山陰中央新報2024/11/27 04:00
「プレミア12」の決勝で日本を破り、喜ぶ台湾ナイン=24日、東京ドーム
先日、大社高校野球部の石飛文太監督の講演を東京都内で取材した。教員職場の魅力をPRするイベントだったが、話題が8強入りした今夏の甲子園に移ると一層言葉に力がこもった。采配を巡る選手とのやりとりは、快進撃の記憶を呼び起こした。
大社が前回、甲子園で8強入りしたのは1931年までさかのぼる。その93年前の夏、甲子園球場を沸かせたのは、台湾代表の嘉義農林だった。日本統治下だった第17回全国中等学校優勝野球大会に初出場。大社との対戦はなかったものの、下馬評を覆して準優勝を果たした。
台湾の先住民、漢民族、日本人の3民族からなるチームを描いた物語は映画『KANO』になり、日本でも2015年に公開された。日本の名門校を率いた近藤兵太郎監督が、創部間もないチームを鍛え上げた。台湾野球のルーツをたどると日本に通じる。
近藤氏が、台湾の野球界で活躍した人を顕彰する台湾棒球名人堂(野球殿堂)入りした今年、節目が重なった。24日まで開かれた野球の国際大会「プレミア12」で、台湾代表が決勝で日本代表を破り初優勝した。決勝で3点本塁打を放った主軸も、勝利投手となった右腕も、日本の高校に所属して研さんを積んだ。
国内のシーズン終了後で日本は若手中心だったとはいえ、台湾の投打は力強く、拍手を送りたい。26年のワールド・ベースボール・クラシックでの再戦を楽しみに待つ。(吏)