はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

日本の美

2008-01-29 21:13:27 | はがき随筆
 四大浮世絵師展に出かけた。
 女性を賛美する美人画。歯切れのよいセリフが聞こえてきそうな生き生きとした役者絵。力強く豪快な力士の絵。
 絵師の後ろに控える彫師(ほりし)と摺師(すりし)、版元がいて、浮世絵の魅力は最大限に引き出されたのだろう。
 日本の四季の風情を感性豊かに描いた北斎と広重。2人の絵は対照的に見えるが、詩情あふれる広重の作品をもっと見てみたいと思った。
 日本のわび、寂、心象風景を大切にしたいと思う。
   姶良町 中村頼子(62) 2008/1/29 毎日新聞鹿児島版掲載

旅立ち

2008-01-29 21:06:32 | はがき随筆
 毎日のように大型スーパーに行く。8㌔ほどの道筋に、葬儀場が3ヵ所ある。
 何もないときは何だかほっとするが、暮れも押し詰まった寒い日、3ヵ所とも葬儀が行われていた。いずれも享年90歳代で人生をまっとうしたと思える。縁者は別として、黒っぽい服装の人々はあわただしく暮れの街に散っていった。
 あと少しで正月、この日のお三方は、天に召される最良の日として旅立たれたのだろう。
 ああ有為転変。一日一日確かな総菜を残したいけれど今日も無為に過ごしてしまった。
   指宿市 宮田律子(73) 2008/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載

キンカン鈴なり

2008-01-29 20:48:18 | はがき随筆
 今年はかんきつ類の当たり年らしく、我が家のキンカンも鈴なり。枝という枝が大粒な実をつけて重そうに頭を下げています。通りがかりの人も「見事ですね」と声をかけていきます。
 そのうちの一人の奥さんが、分けてくれないかと訪ねてきました。入院しているご主人が食べたいというのでスーパーで買ったところ、キンカンらしくないと残したそうです。味見してもらいました。奥さんは「酸っぱくて甘くてジューシー」と喜び「たくさんもいでいってください」とカミさんも手伝う。「うちのキンカンが人様のお役に立った」と胸を張りました。
   西之表市 武田静瞭(71)2008/1/27 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はSUZさんからお借りしました。