はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

山羊

2007-10-21 17:35:01 | アカショウビンのつぶやき
 鹿児島県指宿市で「全国山羊サミット」が開かれたと言う。
終戦直後の食糧難を救った山羊も、日本の農業の変化によって、牛、豚、鶏など3大エリートにはかなわず、商品家畜として生き残れなかった。
 今や「幻の家畜」になりかかった山羊を再評価しようと10年前から始まったのが「全国山羊サミット」らしい。
 
 私が幼い頃、我が家にはいつも山羊がいた。
 最初に貰った子山羊は、家族の留守中に柿の木に紐を巻き付け死んでしまった。毎日泣き続ける子供たちの願いに負けた母が、次に貰ってきたのは、あご髭をはやした大人の山羊だった。
 この山羊は子供たちをバカにして言うことをきかない…。姉と私は竹の棒を振り回して、朝は草の一杯あるところに連れて行き、夕方は帰りたくないと抵抗する山羊を押したり引っ張ったりしながら家に連れて帰った。
 そしてある日可愛い2匹の子山羊を生んだ。愛くるしい子山羊は子供たちとよく遊んでくれた。そして母山羊の大きな乳房からは、乳をたくさん出してくれた。
 バケツの中にジュージューと泡を立てながら絞られる山羊の乳は、青くさい草の匂いがして、最初はいやだったが、やせっぽちの私に飲ませようと母はなだめすかして飲ませ、そのうちに大好きになった。
 近所に体の弱い人がいると母は「山羊の乳は滋養があるから」と、差し上げて喜ばれていた。
 この年で山羊を飼うことなどできそうもないが、名脇役として再評価されてきた山羊と再び出会えるようになれば嬉しい。

写真はgootaroさんからお借りしました。

意欲

2007-10-21 16:44:39 | はがき随筆
 9年間、認知症の妻の所へ通った家内の叔父は95歳。5月に愛妻を亡くされた。このたび歌集「牛飼いの歌」を出版。95歳でこの意欲。夫婦の愛情の深さ、強さを今更ながら実感。
 叔父は手先が器用で体を動かすことや読書、創作への意欲も旺盛。文化祭への出品数知れず。叔父に教えられる毎日だ。ある図書館で95歳になるおばあさんが「宮本武蔵」の単行本を面白そうに読んでおられたお姿と重ね合わせ、意欲的に取り組むことの大切さをしみじみと感じている。
 老いるにはまだ早い気がする。元気を出そう。
   薩摩川内市 新開 譲(81) 2007/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載