先住民族関連ニュース

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<北海道>サケ捕獲権復活求め アイヌの権利をめざす会発足(動画)

2020-03-31 | アイヌ民族関連
HTB 3/30(月) 8:19配信

 アイヌ民族の有志でつくる「アイヌの権利をめざす会」が発足し、サケを捕獲する漁業権の回復などを訴えました。
 アイヌの権利をめざす会は、日高の平取町や埼玉県に住むアイヌの有志5人が共同代表となり立ち上げました。会見ではアイヌの暮らしを支えたサケ漁が日本の政府によって一方的に禁止された。先住民族がサケを獲る権利は国連の先住民族権利宣言にも明記されているとして、インターネットで署名活動を行い国に対し「先住民族の権利に沿った施策を求める」としています。また去年、紋別アイヌ協会会長らが届け出をせずにサケを捕獲し、水産資源保護法違反などの疑いで書類送検されたことについては会長らを支援すると表明しました。貝澤耕一さん:「アイヌとして何かできないか、アイヌだってこれだけ団結力があるのを見せたいと活動を始めた」。萱野志朗さん:「北海道内水面漁業調整規則がアイヌにとって不都合であるならばアイヌに一番いいように改正すべきだと思います」。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200330-00000001-htbv-hok

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CA1970 - 日本の図書館と先住民族:IFLA2019年アテネ大会先住民分科会でアイヌ民族を取り上げるセッションを組織して

2020-03-31 | アイヌ民族関連
ndl 2020年3月20日 カレントアウェアネス No.343
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター(下記以外を執筆):兎内勇津流(とないゆづる)
北海道大学文学研究院(第4章1を執筆):石原真衣(いしはらまい)
北海道博物館アイヌ民族文化研究センター(第4章2を執筆):亀丸由紀子(かめまるゆきこ)
1. 国際図書館連盟(IFLA)先住民分科会について
 IFLA先住民分科会(Indigenous Matters Section)は、多文化サービス分科会から2017年に独立した新しい分科会である(1)。兎内は、日本図書館協会の推薦によりその委員に選出され、1期目(2017年から2021年まで)を務めている。これは、図書館における多文化サービスの推進を図る「図書館と多様な文化・言語的背景をもつ人々をむすぶ会(むすびめの会)」(2)関係者が、IFLAに先住民分科会を成立させるために日本から委員を出して協力したいと動いた結果と理解している。新任委員の感想であるが、先住民をめぐる状況は国によって大きく異なり、その社会的・政治的・経済的・文化的位置づけ、民族の組織の在り方と政府の対応には、非常に大きな差があると言えるであろう。しかし同時に、共通点に注目することも重要である。図書館は先住民に対してどのように活動していけばよいのか、その文化の保存・伝承やコミュニティの発展に対して、どのような役割もしくは可能性があるのか。文化・教育機関の一翼を担う図書館の専門職集団としてこのことを考え、実践し、活動を広めていこうというのが、この分科会の方向性と理解している。
 現在のところ、この活動が大々的に展開しているというわけではない。2019年は、2017年に選出した10人の委員に、さらに10人を追加で選出することになっていたが、かなり欠員が生じたようである。現在、この分科会を主導しているのは、ニュージーランドとカナダの委員である。
2. 図書館と先住民
 図書館の先住民プログラムというと、もしかすると公共図書館の仕事というイメージかも知れないが、ニュージーランドとカナダの両国とも、国立図書館、大学図書館、公共図書館がネットワークを結んでこれに対応している(3)。図書館は、資料の組織化、記録保存、デジタル化などを得意とする文化機関であるが、個々の図書館では(特に小さな村の図書館では)その人材や資金などのリソースは限定されたものとならざるを得ない。しかし、館種を超えた業界としての取組により連携してプログラムを行うことで、資料の散逸を防ぎコンテンツを共有し、利用しやすい体制をつくることが可能となるだろう。
 ニュージーランドとカナダはこのような実践を進めつつあり、成果を出しつつあると思われる。その活動が先住民のコミュニティとの関係を構築しながら行われており、プログラムを進める図書館員の中にも先住民が加わっていることが、ひとつのポイントである。
3. 2018年クアラルンプール大会とその後
 2018年の第84回IFLA年次大会クアラルンプール大会(E2078参照)で、次年度の大会にどのようなセッションを設けるか議論した時、兎内から次のような提案をした。日本の図書館で、先住民であるアイヌ民族を対象とした図書館施策というのはこれまで行われてこなかったように思われる(郷土資料、あるいは研究資料としてアイヌに関わる資料が収集されることはあったにせよ)。こういう日本の状況について、アイヌ民族と、日本の教育行政担当者にセッションに登壇してもらい、それぞれの図書館とアイヌの関係への見方を発表してもらうのはどうかということである。この意見はたちまち採択され、セッション企画委員を拝命することになった。では誰にどのようにして行ってもらえばよいか。
 人選についての紆余曲折は割愛せざるを得ないが、必ずしも提案どおりではないにせよ、日本におけるアイヌ民族の状況、および図書館・博物館との関係についてそれぞれの立場からスピーチしてもらうことが可能であろう、文化人類学を専攻しアイヌ出自をもつ人々の研究を行っている研究者1人(石原)とアイヌ民族の物質文化を専門とする博物館の学芸員1人(亀丸)の報告者を決定することができた。報告を準備する過程では、3人(兎内・石原・亀丸)で討議を重ねて報告を準備し、むすびめの会の協力を得て無事IFLA大会に臨むことができたのである。
4. 先住民部会セッションでの報告と討論
 2019年の第85回IFLA年次大会アテネ大会(E2205参照)の先住民分科会セッション「Gulahallan, Gishiki, tikanga: 対話をつくりだし、関係をすすめ、先住民の言語、知識、文化、つまりは先住民の表現・活性化・活力を促進する」(4)は、大会が終盤に近づいた8月29日朝8時半から始まった(写真)。報告は石原・亀丸と後述のカナダからの報告の3件である。本章は1節は石原が、2節は亀丸が、その他の箇所は兎内が執筆を担当した。
4.1. 石原報告
 先ず、石原が「先住民の出自を一部持つ子孫のひとりの視点でみた図書館利用の考察」と題して報告した。石原は、先住民の出自を持ちながら沈黙する「サイレント・アイヌ」の歴史と現状について述べた。アイヌ民族を取り巻く状況は、日本型先住民状況とも呼びうる、地政学的に特殊な事例である。その一つの証左が、「サイレント・アイヌ」である。いまだに居留地や「先住民の村」などを有する海外諸国と比しても、北海道では、入植者があらゆる場所にすみずみまで移り住み、瞬く間に先住民族の一人ひとりを取り巻いたことに注目されたい。その帰結の一つとして、多くのアイヌ民族は、日本人化を徹底的に推進され、「アイヌであること」を継承できず、和人との混血を繰り返してきた。一方で、血が薄くなったとしても血を引くことで他者化されてしまい、今でも、結婚差別などに苦しむ人びともいる。先住民の出自を持つ人びとの多くが、アイヌにも、和人(多数派日本人)にもなれずに、社会空間を浮遊する。日本における先住民族が経験したことを、私はこれまで、「沈黙」と「透明人間」という言葉を使いながら、文化人類学的研究を行ってきた(5)。先住民分科会での発表では、そのような立場から図書館の可能性について提言した。
 カナダに関する報告では、先住民女性が数千人規模で行方不明になっていることが述べられた。多文化主義や権利文化で知られるカナダで、このような事態が起こっていることに驚愕する。対岸の火ではない。日本における排外主義も深刻である。多文化共生がますます求められる日本において、多様性と、排外主義について同時に思考を深めることは特に重要である(6)。IFLA に参加して、図書館が持つ大きな可能性について、学ぶことができた。資料(様々な知)と、人と、場がある図書館は、これからますます変化を速めるであろう世界において、重要な教育の役割を担うだろう。さまざまな分断をつなぎ、新たな対話の回路を拡げてもらうことを、これからの図書館に期待したい。
4.2. 亀丸報告
 続いて亀丸が「図書館と博物館のより良い関係性への提案」と題して、図書館と同様に文化施設である博物館で働く学芸員の視点から、日本の先住民族問題に関して両組織が協力してできることについて、現状や課題、展望を報告した。発表では、①日本の先住民族アイヌ民族について、②現在の日本が抱える問題とその原因、③日本の文化施設と先住民族アイヌ(博物館の現状 / 図書館の現状)、④博物館と図書館が協力してできること、以上4点についてそれぞれの具体例を交えながら日本の先住民問題に関する報告を行った。現在の日本では、アイヌ民族やアイヌ文化に関する基礎的な知識が広く十分に共有されているとはいえず、依然として誤解や先入観を持って捉えられてしまうことが多いという現状と課題がある。
 博物館に勤務していると「どこに行けばアイヌの人に会えますか?」といった質問をしばしば受けるが、これは、アイヌ民族が未だどこかで伝統的な暮らしをしている、というようなイメージによるものであり、そうした誤解や先入観のほとんどが“マジョリティ(大多数)から見たアイヌ”という視点に基づいている。現在のアイヌの人々は上記のような伝統的な暮らしを営んでおらず、そのことはよく考えれば当たり前のことかもしれないが、このように、多くの人が無意識的に先住民やマイノリティといった人々に対して行ってしまっている当たり前のようで当たり前でないことを一緒に考えてゆくことがそうした課題解決の一歩だと考えている。
 報告のまとめとして、日本の先住民分野における図書館と博物館の協力はあまり盛んではなく、今すぐに取り組めることとして、図書館と博物館の強固な関係づくり、司書や学芸員などそこで働くスタッフ互いの知識や経験、スキルを活かした研修会や勉強会の開催など、図書館と博物館が頻繁に互いの情報を共有できる場づくりの必要性を挙げた。2020年4月には北海道白老町に国立アイヌ民族博物館が開館する予定であり(7)、今後、博物館がそうした協力関係を生み出す場ともなってゆくことを期待したい。
4.3. カナダ国立図書館・文書館(LAC)の報告
 最後に、カナダ国立図書館・文書館(LAC)のシャルボノー(Normand Charbonneau)、カナダ・マニトバ大学のカリソン(Camille Callison)の両氏が「カナダの図書館・アーカイブズにおける先住民言語 : 先住民コミュニティとともに変化のための対話をつくる」と題して報告し、LACが、先住民諮問グループ Indigenous Advisory Circle(8)のもと、先住民の写真や伝承などを先住民コミュニティと協力して収集・保存し社会に還元する“Indigenous Documentary Heritage Initiatives”を全カナダ的に進めていることを紹介した。
4.4. セッションのまとめ
 早朝の開始にもかかわらず、セッションには日本人も含めて50人以上が来場し、筆者らの報告に多くの質問、コメントが寄せられた。その反応はたいへん温かいもので、「日本における先住民族アイヌの存在を初めて知った」という声や、自国の実践例を紹介して「アーカイブ分野における図書館・博物館協力の参考にしてはどうか」といった意見・コメントが提示され、世界の図書館界で初めてアイヌを取り上げた報告をした意義を実感することができた。
5. 今後の展望と課題
 今回、2019年IFLA年次大会のセッションの組織に加わり、日本の状況を発信することができたが、別にこれで何かが前進したということではない。単に国際会議で報告しただけで終わらせず、次は日本で今後の展開を図る必要がある。
 2019年4月に、アイヌ民族をはじめて先住民族と明記した「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(通称:アイヌ民族支援法)」が成立した(9)。道内では、アイヌ民族の工芸等が空港や主要駅等人目に触れる場所に大きく展示されるようになったが、一方で、アイヌ施策関係の予算が減少している状況もあり、アイヌ民族の振興や社会的向上よりも、観光産業と結びついて表面的な関心を惹くことに終わることが懸念される。
 そこで、最初に手をつけたいのは、図書館とアイヌ民族の関係について図書館員が実践を語り、認識や課題を共有する場をつくることである。次に、アイヌ民族関係の資料にはどういうものがあり、それぞれの図書館でアイヌ民族についての資料を収集するとしたら何がいいのか、書誌もしくはツールの整備に取り組むことが望まれよう。
 北海道博物館より頒布されている「ポン カンピソㇱ(アイヌ語で「小冊子」)」というものがある。アイヌ文化に関する専門的な内容を親しみやすいかたちで紹介した冊子でこれまでに9冊刊行されている。アイヌ文化学習のための参考文献や、アイヌ文化を紹介する施設の情報も掲載されており、学びをさらに深める道しるべともなってくれる。尚、これはウェブサイト上でもダウンロードできるようになっている(10)。こうした仕事を基礎にして、今後は、各地の博物館や図書館に散在するアイヌ民族・先住民に関わる資料を、データベースやデジタル技術の力を使って協同で組織化していくことはできないものかと考えている。
 アイヌ民族と日本の経験は、伝統的な生活が急速に失われた点、ある面特異とは言え、先住民が帰るべき村と文化・伝統を喪失して匿名的な存在として都市で暮らすようになるというのは、世界で広く生じている現象と見ることができるだろう。ならば、それに対する対応もある種の普遍性を帯びることになるかも知れない。
 以上のことをふまえて、次にこのセッションに登壇する時には、日本の状況についてだけでなく、日本の図書館による実践について語ることができるように、関係者と相談しながらさらに取組を進めていきたいと考えている。
(1) “Indigenous Matters Section”. IFLA.
https://www.ifla.org/indigenous-matters, (accessed 2020-02-19).
(2) むすびめの会.
https://sites.google.com/site/musubimenokainew/, (参照 2020-02-19).
(3) “Indigenous documentary heritage initiatives”. Library and Archives Canada.
https://www.bac-lac.gc.ca/eng/discover/aboriginal-heritage/initiatives/Pages/default.aspx, (accessed 2020-02-19).
“About”. Rōpū Whakahau.
https://trw.org.nz/about-us/, (accessed 2020-02-19).
(4) “Session 252 - Gulahallan, Gishiki, tikanga: Creating Dialogues, Fostering Relationships, Promoting the Expression, Activation and Vitality of Indigenous Languages, Knowledge and Cultures - Indigenous Matters”. Congress Programme. p. 253-254.
http://react-profile.org/ebook/IFLA2019/CongressProgramme/252/, (accessed 2020-02-19).
“Gulahallan”はサミ語で「対話」、“Gishiki”は日本語の「儀式」、“tikanga”はマオリ語で「進め方」を意味する。
(5) 石原真衣.〈沈黙〉の自伝的民族誌(オートエスノグラフィー) サイレント・アイヌの痛みと救済の物語.北海道大学出版会,2020,(近刊).
(6) 石原真衣. “われわれの憎悪とは?「一四〇字の世界」によるカタストロフィと沈黙のパンデミック”. 対抗言論 1号. 杉田俊介, 櫻井信栄編. 法政大学出版局, 2019, p. 185-195.
(7) ウポポイ 民族共生象徴空間.
https://ainu-upopoy.jp/, (参照 2020-02-19).
(8) “Indigenous Advisory Circle”. Library and Archives Canada.
https://www.bac-lac.gc.ca/eng/about-us/Pages/Indigenous-Advisory-Circle.aspx, (accessed 2020-02-19).
(9) アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号). e-Gov.
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=431AC0000000016, (参照 2020-02-19).
(10) “アイヌ文化紹介小冊子『ポン カンピソㇱ』”. 北海道博物館.
http://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/study/ainu-culture/, (参照 2020-02-19).
[受理:2020-02-20]
兎内勇津流, 石原真衣, 亀丸由紀子. 日本の図書館と先住民族:IFLA2019年アテネ大会先住民分科会でアイヌ民族を取り上げるセッションを組織して. カレントアウェアネス. 2020, (343), CA1970, p. 10-12.
https://current.ndl.go.jp/ca1970
DOI:
https://doi.org/10.11501/11471488
Tonai Yuzuru
Ishihara Mai
Kamemaru Yukiko
Japanese Participation in Organization of the Indigenous Matters Session Dealing with Ainu Issues at the IFLA Annual Conference 2019
カレントアウェアネス イベント 国際会議 多文化・多言語サービス 日本 カナダ ニュージーランド ギリシャ 国立図書館 博物館 文書館 LAC(カナダ国立図書館・文書館) IFLA(国際図書館連盟)
‹ CA1969 - 早稲田大学・慶應義塾大学コンソーシアムによる図書館システム共同運用に向けた取り組みについて / 本間知佐子, 入江 伸

CA1971 - 第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019 / 平井俊行 ›
印刷用ページ 参照(2
https://current.ndl.go.jp/ca1970

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イランカラプテ 作詞者の思い

2020-03-31 | アイヌ民族関連
NHK 03月30日 18時57分
アイヌ文化を見つめ、継承していくためのコーナー「イランカラプテプロジェクト」。
これまで2年間にわたり、アイヌ文化を紹介してきましたが今回で終わりを迎えます。
最終回は、このコーナーのテーマ曲「イランカラプテ〜君に逢えてよかった〜」の作詞を担当したアイヌの男性がその思いを語ります。
https://www.nhk.or.jp/sapporo-news/20200330/7000019612.html

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変わりゆく都市の新しいカタチ 2020年、東京は今

2020-03-31 | アイヌ民族関連
フロントライン 2020年3月30日
夢と希望に満ち溢れた、東京オリンピック・パラリンピック競技大会はもうすぐそこ。各国から注目が集まり、世界中が一つになる歴史的瞬間。五輪をきっかけに変わりゆく日本の社会やメイン舞台となる東京都内の新名所など、東京の「いま」を伝える。
東京オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典であると同時に、各国がそれぞれの文化や価値観を発信し、多様な国際社会における協力関係を確認し合う場でもある。五輪を一つのきっかけと考え、飛躍を目指すには、どのような未来図を描いてアピールするべきなのかを考えたい。【時事通信社】
芸術プログラムの意図を読む
青山学院大教授の飯笹佐代子さん
オリンピックの競技に先立ち、開会式で披露される芸術プログラム。そこにはさまざまなメッセージがこめられている。多文化共生について研究している青山学院大教授の飯笹佐代子さんは、これまでの各国の演出を振り返りつつ、日本も多文化社会へと進むビジョンを示すべきだと訴えた。
—なぜオリンピックの開会式を研究対象に?
オリンピックの開会式では開催国の芸術プログラムを披露することになっていますが、それが1984年のロサンゼルス五輪以降、だんだん盛大になってきました。ショーとしてテレビの視聴者の関心を集め、スポンサーを確保するための戦略による部分が大きいといわれています。
私はオーストラリアの多文化社会の研究をしていて、シドニー五輪の開会式を見たのですが、その芸術プログラムにストーリー性があって面白いと思い、ほかの国はどのようにメッセージを打ち出しているのかと考えるようになりました。
批判あって建設的な議論に
—シドニーのプログラムの内容は?
白人の少女がビーチでうたた寝をしている間に太古から続くオーストラリアの歴史を夢見るというストーリーがステージ上で演じられました。多くの先住民も参加し、宗教儀礼やダンスも披露されました。最後に少女と先住民の長老が仲良く並んで立ち、協調を示すシーンは印象的でした。
—きれいごと過ぎる感じはありませんか。
実際、批判もありました。迫害の歴史を覆い隠すものだと。白人代表をかわいらしい少女にしたことを問題視する意見も聞かれました。先住民自身もプログラムへの参加をめぐり意見が分かれました。それでも先住民に対する認知度、関心が高まったという肯定的な受け止め方もあります。こうした中から建設的な議論が生まれればいい。
負の歴史も描く潔さ
—ロンドン五輪はどうでしたか?
ロンドンは「一つの都市に世界がある」をスローガンに、多くの言語が日常的に話されている多様性をアピールしていました。ところが同時爆破テロが発生します。ちょうど誘致決定を報じる新聞を手にした人たちが被害を受けました。多文化主義の失敗のような論調まで生まれました。
それでもオリンピックが始まると、芸術プログラムには多様性のメッセージが織り込まれていました。シェークスピア作品のモチーフなどを使い、英国の歴史を描くストーリーで、登場人物の人種の多様性に配慮したり、耳の不自由な子どもたちがアカペラで国歌を歌ったりと工夫がありました。
リオデジャネイロ五輪も素晴らしかった。ブラジルは先住民族、大航海時代のポルトガル人、アフリカから連れて来られた奴隷らが混血を重ね、日本を含む移民も受け入れて多人種の社会を形成してきましたが、芸術プログラムでは奴隷に足かせをした様子まで表現していて、負の歴史をあからさまに描く潔さがすごいと思います。
多様な社会どう目指すのか
—日本のプログラムはどうなるでしょう。
演出を統括する狂言師の野村萬斎氏は「鎮魂と再生」をテーマにするようですが、開催まで詳細は明かされないでしょう。私としては、日本社会が多様性とどう向き合っていくのか、積極的なメッセージを発してほしいと思います。
これから外国人労働者も増え、日本は多文化になっていきます。政府は移民政策は取らないと言い張りますが、働きに来る外国人の数はOECD(経済協力開発機構)諸国の中でも既にトップクラスで、海外から不思議に思われています。みんなで多様性を認め、どんな新しい社会をつくるのかを打ち出していく必要があります。オリンピックの開会式はそのためのちょうどいいチャンスと言えるのです。
いいざさ さよこ
福岡県出身。津田塾大卒。一橋大大学院博士課程修了。東北文化学園大教授などを経て現職。専門は国際文化論、多文化政策論。
写真/JIJI PRESS LTD
https://usfl.com/2020/03/post/127209

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アイヌ文化拠点空間整備は2つの案を基本構想に【新ひだか】

2020-03-31 | アイヌ民族関連
日高報知新聞2020.03.30
【新ひだか】町が静内の真歌公園に整備する「アイヌ文化拠点空間」について、27日の第5回町アイヌ施策懇談会で基本構想を固めた。中核の拠点空間施設は、当初から検討していた「新築」案と、前回懇談会で示した事業費が新築の約半分の「増改築」案の2タイプを基本構想に盛り込んだ。今月中に「町アイヌ施策基本構想」として国に提出する。
 同町のアイヌ施策基本構想の策定は①アイヌ文化拠点空間の整備による人材育成と交流人口の拡大②同空間の運営母体の構築と自立運営に向けたビジネス展開―が基本的な施策項目。
 真歌公園の拠点空間整備は、アイヌ文化を肌で感じる機会を継続的に作り、アイヌ文化を受け入れる拠点と位置づけている。国が事業費の8割を補助するアイヌ政策推進制度の交付金を活用し、町と町内のアイヌ関連団体や主要産業団体の代表らによる町アイヌ施策懇談会で事業化に向けた検討を進めている。
 昨年末から毎月開催している町アイヌ施策懇談会の27日の会議で、数日以内に国に提出する基本構想案を承認。2020年度は、拠点空間の具体的な利用方法や運営母体の検討を進め、ビジネス展開の内容を詰める。
 中核施設は、ともに老朽化したシャクシャイン記念館(1978年築・42年経過、鉄骨・鉄筋コンクリート造・延べ床面積340平方メートル)と、隣接のアイヌ民俗資料館(1982年築・38年経過、鉄筋コンクリート造・延べ床面積375平方メートル)を建て替え、新たな交流イベント・ホールを設ける「新築」。2施設の改修と施設前面に両施設をつなぐ多機能型生活館を新築追加する「増改築」の2プラン。
 新築(2700平方メートル)の場合の整備費(屋外イベントサポート施設含む)は、9億8600万円(ほか基本・実施設計費計7780万円)。増改築の場合の整備費は5億2700万円(ほか設計費、耐震診断費計4215万円)。
 現状では、新築施設の約10億円の事業費規模については、国が「想定外の事業費」と難色を示しており、どちらのタイプが採択されるかは、具体的な利用方法、事業内容などの計画を示す2020年度末(21年3月末)までに決まる見込み。
 拠点施設の運営・管理は、マネージャー(施設長)と運営管理主任(学芸員など)、維持管理主任の計3人を配置。将来的に運営に協力する地域の利用者らによる支援組織も作る考え。
 新たな施設の年間利用者は、年間1万人程度を想定し、基本構想では観覧料などで290万円。文化伝承企画や修学旅行生の受け入れ、商品販売、貸室収入などの事業収入が約1000万円。ほか、国や町からの助成金530万円あまりの計約1920万円を事業収入として試算している。
 27日の施策懇談会では、アイヌ団体代表から「資料室に設置としているシャクシャイン像の位置を、正面入口に近い多機能生活館の中央に移してほしい」などの要望があった。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/16647

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「ゴールデンカムイ」単行本23巻付属DVDで「支遁動物記」編アニメ化 姉畑支遁役は堀秀行

2020-03-31 | アイヌ民族関連
映画.com 2020年3月29日 22時30分
 野田サトル氏の人気漫画「ゴールデンカムイ」の単行本23巻アニメDVD同梱版の発売が決定した。原作でも禁断のエピソードといわれる「支遁動物記」編の収録が決まり、コマーシャルも公開。7月14日まで各書店などで予約を受け付け中で、9月18日に発売予定。価格は3600円(税抜き)。
 さらに、「支遁動物記」編の重要人物である刺青の囚人・姉畑支遁(あねはたしとん)のキャラクタービジュアル、支遁を堀秀行が演じることも明らかとなった。オファーを受けた堀は、「マネ-ジャーから『ゴールデンカムイ』の出演伺いの電話をもらって、この作品の姉畑支遁の役どころを聞いた時まず最初に思ったのは、えっ!何それ?……いくら放送用ではないにしても、それ大丈夫?ありなの?と同時に、ちょっと面白い役かもって思い、出演OKと答えました」とコメント。さらに、「録音当日監督からは、けして変態にはしないでねって念を押されたけど、でも変態じゃんって思いながら結構楽しみながら演じることが出来ました。変態じゃない姉畑支遁を楽しんで下さい」と、収録を振り返っている。
 同作は、「週刊ヤングジャンプ」(集英社刊)で連載中の和風ウェスタンアクション。明治時代、開拓期の北海道を舞台に、“不死身の杉元”とあだ名される元軍人・杉元佐一が、アイヌの少女アシリパ(「リ」は小さな「リ」)とともに、莫大な埋蔵金をめぐり、陸軍第七師団や脱獄囚たちと争奪戦を繰り広げる。テレビアニメ版は第1期が2018年4~6月、第2期が同年10~12月に放送され、20年10月から第3期の放送も決定している。単行本に付属するアニメ「支遁動物記」編では、アイヌのコタン(村)周辺で発生した動物惨殺の事態を受け、村田銃を盗まれてしまった谷垣源次郎が犯人として捕縛されてしまう。彼の銃を盗み、その犯人でもある学者・姉畑はヒグマに関心を示しているということで、杉元一行は谷垣を救い、姉畑の刺青を奪取するために奔走する。なお、監督はテレビアニメ版の難波日登志が務め、アニメーション制作も引き続きジェノスタジオが行う。
https://news.livedoor.com/article/detail/18039999/

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台湾に学ぶ

2020-03-31 | 先住民族関連
nikkan-gendai2020/03/31 06:00
「台湾の歴史と文化」大東和重著
 コロナ騒ぎで対策のすばやさが話題の台湾。その歴史には学ぶところが多い。
 日本よりほぼ1カ月先行して、マスク転売禁止や入国制限、開校延期などの対策を打ち出した台湾。他方では経済対策にも余念がなく、コンサートなどの文化行事にも特別補助が出るという。話題になったダイヤモンド・プリンセス号にも台湾人乗客が20人ほどいたが、彼らの帰国の際の保護も懇切なものだった。機敏で手厚い国民保護の体質はどこに由来するのか。本書はそんな示唆をくれる。
 もともと平地先住民のシラヤ族が住んでいた台湾を植民地としたのはオランダ。その後、オランダを駆逐し、中国から漢人が移民。その後、清朝の支配から日本統治を経て中華民国となった。度重なる支配のなかで異なる人々が共存する術を自然と身につけたのだろう。
 日中台の比較文学・文化を専門とする著者は日台のさまざまな人物をとりあげ、興味深いエピソードを紹介しながら支配や差別、民族対立などに苦しむこともあった台湾の歴史を描き出す。日本の統治は他と比べて強権的でなく、おかげでいまも対日感情はよいといわれる。しかし実際は差別もあり、また戦時中に日本兵として戦った台湾人には戦後の補償も長くなかった。温和だが影深い台湾の歴史と文化をたくみに描き出す好著。 (中央公論新社 900円+税)
台湾の歴史と文化
posted with ヨメレバ
大東 和重 中央公論新社 2020年02月19日
「台湾に水の奇跡を呼んだ男」鳥居信平、平野久美子著
 台湾南部の屏東県。南国の香りに包まれた、地下水の豊富な土地。ここにある「二峰■」は、電力をいっさい使わず、河川や湖沼から流れ込む伏流水と地形を生かした地下ダム。環境問題に敏感な今日の基準で見るとまさしく最先端といってもよいこのユニークな水利施設を建設したのは日本人技師。本書はその鳥居信平の生涯と功績をたどったノンフィクションである。
 文明開化花盛りの明治16年、静岡県の豪農の三男に生まれた信平は旧制四高から東京帝大に進み、忠犬ハチ公の逸話で有名な上野英三郎博士のもとで土木工学を修める。
 やがて日本統治下の台湾における殖産興業の任務を果たすべく台湾南部に赴任。そこから始まる開拓の物語。先住民の酋長に見込まれ、娘の婿が無理ならあんたの首をくれとせがまれた話など、興味深い逸話で読む者を飽きさせない。
 農業農村工学会の著作賞受賞作の文庫化。 (潮書房光人新社 810円+税)
台湾に水の奇跡を呼んだ男鳥居信平
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平野久美子(作家) 潮書房光人新社 2020年03月
楽天ブックスAmazonKindle 7nethonto 紀伊國屋書店
「詳説 台湾の歴史」薛化元主編、永山英樹訳
 台湾の「普通高級中学」は日本の高校に当たる。ここで学ぶ若者たちは自分たちの歴史をどう学んでいるのか。本書は彼らが使う教科書の完全日本語訳。
 有史以前に始まり、諸部族がならんだ先住民の文化、中国からやってくる漢人の海商、日本の密貿易商、そして大航海時代のオランダ人やスペイン人の入植へと進む。さらに清朝の進出と統治、これを駆逐した近代日本による植民地化を経て一気に近代化が進む。
 植民地経験の長い国々ではとかく誇大なナショナリズムが横行しがちだが、本書を見る限り、台湾の自己認識はきわめて健全でバランスのとれたもの。日本帝国主義が台湾に強いた抑圧やゆがみもよくわかる。日台の親密な関わりを再確認するにも適している。 (雄山閣 2500円+税)
詳説台湾の歴史
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薛化元/永山英樹 雄山閣 2020年02月
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/271152

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「世界最大1.7m!」恐竜の足跡の化石が豪州西部で発見…21種類も

2020-03-31 | 先住民族関連
ハザードラボ 2017年03月29日 06時00分

オーストラリア北西部の沿岸部で見つかった全長1.7メートルの世界最大の恐竜の足跡(Steve Salisbury/Queensland University/James Cook University)
 「オーストラリアのジュラシック・パーク」の異名を持つ、同国北西部の沿岸地帯で、全長1.7メートルと世界最大の足跡を含む21種類の恐竜の足跡が見つかった。
 クイーンズランド大学のスティーブ・ソールズベリー博士と、ジェームズクック大学の共同調査チームは、西オーストラリア州キンバリー地方の北部に位置するダンピア半島沿岸の岩場で、21種類の恐竜の足跡を発見し、脊椎動物専門の古生物学誌に研究成果を発表した。
 調査チームが発掘したのは、約1億4000万年前の白亜紀に形成されたと見られる砂が固まってできた海岸沿いで、州政府が2008年に、液化天然ガスの処理施設の建設予定地として選んだ場所。
 建設前の事前調査として2011年に発掘を始めたソールズベリー博士らは、先住民族アボリジニの人たちの協力を得て、5年に及ぶ研究を続け、恐竜の足跡の化石のシリコン型を作成。分析の結果、オーストラリア大陸では、これまでほとんど報告がないステゴサウルスなど、白亜紀初期の恐竜の足跡だとわかった。
 21種類の恐竜は、肉食恐竜が5種類、首長竜が少なくとも6種類、装甲恐竜が6種類、鳥類の祖先4種類が特定されている。なかには、成人がすっぽり横たわれるほどの1.7メートルの足跡も見つかっていて、これは過去に地球上で発見されたなかでは最大だという。
 ソールズベリー博士は「足跡の大きさだけでも世界一だが、おそらく、ひとつの地域で足跡が見つかった数としても世界最大でしょう」と指摘したうえで、「先住民族の間では何百年にもわたって、口伝えで恐竜の足跡の存在が知られてきたのです」と話している。
 発掘を開始して以来、調査チームはこの土地への建設計画を取りやめるよう州政府や資源会社に働きかけてきたが、その声が聞き入れられて、現在は国家の自然遺産として、未来に残すべく保護の対象となっている。
https://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/9/19597.html

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