恐懼に堪えない日々

【恐懼】(きょうく)・・・ おそれかしこまること。日々の生活は恐懼に堪えないことばかりですよね。

11/1(日)黒門亭2部(主任:柳家小袁治)

2020年11月02日 | 噺とか
興行が再開された黒門亭。
定員の40名から大きく減らして10名しかお客を入れず、
さらには完全電話予約制といった厳戒態勢です。

久しぶりの黒門亭ですが、この日に来た理由としては、
小袁治師匠がネタ出しで「柳田格之進」を出していたことと、
他にも新作のぐんまさんや、しん平師匠、紙切りの楽一さんが出るということもあって早々に予約。
以前、別の会に少し出遅れて申し込んだら満席だったこともあったので、
心配したのですが、結果的にこの日のお客さんは総勢5名。
完全に特定されてしまいそうですが・・・。

「寿限無」   まんと
「野ざらし」  ぐんま
「時そば」   しん平
-仲入り-
「紙切り」   楽一
「柳田格之進」 小袁治

前座のまんとさん、寿限無をたっぷりと演じました。
前座でありながら15分の持ち時間がきっかりあるのはここと鈴本ぐらい?
なかなか芸達者で前座さんの噺ながら楽しく聞かせていただきました。

ぐんまさんは新作で来るだろうと思っていたらまさかの古典。
噺に入る前に録音機器を操作されていたのでネタおろしなんでしょうかね。
前座の時には古典をよく聞いていましたが、二つ目になってからの古典は初めて。
この噺の見せ所であろう音曲もなかなかいい声でこなすあたり、
思いのほか芸達者なのかなぁと思ってみたり。
新作だけでなく古典でもしっかりと楽しませてくれるぐんまさんでした。

しん平師匠は最近ハマっているというパーコー麺についてあれこれ。
噺家であるとともに映画監督でもあるこの師匠、
やはり才能のある人なんだろうなぁと思います。
ひとしきりパーコー麺について語ったうえで、そこからの「時そば」。
しん平師匠の古典もあまりきちんと聞いた覚えがないのですが、
これが始まるとなかなかに面白い。
聞き飽きるぐらいに聞いた話でも、しん平師匠のアレンジ、さすがですねぇ。

紙切りの楽一さん。いつもの鋏試しではなく、
ぐんまさんがマクラで話したエピソードに由来して、
「雑司ヶ谷霊園で太鼓を鳴らしてしまい、カップルを驚かせた」一枚と、
しん平師匠がはまっているパーコー麺の話題から、
「肉の万世でパーコー二枚乗せのパーコー麺を食べるしん平師匠」を。
その後注文で「藤井聡太」「肉を食べるたぬき」「酉の市」を切り抜かれました。
黒門亭だとなかなか洒落をきかせてくれますね。

トリの小袁治師匠、「柳田格之進」は久しぶりで、
しかもこの噺をきっちりやったら50分はかかると。
それなのに今日の持ち時間は25分。どうしたもんか、とぼやきつつ本題へ。
「柳田格之進」自体聞くのは初めてであり、演題こそ知っていたものの、
詳しい予備知識もなく話を聞かせていただきました。
武士の生き様とそこから繰り出される悲喜こもごも。
冬の定番の噺になっている「柳田格之進」ですが、
たった5人しかいない客席でたっぷりと味わえたのは贅沢以外の何物でもありません。
寄席や大きなホールではわからない息遣いや迫力はさすが。
終わってみると45分の熱演だったわけですが、時間を感じさせない一席でした。

たった5人しかいない客席というのは初めての経験かもしれません。
かつての池袋演芸場がこんな様子だったようですが、
それでもかなりクオリティの高い濃密な空間でした。
コロナ禍で仕方なくこのような環境になっていて、
噺家さんの収益の部分からしてもいいことなんてないのでしょうが、
それでもこの贅沢な空間はコロナ禍だからこそ味わえたもの。
できないことを嘆くより、その中から楽しみを見つける。
そんな一日になったのかもしれません。

恐懼謹言。

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