はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

みつばちさん

2008-08-19 21:54:05 | はがき随筆
 本欄に懐かしい人の名前を見つけ、遠い昔を思い出した。
 小中学校時代を過ごした町では毎年、子供たちの文集「みつばち」が発行されていた。別の学校の1学年上のTさんは、よく作文などが載っていて、しかも特選である「みつばち賞」の常連だったと記憶している。
 同じ高校、大学と進み、初対面は私が入学した時の歓迎コンパ。私は当然「みつばち」のことを話題にした。
 卒業後、全く違う仕事についたが、知り合いを通じ消息が伝わる。今春、少し早めに仕事をリタイアされたらしい。「はがき随筆」の先輩復活でもある。
 鹿児島市 本山るみ子(55) 2008/8/19 毎日新聞鹿児島版掲載

充実の7週間

2008-08-19 21:47:16 | はがき随筆
 7週間の国語教師。充実した日々だった。朝7時半出勤。朝刊の切り抜きを掲示する。生徒の感動の目を育てる一役。日々の心身の成長は大きいので、教育の実践にごまかしも油断も出来ない。新鮮なものを提供する義務のある朝である。
 授業では、国語辞典の利用を勧める。電子辞書や広辞苑までも持参してくる。言語力向上の一助にと思う。大人以上に興味を持って辞典を引く。教材研究なしの授業はすぐにばれてしまう。土日返上の教材研究。学ばされる身の私である。生徒の意欲・関心・興味、少しずつ好転してゆく。
 出水市 岩田昭治(68) 2008/8/18 毎日新聞鹿児島版掲載

お渡り

2008-08-19 21:33:26 | はがき随筆
 86歳になった母と同居して4年になろうとしている。それに先立ち、同居のリスクを少しでも軽減しようと自宅をリフォームした。かくして母と妻と私の3人は個室を持つに至った。
 夕食以降はお互いのプライベートタイムだ。と言っても男の私は随分気を遣っている。9時就寝の母に一度は顔を出す。妻の所へはそれ以降となる。
 「篤姫」を見るようになってから「お渡りー」と言って部屋に入る。初め妻はクスクス笑っていた。近ごろは「忙しいのでご遠慮申す」と拒むこともあるではないか。これ御台所よ、そちから断るとはこれ違法なり。
   大口市 山室恒人(61) 2008/8/17 毎日新聞鹿児島版掲載

夕立

2008-08-19 21:14:46 | はがき随筆
 午後4時半、日が陰ったなと思ったら、雨が降り出した。南の島の夕立だ。乾ききった庭に大粒の雨が降り注ぐ。砂ぼこりのにおいが立ちのぼった。
 黒い雲が、形を変えながら遠ざかる。雨に打たれた庭の草花や木々が、急に元気づいたように見える。
 垣根の間から顔を出しているハマユウが存在を主張し、ヒトツバの枝にぶら下がっているコウモリランの葉からは水が滴り落ちる。サンダンカのだいだい色が鮮やかさを増した。
 リリリーン、リーン……。軒先の南蛮鉄の風鈴が、一段と高く鳴り響いた。
   西之表市 武田静瞭(71) 2008/8/16 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は武田さん提供