はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

涼夜

2008-08-22 23:18:14 | はがき随筆
夏の特集(中)-4
 夕涼みがてらのタコ釣りに誘われた。近くの港の岸壁で、細いロープに釣り針をつけただけの簡単な仕掛けを海中に投げ入れ、タコが食いつくのを待つ。あたりが来たら一度グイッと引いて、後は緩めたり引いたりとタコとの駆け引き。タコが疲れて力を抜いた一瞬を見逃さず、素早く引き揚げると釣れるらしい。日は暮れても港なので昼間のように明るい。潮風は心地よく蚊もいない。エアコンなしにはいられない我が家の近くに、こんな快適な避暑地があったとは……。幸せ気分にすぽりはまった。タコにも災いをおよぼさず、ホントいい夜だった。ん?
   出水市 清水昌子(55) 2008/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

2008-08-22 23:11:20 | はがき随筆
夏の特集(中)-3
 午後の太陽がむんむんと取り返す団地の夏。私は汗をふきふき家路をたどっていた。もうろうとした頭は我が家の冷蔵庫の中を探っている。「冷たい物は何もないなあ。どこかでアイスを買って帰ろう」。その時だった。前方で「ウワーッ!」と子どもたちの歓声があがった。何だろうと近づいて見ると、子どもたちが「キャー、キャー」。水浴びをしていた。15人はいる。こぢんまりした保育園の片隅の、即製プールだった。男の先生も裸で真ん中に立ち、こけた子供の手を引きながら一緒に遊んでいた。サーッと一陣の涼しい風がよぎった。
   鹿児島市 高野幸祐(75) 2008/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

涼を求めて

2008-08-22 22:53:56 | はがき随筆
夏の特集(中)-2
 温暖化のせいか今年の夏はいつもの年より暑いように思う。あるいはいつもと同じなのかもしれないが。冷房のなかった昔は道路に涼み台を出して涼んだものだが、車が多くて今はそれもできない。
 私は早寝早起きが日課。8時半にクーラーをつけて9時就寝。そして4時に起床。新聞を読んで投稿のはがきを書き、5時過ぎ、車で海岸に向かう。
 防波堤や渚を歩いて涼を取る。日が昇る前の夜明けの海辺は、風がさわやかで気持ちがいい。それでも歩いていると少し汗ばむ。暑い夏、青い海を見ながら涼を取って、その日の仕事に備える。
   志布志市 小村豊一(82) 2008/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

私泳げません

2008-08-22 22:46:29 | はがき随筆
夏の特集(中)-1
 夏は家の中にいても、ただただ暑い。世の大人も子供も一服の涼を求めて山へ海へと繰り出す。だが私は海がイケナイ。平たく言えば物心ついてから私は水が怖いのです。小1からプールになじめず、還暦を迎えそうな年になっても水に近づきたくない。異性に興味を持ち始めた中学生のころ水泳の授業は悲惨を極め、まさに背筋が凍った。母親は「きっと前世が牛で川でおぼれ死んだんだね」と薄気味悪いことを言った。海軍上がりの父は「情けない」と言ってスパルタ式特訓もしたが、成果は上がらなかった。人には言えない、私だけの涼しい夏の話である。
   霧島市 久野茂樹(59) 2008/8/22 毎日新聞鹿児島版掲載

私の涼!これだ

2008-08-22 17:58:07 | はがき随筆
夏の特集(上)-4
 猛暑日が続きセミ時雨の大合唱も元気がなく、私はアジの干物にような気分になっていた。
 そのうだるような暑さを吹き飛ばしてくれるのが北京五輪。新聞報道で多くの知識を得、競技の各種目が興味深い。話題の高速水着で、北島選手の2大会連続金メダルなるか。五輪最後の野球、星野ジャパン念願の金? 16年ぶりに出場を決めた男子バレー……などすべての競技に期待を寄せる。
 日本選手の頑張りで興味覚めやらぬ日々が続き、連日、鳥肌が立ちそうだ。この活躍はきっと私に涼しい風を吹き込んでくれるに違いない。
   鹿児島市 鵜家育男(63) 2008/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載

奥深い人工道

2008-08-22 17:50:07 | はがき随筆
夏の特集(上)-3
 自宅より200㍍離れた場所に布引の滝。散歩コースで滝の入り口まではよく通る。
 短い上り坂に5軒の民家。いつもきれいな花が咲き、まさに平和のシンボル。滝の登り口は木製の人工階段で役場観光課の努力が見える。
 息をせっせと吐きながら登ると青白い枦山池。展望台で姶良町の一部を見ながら小休止する。県内でも森林浴の出来る地区は少ない。森林を奥深く前進すると突き当たりは布引の滝。掲示された滝の説明を読んでいるとなるほどと思うことも多い。水源は吉野台地より流れる。まさに家宝の滝だ。
   姶良町 谷山 潔(81) 2008/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載

夏だあ

2008-08-22 17:21:23 | はがき随筆
夏の特集(上)-2
 ジジジジジージジジジジー。「ここにいるよ。生きているよ」と鳴いているように聞こえるセミの声。
 空を見上げる。真っ青な空、まぶしい太陽の光。洗濯物もすぐ乾く。畑には大きく育った夏野菜。お日様に光をもらったナスがひときわキラキラ輝いている。
 ジュルジュル、したたり落ちる汗。ああ、暑い。本当に夏だ。
 「チリチリチリリン」
 風鈴の音と共に、さわやかな涼しい風が吹き込む。夏の風は、本当にありがたい。厳しい暑さも何とか乗り越えられそうな気がする。平和を心に刻みながら。
   出水市 山岡淳子(50) 2008/08/21 毎日新聞鹿児島版掲載

ブールが一番

2008-08-22 17:10:36 | はがき随筆
夏の特集(上)-1
 午後4時。きょうも熱くてたまらない。そうだ、涼みに出かけようと、ここでしりごみしない。プールへ。徒歩5分、なんと近い。まるでわが家のプールと自負しているゆえんである。
 半分は日陰になった屋内プールで、歩いたり泳ぎの練習らしきものをする。子どもたちの泳ぎをかいくぐって1時間、水の中のさわやかさに加えて体のしんまで冷えてくる。帰宅後の我が家の蒸し暑さを忘れさせてくれる。
 ほどよい空腹と清涼感で、その日の夕食のおいしいことといえば……。クーラー嫌いの私流の、ささやかな涼み方である。
   霧島市 口町円子(68) 2008/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載