『雨あがる』『阿弥陀堂だより』と同じく、
寺尾聰主演で監督は小泉堯史監督。
第一回本屋大賞50万部を突破した、
芥川賞作家・小川洋子の
ベストセラー小説の映画化。
博士の記憶は80分しか持たない。
80分しか記憶がもたない博士を演じるのは、寺尾聰。
杏子役には深津絵里。
杏子の息子ルート役には、齋藤隆成、
大人になったルートを演じるのは、吉岡秀隆。
そして博士の義姉である未亡人には、浅岡ルリ子。
「きみの靴のサイズはいくつかね?」「24です」
「24、潔い数字だ。4の階乗だ」
いつもこの言葉の掛け合いから始まる、
博士とお手伝いさんの一日。
博士の普段の生活に、数学がとけ込んでいます。
原作の方は切なくて、悲しくて、
それでも優しくて、あたたかくて、
数学の世界の中の美しい言葉と、
その意味が本の中に散りばめられ、
人にも勧めた大好きな本でした。
不思議な数字の世界、
そして今までになかったような、不思議な読後感。
本では読み終わった後までも、しばらくの間は、
ラストを思い出せば、じんわりと泣けてくる位でした。
映像、音声が直に感性にくる映画とは異なり、
本は字を介して空想することでしか、
心を動かすことの出来ないものなのですが、
原作の方が感動したんです。
読んでから大分経っているので、
細かいところは忘れてしまっていますが…
でもいい映画でした。
素晴らしかった本と、
比較してしまうからだと思います。
本と映画、順序が逆だったら
感じ方もまた違っていたと思います。
キャスティングはよかったです。
深津絵里の健気なママ、
子役も、大人になったら吉岡秀隆になっていても、
違和感は全くありません。
二人、似ていました。
博士役の寺尾聡、もう少し年のいった俳優を、
想定していましたが、
背が高く、昔スポーツマンだったという設定なので、
すんなりと役柄にとけ込んでいました。
浅岡ルリ子も適役でした。
吉岡秀隆、前髪を降ろすと「四日間の奇跡」、
「三丁目の夕日」の茶川さんなんかより、
すっごく可愛くて、優しい先生を演じていました。
√型の髪型もいいです!!
映像もきれいで、博士、ルート、家政婦の
一瞬一瞬を生きるという命の輝き。
三人の暖かい心がやさしい感情を呼び起こさせます。
純粋でかけがえのない友情、思いやりを
感じることが出来、心が温まる映画でした。
原作にある、どうすることも出来ないつらさ、
切なさ、悲しみが省略されたように思うので、
そのぶん、映画の方はカラッと明るく、
爽やかな清々しさが感じられました。