日刊ゲンダイ 2020/11/14
【今週の「エール」豆知識】
第22週を観て懐かしい思いを募らせた朝ドラファンも多かったのではないだろうか。過去に鮮烈な印象を残した俳優が2人、登場した。1人目は村野鉄男(中村蒼)と29年ぶりに再会する弟を演じた泉澤祐希(27)。「ひよっこ」(2017年度上期)ではヒロイン(有村架純)と一緒に集団就職で上京する、ちょっと気弱で誠実な同級生を好演した。2人目は古山裕一(窪田正孝)の弟・浩二(佐久本宝)と結ばれるリンゴ農家の娘を演じた志田未来(27)。「とと姉ちゃん」(16年度上期)では、ビアホールで酔い客に乱暴されそうになったヒロイン(高畑充希)を助ける不良少女。芯の強さが光った。
放送から3〜4年しかたっていないので、懐かしいというのは当たっていないかもしれない。ただ、コロナ禍の中で時間的な感覚がだいぶおかしくなっていて、少し前のことが遠い昔だった気がしてくる。今回の「エール」にしても、スタートからずいぶん時間が経っているような錯覚におちいる視聴者も少なくないだろう。途中で2カ月半もの中断があったのだ。ともかく、ようやくゴールが間近になった。
残すところ、あと1週になった第23週(11月16日〜)では伊藤久男(ドラマでは佐藤久志=山崎育三郎)が歌って大ヒットした「イヨマンテの夜」が登場する。作曲は古関裕而(古山裕一)、作詞は菊田一夫(池田二郎=北村有起哉)。戦後の古関メロディーの中で、もっともヒット曲を生み出した黄金コンビである。
もともと、この曲は菊田が脚本、古関が音楽を担当したラジオドラマ「鐘の鳴る丘」で使われた劇中歌。奥多摩の山奥で木を切っている山人が「アーアー」とメロディーを口ずさんでいるという設定だった。これがあまりにも評判がよかったので、レコード化する話になり、急遽、菊田が歌詞をつけたのだ。
■「熊送りの祭り」を意味するイヨマンテ
イヨマンテとはアイヌ語で「熊送りの祭り」を意味する。狩猟の神に、山や海からの恵みをもたらしてほしいと祈るアイヌの儀式である。3日間にわたって行われるという。菊田がアイヌ語を使った理由は、ちょうどそのころ、アイヌの取材をしていたからだ。北海道先住民の暮らしに興味を持ち、ドラマでも生かそうと考えていたのである。
それが実を結んだのは「君の名は」。1952年からラジオドラマ(NHK)がスタートし、平均聴取率は49%。放送が始まる木曜午後8時半になると、銭湯の女湯が空っぽになるという空前の人気ドラマだった。翌年には岸恵子(88)をヒロインに映画化され、こちらも大ヒットした。いずれも菊田が原作、古関が音楽を担当した。
菊田のアイヌ取材の成果が出たのは映画版の第二部である。アイヌのうら若き女性ユミが登場し、主人公・春樹(佐田啓二)を慕う切ない乙女心が描かれる。ユミを演じたのは故・石原裕次郎の夫人、北原三枝(現・石原まき子)だった。(田中幾太郎/ジャーナリスト)
https://news.goo.ne.jp/article/nikkangendai/entertainment/nikkangendai-683122.html
【今週の「エール」豆知識】
第22週を観て懐かしい思いを募らせた朝ドラファンも多かったのではないだろうか。過去に鮮烈な印象を残した俳優が2人、登場した。1人目は村野鉄男(中村蒼)と29年ぶりに再会する弟を演じた泉澤祐希(27)。「ひよっこ」(2017年度上期)ではヒロイン(有村架純)と一緒に集団就職で上京する、ちょっと気弱で誠実な同級生を好演した。2人目は古山裕一(窪田正孝)の弟・浩二(佐久本宝)と結ばれるリンゴ農家の娘を演じた志田未来(27)。「とと姉ちゃん」(16年度上期)では、ビアホールで酔い客に乱暴されそうになったヒロイン(高畑充希)を助ける不良少女。芯の強さが光った。
放送から3〜4年しかたっていないので、懐かしいというのは当たっていないかもしれない。ただ、コロナ禍の中で時間的な感覚がだいぶおかしくなっていて、少し前のことが遠い昔だった気がしてくる。今回の「エール」にしても、スタートからずいぶん時間が経っているような錯覚におちいる視聴者も少なくないだろう。途中で2カ月半もの中断があったのだ。ともかく、ようやくゴールが間近になった。
残すところ、あと1週になった第23週(11月16日〜)では伊藤久男(ドラマでは佐藤久志=山崎育三郎)が歌って大ヒットした「イヨマンテの夜」が登場する。作曲は古関裕而(古山裕一)、作詞は菊田一夫(池田二郎=北村有起哉)。戦後の古関メロディーの中で、もっともヒット曲を生み出した黄金コンビである。
もともと、この曲は菊田が脚本、古関が音楽を担当したラジオドラマ「鐘の鳴る丘」で使われた劇中歌。奥多摩の山奥で木を切っている山人が「アーアー」とメロディーを口ずさんでいるという設定だった。これがあまりにも評判がよかったので、レコード化する話になり、急遽、菊田が歌詞をつけたのだ。
■「熊送りの祭り」を意味するイヨマンテ
イヨマンテとはアイヌ語で「熊送りの祭り」を意味する。狩猟の神に、山や海からの恵みをもたらしてほしいと祈るアイヌの儀式である。3日間にわたって行われるという。菊田がアイヌ語を使った理由は、ちょうどそのころ、アイヌの取材をしていたからだ。北海道先住民の暮らしに興味を持ち、ドラマでも生かそうと考えていたのである。
それが実を結んだのは「君の名は」。1952年からラジオドラマ(NHK)がスタートし、平均聴取率は49%。放送が始まる木曜午後8時半になると、銭湯の女湯が空っぽになるという空前の人気ドラマだった。翌年には岸恵子(88)をヒロインに映画化され、こちらも大ヒットした。いずれも菊田が原作、古関が音楽を担当した。
菊田のアイヌ取材の成果が出たのは映画版の第二部である。アイヌのうら若き女性ユミが登場し、主人公・春樹(佐田啓二)を慕う切ない乙女心が描かれる。ユミを演じたのは故・石原裕次郎の夫人、北原三枝(現・石原まき子)だった。(田中幾太郎/ジャーナリスト)
https://news.goo.ne.jp/article/nikkangendai/entertainment/nikkangendai-683122.html