はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ベランダ菜園

2008-08-06 20:56:01 | はがき随筆
 裏の排水工事の都合で1㍍四方の空き地が確保できたので、ゴーヤとヘチマを植え、ついでにプランター数個にトマト、ナス、ピーマンを植えた。
 これまでは草花でにぎやかだったベランダが、にわか菜園となった。大げさに言えば我が家の食糧自給対策の一環だ。
 朝一番にベランダに下りて一本一本点検する。トマトは黄色のかれんな花を風に掲げ、ナスはうつむくように薄紫の花なをつける。時にはカメムシやテントウムシを割りばしで退治してやる。楽しいと言うよりときめきのひとときだ。代々受け継いだ百姓の血の騒ぎかもしれない。
   鹿児島市 福元啓刀(78) 2008/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載

極楽の余り風

2008-08-06 20:49:01 | はがき随筆
 車を運転しながらラジオを聞いていたら男性アナが「自分の故郷では蒸し暑い夏の日に吹く涼しい風のことを極楽からの余り風と呼んでいる」と紹介していた。子供のころ、小学生から中学生までだが、母から畑や田んぼの草取りをさせられた。とりわけ夏休みは明けても暮れても草取りだった。川では友達の歓声がしていた。暑さの余りべそをかいたこともあった。父を早くに亡くした母の苦労を思うと、学校の成績より草取りの成績が先のようだった。その母も11年前に84歳で亡くなった。今ごろ、極楽で涼しい風に吹かれて過ごしているのだろうか。
   志布志市 武田佐俊(65) 2008/8/5 毎日新聞鹿児島版掲載