TORJA 2月 28, 2020
研究者にとって、フィールドトリップはとても重要な実地調査や視察の機会です。2018年3月、私はSentinel Northが主催するInternational Arctic Field School(IAFS)に参加し、Nunavutの準州都Iqaluit(イカルイト)へ行ってきました。IAFSの参加者は世界7か国17大学から大学院生とポスドクを含め19人、大学や政府関係者12人、Nunavut Arctic CollegeのEnvironmental Technology Programの学生11人、先住民族のInuit(イヌイット)やイカルイト市長などのNunavut関係者10人以上が集まりました。
私を含め多くの参加者が初めて北極圏に近い場所に行くため、主催者側が参加者用ウェブサイトやハンドブックなどを作り用意周到に準備をしてくれたため、フィールドトリップ中は特に問題もなく無事に過ごすことが出来ました。今回はそんな私のフィールドトリップの体験をしたヌナブト準州についてお伝えしたいと思います。

1.ヌナブト準州とその都市イカルイト
ヌナブト準州は北カナダ準州の中で最も新しく広大な土地を持つ準州です。1999年にノースウエスト準州から独立しました。ヌナブト準州の大きさは約1800万㎢でメキシコより少し小さい位で、また世界で最も辺ぴな地域の1つであり、カナダでは2番目に人口が少ない州・準州(3万5944人)で、住民の殆どがイヌイットと呼ばれる先住民族です。
イカルイトはInuktitut(イヌクティトゥット語)で「大量の魚」を意味し、ヌナブト準州で最大のコミュニティであり唯一の都市です。1987年前までは近くの湾の名前を取ってFrobisher Bay(フロビッシャー・ベイ)という名前で呼ばれていました。
イカルイトはBaffin Island(バフィン島)南部に位置し、長い間イヌイットたちの漁場として親しまれていました。
イカルイトの人口は若年層が多く、平均年齢は30.1歳で、カナダ全体の人口の平均年齢40.6歳よりも10歳以上も若くなっています。
イカルイトへは一年を通して利用できる交通手段は飛行機に限られますが、荷物等は海が氷結していない夏の間のみ船舶で運ばれています。
2.イカルイトの気候
イカルイトは北極圏より少し南に位置しますがツンドラ気候に属し、1年を通じて寒く夏はとても短いため大木などは育ちません。
年間の平均気温は1年のうち8か月間はマイナスの気温で、年間降水量はわずか400mmですが、その他の寒冷地に比べ降水量は多いほうです。私は冬に行ったので、湾は凍っており、また遠くに見える丘には木が無いので丘の表面が雪で覆われているのがよく見えました。
3.北米先住民族イヌイット
Inuit(イヌイット)とは「人々」という意味でカナダ北部、アラスカ、グリーンランドに住む先住民族です。イヌイットは以前「エスキモー」と呼ばれていた時期もありましたが(日本でもそう学んだ記憶があります)差別的な意味合いが含まれてるため、今では使用されていません。
狩猟や漁業を中心に生活してきた民族なので、今でもその伝統は受け継がれていますが、近年では都市化が進みスーパー等で食料や衣類等を買うのが当たり前になっています。ちなみにイカルイトにはみんなが大好きTim Hortonsがあります!
イヌイット独自の歴史や文化などをここですべて紹介すると大変な量になると思いますので控えますが、北米では民族研究や地球温暖化による北極研究が盛んに行われているので、インターネット等での情報が沢山あります。
Yukari
トロント大学環境学部で博士号取得。カナダ北部の環境問題や温暖化について研究中。カナダの大学学部、大学院留学、ポスドクの経験を元にカナダのアカデミアについて情報発信していく。
https://torja.ca/canada-university-2002/