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平取「ウポポイ効果」狙う 町、アイヌ工芸体験で誘客 メニュー充実へ新印刷機 開業後の客減少に懸念

2020-03-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 03/29 10:35
 【平取】アイヌ文化が色濃く残る日高管内平取町は、4月に胆振管内白老町に開業するアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」との相乗効果を狙う取り組みを進める。平取町二風谷の地域資源のアイヌ工芸技術を生かした制作体験などで、客足を引き寄せたい考え。ただ、国が年間来場者100万人を目指すウポポイに流れが集中すれば、客が逆に減る懸念も。次代を担う若手工芸家の育成も急務だ。
 「工芸技術を生かし、平取らしいアイヌ文化を発信したい。ウポポイとウィンウィンの関係になれば」。平取町の川上満町長は2月末の記者会見で強調した。町内で生産されるアイヌ工芸品の技術力には定評がある。国指定の伝統的工芸品の木製盆「二風谷イタ」などの木彫りや織物が知られており、川上町長は誘客増を期待する。
 目玉としたいのが昨年4月開館のアイヌ工芸伝承館「ウレシパ」。制作体験でアイヌ文様入りペンダントの組み立てなどを実施し、2月末までの通算入館者は約6300人、体験者は約870人。
 同館は工芸家の育成拠点でもあり、自動カンナなど約15種類の加工機械を設置し、イタやアットゥシ(樹皮衣)の制作風景を見学できる。樹脂などにアイヌ文様を印刷できる特殊なプリンターも導入し、体験メニューの充実につなげたい考えだ。
 一般社団法人びらとりウレシパ代表理事で二風谷民芸組合代表の工芸家、貝沢守さん(55)は「機械導入で、もの作りの可能性を広げたい。職人が自立する手助けをし、アイヌ文化を守る人材を育てる拠点としたい」と意気込む。
 誘客を巡り、不安材料も残る。昨年4月には二風谷アイヌ文化博物館前に伝統的な集落を再現した「二風谷コタン」が完成。ウポポイ整備に伴い白老のアイヌ民族博物館が同3月で閉館した影響で、二風谷の博物館の2019年度上半期来館者は前年同期比23%増の2万4300人となった。
 それだけに平取では「ウポポイ開業による揺れ戻しで客が再び減少に転じる」との危機感もある。関係者は「修学旅行などの団体ツアーがウポポイに流れれば、同時に二風谷にも寄るとはならないだろう」とみる。
 工芸家の高齢化と後継者不足も課題だ。町によると、二風谷民芸組合の組合員は1965年ごろ約50人いたが、今は27人と半減。伝承者育成に向け、町はアイヌ民族文化財団(札幌)の委託で4月から、アイヌ文化の知識や技術を数年かけて学ぶ事業を始める。地域おこし協力隊員らも受け入れ、若手育成を急ぐ。
 札幌大の本田優子教授は「二風谷の特徴はアイヌの人たちが後から集まったのではなく、昔から暮らしていたコタンが文化発信拠点となったこと。普通のアイヌ文化が伝承者らを通じ息づいている」と指摘。「木彫や織物の職人の層にはまだ厚みがある。人材育成と並行し、工芸品の販路拡大やブランド化など職人が食べていける環境づくりが必要」と訴える。(川崎博之)
◆ウレシパのシは小さい字
◆アットゥシのシは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/407066

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