はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

部屋替え

2008-12-08 18:01:39 | はがき随筆
 心臓病には寒い夜が大敵なので、寝室を暖かい部屋に替えることにした。狙いは物置同然になっていた子供部屋。早速、2人の息子を呼びつけて大掃除させた。マンガ、ゲーム類の残がいを全部処分。明るくてシンプルな病室みたいなベッドルームに生まれ変わった。
 数日後、この冬一番の寒波が襲来した。部屋が広くガラス窓が多い分、暖房が効きにくいが、南の太陽は部屋の奥まで差し込み、布団をホカホカに暖めてくれる。以来、夕方はサッシ網戸を閉めて、日向のぬくもりの保温を大切にしている。
   鹿屋市 上村 泉(67) 2008/12/8 毎日新聞鹿児島版掲載

ぬくもり

2008-12-08 17:52:26 | はがき随筆
 背中が無性にかゆいことがある。決まって両手とも届かぬ。妻に頼むと、自分の背中ぐらい自分でかきなさいとつれない。仕方なく物差しで試みるがどうもうまくいかない。立ち上がり柱の角でこするが痛いだけ。孫の手を見つけ出したがしっくりいかぬ。見かねた妻が「どかね」と手を入れてくれる。やはり人の手だ。急所にアタリ、なんといってもぬくもりがある。
 ぬくもりがあり、かゆいところに手が届く政治を期待する。定額給付金とやらで評を買えるという国民愚弄の妄想を捨て、我々が納得するような税金の使い道を考えるべきではないか。
   肝付町 吉井三男(67) 2008/12/7 毎日新聞鹿児島版掲載

サザンカ

2008-12-08 17:45:39 | はがき随筆
 庭のサザンカがひっそりと咲きだした。自然に「さざんかの宿」の歌を口ずさんでいる。
 新婚間もないころ、紅と白のサザンカを植えた。夫婦の愛のあかしとして2人で。昨年は生死を分けた大手術で大学病院に入院中。生命をもらって今年は花を眺めることができる。
 自然の移り変わりは正確だ。長い間、私たち夫婦の喜怒哀楽の歴史を見守ってくれたサザンカ。今こうして夫婦2人で心豊かに静かに暮らしている。サザンカは夫婦のきずなを強くしていくような気がする。
 これかれらもふれあいを大切に過ごしていきたい。
   薩摩川内市 新開 譲(83) 2008/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はSolarisさん