽なお土産のほか、演奏を見たばかりのムックリ(500円)や民族衣装のカパラミプ(25万6000円)、写真集などもあり豊富な品揃え。
マンガ「ゴールデンカムイ」に登場するアイヌの少女が身に付けているマタンプシ(鉢巻)の柄は白老地方で撮影された写真を参考にしたと言われており、同様の刺繍がされたマタンプシ(4900円)も販売しています。
事前予約が必要ですが体験コースも多数用意されています。2名からの少人数で予約できるのはムックリの演奏体験や文様刺繍体験(ともにひとり540円)など。30分~1時間程度でできます。
毎月第二、四土曜日の14:45~開催されるオルシペアヌローはユカラ(抒情詩)などをアイヌ語で聞くことのできる人気のイベントです(予約不要)。
儀式のようすを見学することも可能です。毎月1日9:00~は、カムイに感謝を捧げる「チュプカムイノミ」が行われています。春と秋に行われるコタンノミも見学可能。ことしの秋のコタンノミは11月5日(日)10:30~で、14時ころからは春に降ろされた船を引き上げるチプヤンケの儀式が湖畔で行われます。
すでに工事が始まっている国立のアイヌ民族博物館はより大きな舞台や体験施設場を持つものになりそう。完成が待ち遠しい一方で、今の施設ならではの楽しみもあり。ぜひ3月までに訪れて、このほっこりとしたアイヌの村の雰囲気を味わってください。
※文中のアットウシの「ウシ」、カフェリムセの「ム」、インカラクスの「ラ」、イコシネウエウタラの「エ」と「ラ」、イオマンテリムセの「ム」、カムイモシリ・アイヌモシリの「リ」、カパラミプの「プ」、マタンプシの「シ」、オルシペアヌローの「シ」、ユカラの「ラ」、チュプカムイノミの「プ」、チプヤンケの「プ」はアイヌ語表記では小文字になります。
アイヌ民族博物館 ■住所:白老郡白老町若草町2-3-4 ■電話:0144・82・3914 ■時間8:45~17:00 ■料金:大人800円 高校生600円 中学生500円 小学生350円 ■休み:なし
https://news.walkerplus.com/article/125540/
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「ポロトコタン」の名称で親しまれている白老町のアイヌ民族博物館。2020年には国立の総合施設に生まれ変わります。その準備のため、現在の営業形態は来年の3月まで。ポロト(大きい湖)のほとりにある小さなコタン(村)の雰囲気を味わえるのはあとわずかです。
元々白老の町中にアイヌの集落はありましたが、より多くの人がアイヌ文化に触れられるようにと1965年にこの場所へ移設。1984年に民具などの資料を展示する民族博物館が完成し、現在の形となりました。
アイヌ民族博物館には文化・歴史を研究する学芸課などとともに伝承課があり、古式舞踊の舞台を務めたり、各種儀式を執り行う役割を担っています。古式舞踊は1日に8回公演がありますが、その合間を縫って、スタッフの制服である民族衣装を縫ったり、チセの修繕をしたり儀式で使う道具を作ったりしています。写真のチセ群の入口にある左側の木彫りのクマは現在儀式などを執り行っている祭主が大きな丸太から彫ったものです。
このようにアイヌの暮らしに必要なものをこの施設内で作っているので、その製造過程を目にすることもあります。例えばチセの炉に下がっているサケ。
これは単なる飾りではなく、毎年秋に獲れたものを食用に干し、燻して春に販売しています(ことしの販売は終了)。
また、タイミングが良ければ湖の中に沈められた木の皮や、チセの壁でなびく木の薄皮を見かけるかもしれません。これはチセで実演しているアットウシ(樹皮で作る織物)の材料です。
ほか、カフェリムセで出している保存食のペネイモ(300円)の加工も園内で行っています。凍らせては解凍し…を繰り返し発酵させたジャガイモが材料です。その後水に浸しアクを抜いて搗く…というとんでもない手間をかけたものを丸めて焼いています。
独特の香ばしさがあり、ひと口食べるとほろ苦いような。外がカリッと、中がモチっとしているところはまさにイモ餅なのですが、全く異なる風味で、ちょっと癖になりそう。
カフェリムセではほかオハウ(汁物。450円)も食べることができます。具的には三平鍋のようなイメージ。サケの味が引き立つあっさり塩味が体に染みます。
毎時15分近くになると園内放送が流れます。「インカラクス、イコシネウエウタラ イタカンチキ ヌワ イコレヤン…」。アイヌ語です。まるで外国にいるような気分にさせてくれます。意味は分からないけれど、やさしいイントネーションが何とも心地よい…。すぐに日本語で案内が流れ、古式舞踊の案内だとわかります。
アイヌ民族博物館では滞在時間1時間から90分程度でも楽しめるように、と古式舞踊の舞台は毎時15分から行われます。チセ内部で演じられるため、雰囲気もばっちりです。
舞台では踊りだけでなく、アイヌの代表的な楽器であるムックリやトンコリの演奏や歌の披露もある充実した25分です。ムックリは竹でできた口琴で、びょ~んというちょっと変わった音がしますが、風や雨、動物の声や演奏する人の感情などを表現しています。
踊りは白老地方に伝わるものなど。イヨマンテリムセ(熊の霊送りの踊り)は手拍子と歌だけで始まりますが、そのうち男性が剣を取り出し鍔をかちゃかちゃとならしはじめ、どんどん盛りあがっていきます。アイヌの古式舞踊は国の重要無形民俗文化財でありユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
舞台終了後は、演じていた人と観客との交流タイム。チセの外で演者と写真を撮る人、トンコリに触らせてもらう人などなどスタッフの方と話す機会が多いのもこの博物館の特徴です。渉外広報課の西條林哉さんは「体験してもらうことが大事だと思っていますが、主人公は人。スタッフは自分たちが文化伝承を担っているという自負を持って働いていますので、なんでも聞いてください」と話します。
アイヌの暮らしを紹介している博物館へもぜひ。人間とは対等な関係である一方で、人知の及ばない存在とされていた「カムイ」に感謝しながら、彼らの用意してくれた自然物を利用していたアイヌの人々のていねいな暮らしぶりがよくわかります。海に近いこの地方ならではの漁労のようすにも触れています。
博物館出口の売店にはアイヌ模様が刺繍されたコースターや、木彫りのストラップなど気軽なお土産のほか、演奏を見たばかりのムックリ(500円)や民族衣装のカパラミプ(25万6000円)、写真集などもあり豊富な品揃え。
マンガ「ゴールデンカムイ」に登場するアイヌの少女が身に付けているマタンプシ(鉢巻)の柄は白老地方で撮影された写真を参考にしたと言われており、同様の刺繍がされたマタンプシ(4900円)も販売しています。
事前予約が必要ですが体験コースも多数用意されています。2名からの少人数で予約できるのはムックリの演奏体験や文様刺繍体験(ともにひとり540円)など。30分~1時間程度でできます。
毎月第二、四土曜日の14:45~開催されるオルシペアヌローはユカラ(抒情詩)などをアイヌ語で聞くことのできる人気のイベントです(予約不要)。
儀式のようすを見学することも可能です。毎月1日9:00~は、カムイに感謝を捧げる「チュプカムイノミ」が行われています。春と秋に行われるコタンノミも見学可能。ことしの秋のコタンノミは11月5日(日)10:30~で、14時ころからは春に降ろされた船を引き上げるチプヤンケの儀式が湖畔で行われます。
すでに工事が始まっている国立のアイヌ民族博物館はより大きな舞台や体験施設場を持つものになりそう。完成が待ち遠しい一方で、今の施設ならではの楽しみもあり。ぜひ3月までに訪れて、このほっこりとしたアイヌの村の雰囲気を味わってください。
※文中のアットウシの「ウシ」、カフェリムセの「ム」、インカラクスの「ラ」、イコシネウエウタラの「エ」と「ラ」、イオマンテリムセの「ム」、カムイモシリ・アイヌモシリの「リ」、カパラミプの「プ」、マタンプシの「シ」、オルシペアヌローの「シ」、ユカラの「ラ」、チュプカムイノミの「プ」、チプヤンケの「プ」はアイヌ語表記では小文字になります。
アイヌ民族博物館 ■住所:白老郡白老町若草町2-3-4 ■電話:0144・82・3914 ■時間8:45~17:00 ■料金:大人800円 高校生600円 中学生500円 小学生350円 ■休み:なし
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