折にふれて

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情景「秋ハ夏ノ焼ケ残リサ」

2020-08-23 | 日常

 

夏の空が焼け落ちて、秋の空へと変わっていく。

 

     福井県越前岬 2020.08.22  06:23pm      SONY α7S2  F2.8G/70-200㎜ (f/14,1/160sec , ISO100)    

 

この瞬間を、地元のアマチュアカメラマンの方と

三脚を並べて眺めていたのだが、

その方曰く、越前岬では晴れているようでも

沖に霞のような雲がかかることが多く

この日のように日没間近の太陽を隠してしまうそうだ。

赤く沈みこむ夕陽を期待する向きには残念なことだが

個人的は水平線近くが淡く染まる日没を嫌いではない。

目にやさしい光景が強い日差しで火照った体を冷まし

心を穏やかに癒してくれるからだ。

そして、日没とともに吹き始めた涼しい風の中で

もうひとつ重ねた風景がある。

それは、毎年この時期になると探そうとするもので

太宰治の創作ノート「ア、秋」の一節を感じさせる情景だ。


「秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル」

「夏の中に、秋がこっそり隠れて、

 もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、

 それを見破ることが出来ぬ。」

 

とどのつまり、

「秋ハ夏ノ焼ケ残リサ」で、

この岬からながめた空が焼け落ちていくようで

そして、その隙間から秋がこっそりと

顔をのぞかせているように思えたのだ。


もう20年以上も前のこと。

夏の終わりのプールサイドで流れてきた

ミック・ハックネルの感傷を包み込むようなボーカルを

印象的に覚えている。

 
    Simply Red - Say You Love Me

 

 

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