はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

母の赤い思い

2008-08-27 16:16:26 | はがき随筆
 瀬戸港そばの万葉歌碑を見に行った。その後、ふと、事故死した長島の教え子の家に、足が向いた。道すがら、赤土の段々畑サツマイモが目につく。
 亡き勇君のお母さんは、うちにおられた。「線香をあげさせてください」とお願いすると「今年はちょうど、勇の十三年忌でした。息子が呼んだのでしょう」と喜ばれた。
 彼女はお茶を準備しながら「今でも、勇が死んだとは思っていません」と話される。
 私は、ハッとして心を打たれてしまった。
 お母さんの勇君への思いは、赤土よりもなお赤かった。
   出水市 小村 忍(65) 2008/8/27 毎日新聞鹿児島版掲載