畑でいぶかしそそうに女性が私を見ている。「こんにちは。川ん写真撮いげ来ました」と話すと、安心してくわの手を休めた彼女は橋の名を教えてくださった。「元気そうで、よか顔色ですね。失礼ですが何歳ですか?」と聞くと「82にないもした。今、水害はなかんが、前ん湯之元じゃ大雨んとき、水ぃ浸かっ大変じゃした。いっまっ生きらるっか分からんが、畑作いをしっ、川でん眺めっ暮らしもそ」と語られる。私はキュンとなり「心配じゃしたな。いっまででん、長生きしゃんせ」と言葉が出た。川と共に生きた人生と、土の香りが、彼女から漂っていた。
出水市 小村 忍(64) 2007/10/7 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 小村 忍(64) 2007/10/7 毎日新聞鹿児島版掲載