先週は原因不明の高熱にやられて独り床でウンウン唸っていたのですが、何事も無ければ、本来は都内で開かれたバリトン・トリオのコンサートに行く予定でした。
バリトンと言っても男声歌手Baritoneのことではなく、18世紀に存在したBarytoneという弦楽器です。これは『交響曲の父』と呼ばれるヨーゼフ・ハイドンのパトロンだったニコラウス・エステルハージー候が好んで演奏していた楽器で、そのためにハイドンは、実に150曲を超える数の様々な編成の作品を作曲しました。『交響曲の父』とは言え、ハイドンの交響曲でナンバーのふられているものだけでも104曲ですから、驚異的な数であることがお分かり頂けるかと思います。
このBarytoneという楽器、分類的にはヴィオラ・ダ・ガンバの仲間です。大きさはチェロよりも一回り小ぶりな感じのもので、今日一般的なヴァイオリン族の絃が4本なのに対してこちらには6~7本のガット絃が張られ、指板にはギターのようにフレットがつけられています。
それだけなら別に変ったところはないのですが、画像を御覧頂くと分かる通り、それにしては楽器上部の弦巻き部分に尋常ではない数の弦巻きがズラリと並んでいます。これは実は指板の下に通された金属製の共鳴弦を張るためのもので、多いものでは12~3本もの共鳴弦を持つ楽器もあります。通常の演奏弦を弓で演奏すると、指板下に張られた共鳴弦が共鳴してファ~ンというちょっとエキゾチックな響きが得られます。これは、私が持っているヴィオラ・ダモーレも同じ原理を持っています。
そして、このBarytoneの最大の特徴といってもいい機能があります。この楽器、ネックの裏に窓が開いていて、そこからこの共鳴弦を左手親指で直接弾くことができるのです。そうやって演奏することによって、今日オーストリアに伝わるツィターのようなポロポロとした、いかにもウィーン好みな音色がするのです。つまり、無理を承知で怒られることを覚悟して表現するならば、チェロの指板の裏にちっちゃなハープが付いていて、弓奏しながら爪弾けるようなもの…といった感じでしょうか(こう書くとなんかエグいな…)。
この楽器を含んだハイドンの作品で一番多いのがBarytone、ヴィオラ、チェロというトリオなのですが、その希少な楽器を演奏している日本人のトリオが日本で公演を行うということで、かなり楽しみにしていました。この日本人トリオはチェロではなくてウィーン式コントラバスでの演奏だったのですが、それがチェロとどういった違いが出るのかも聞きどころだったのだと思います。しかし、それもこれも全部、原因不明の高熱と共に過ぎ去りました…。
なかなかいい画像が無かったのですが、ちょうどいい長さのものがありましたので載せてみました。演奏終盤で指板裏の『爪弾き』も見られますので、そこも注目です。
Baryton Trio Valkkoog - Adagio cantabile - Haydn "Birthday" Trio #Nr. 97#
バリトンと言っても男声歌手Baritoneのことではなく、18世紀に存在したBarytoneという弦楽器です。これは『交響曲の父』と呼ばれるヨーゼフ・ハイドンのパトロンだったニコラウス・エステルハージー候が好んで演奏していた楽器で、そのためにハイドンは、実に150曲を超える数の様々な編成の作品を作曲しました。『交響曲の父』とは言え、ハイドンの交響曲でナンバーのふられているものだけでも104曲ですから、驚異的な数であることがお分かり頂けるかと思います。
このBarytoneという楽器、分類的にはヴィオラ・ダ・ガンバの仲間です。大きさはチェロよりも一回り小ぶりな感じのもので、今日一般的なヴァイオリン族の絃が4本なのに対してこちらには6~7本のガット絃が張られ、指板にはギターのようにフレットがつけられています。
それだけなら別に変ったところはないのですが、画像を御覧頂くと分かる通り、それにしては楽器上部の弦巻き部分に尋常ではない数の弦巻きがズラリと並んでいます。これは実は指板の下に通された金属製の共鳴弦を張るためのもので、多いものでは12~3本もの共鳴弦を持つ楽器もあります。通常の演奏弦を弓で演奏すると、指板下に張られた共鳴弦が共鳴してファ~ンというちょっとエキゾチックな響きが得られます。これは、私が持っているヴィオラ・ダモーレも同じ原理を持っています。
そして、このBarytoneの最大の特徴といってもいい機能があります。この楽器、ネックの裏に窓が開いていて、そこからこの共鳴弦を左手親指で直接弾くことができるのです。そうやって演奏することによって、今日オーストリアに伝わるツィターのようなポロポロとした、いかにもウィーン好みな音色がするのです。つまり、無理を承知で怒られることを覚悟して表現するならば、チェロの指板の裏にちっちゃなハープが付いていて、弓奏しながら爪弾けるようなもの…といった感じでしょうか(こう書くとなんかエグいな…)。
この楽器を含んだハイドンの作品で一番多いのがBarytone、ヴィオラ、チェロというトリオなのですが、その希少な楽器を演奏している日本人のトリオが日本で公演を行うということで、かなり楽しみにしていました。この日本人トリオはチェロではなくてウィーン式コントラバスでの演奏だったのですが、それがチェロとどういった違いが出るのかも聞きどころだったのだと思います。しかし、それもこれも全部、原因不明の高熱と共に過ぎ去りました…。
なかなかいい画像が無かったのですが、ちょうどいい長さのものがありましたので載せてみました。演奏終盤で指板裏の『爪弾き』も見られますので、そこも注目です。
Baryton Trio Valkkoog - Adagio cantabile - Haydn "Birthday" Trio #Nr. 97#