共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

娘ならではのドキュメンタリー

2015年01月29日 18時06分51秒 | 日記
今日は出勤前にアミューあつぎ内の映画館に寄りました。どうしても観たかった映画が明日で入れ替えになってしまうので、半ば慌てての観賞です(汗)。

今回観賞した映画は《アルゲリッチ~私こそが、音楽》(邦題)という作品で、これはアルゼンチン出身のピアニストであるマルタ・アルゲリッチの半生や日常生活等を映したドキュメンタリー映画です。監督は彼女の三女であるステファニー・アルゲリッチなので、極度の取材嫌いで有名なアルゲリッチの極々親しい素顔を、娘ならではの視点から垣間見ることが出来る興味深い作品となっています。

様々なコンクールで優秀な成績を修めたアルゲリッチですが、特に1965年にショパン国際コンクールで優勝してからの活躍は目覚ましいものがあります。レパートリーもバッハから現代音楽なで幅広いのですが、精神的に納得した状態でないとコンサートをキャンセルしてしまったりする破天荒ぶりでも有名です。

また、ショパンコンクールの後で作曲家・指揮者のロバート・チェンとの最初の結婚で長女リダ・チェンを、指揮者のシャルル・デュトワとの二度目の結婚で次女アニー・デュトワを、ピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィッチとの三度目の結婚で三女ステファニー・アルゲリッチをもうけますが、いずれも離婚しています(ただコヴァセヴィッチとは馬が合うのか、婚姻関係を解消した現在でも、三女ステファニーを通して良好な関係を保っているようです)。娘達はそれぞれ、長女リダはヴィオラ奏者として母とも度々共演し、次女アニーは執筆活動家として母のCDの評論も手掛け、ステファニーは映像作家・映画監督として活躍中です。

この映画では、家でのくつろいだ中でのステファニー監督のインタビューや移動中の様子、コンサートのリハーサル風景や、1998年から続いている大分・別府アルゲリッチ音楽祭の本番前にゴネだしてあわやキャンセルか…というところからステージに向かって行く様子等が収められていて、なかなか見応えのある映画でした。

そして、映画の中でアルゲリッチがショパンのピアノ協奏曲やベートーヴェンの熱情ソナタといった様々な作品を演奏しているのですが、個人的に良いなと思ったのが、エンドロールのバックに流れていたバッハのパルティータ第4番のアルマンドでした。総じて早いテンポでバリバリ弾くタイプのアルゲリッチにしては珍しいくらい淡々と、尚且つひとつひとつの音の流れと絡みを大切にしながら落ち着いたテンポでの演奏に、思わず引き込まれました。機会があれば、アルゲリッチのバッハのCDでも探してみようかしら…と、ちょっとだけ思ったりしました。

娘ならではの視点からとらえた素顔のアルゲリッチが垣間見える、なかなか面白いドキュメンタリー映画ですので、お近くで公開の折には御覧になってみては如何でしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする